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  • 2020/05/15

なぜコロナ禍の世界には5Gが必要なのか、教育現場の事例から見えてきた課題とは 篠崎教授のインフォメーション・エコノミー(第122回)

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的拡大は、社会システムに大きな変容を迫っている。一刻も早い事態の収束を願うばかりであるが、落ち着きを取り戻した後も、以前と同じ姿で社会が機能していくのは容易ではないだろう。だが、この数カ月の動きからは、収束後の社会に向けた手がかりも窺える。その1つがエッセンシャル・テクノロジーとしてのICT(情報通信技術)だ。今回は、インフォメーション・エコノミーの観点から、新型コロナ後の世界と5G(第5世代移動通信システム)本格スタートの意義について考えてみよう。

九州大学大学院 経済学研究院 教授 篠崎彰彦

九州大学大学院 経済学研究院 教授 篠崎彰彦

九州大学大学院 経済学研究院 教授
九州大学経済学部卒業。九州大学博士(経済学)
1984年日本開発銀行入行。ニューヨーク駐在員、国際部調査役等を経て、1999年九州大学助教授、2004年教授就任。この間、経済企画庁調査局、ハーバード大学イェンチン研究所にて情報経済や企業投資分析に従事。情報化に関する審議会などの委員も数多く務めている。
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インフォメーション・エコノミー: 情報化する経済社会の全体像
・著者:篠崎 彰彦
・定価:2,600円 (税抜)
・ページ数: 285ページ
・出版社: エヌティティ出版
・ISBN:978-4757123335
・発売日:2014年3月25日

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的拡大は、社会システムに大きな変容を迫っている
(Photo/Getty Images)
 

コロナショックを受け、社会はどう変化すべきか

連載一覧
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより、多くの国々で都市封鎖や厳しい行動制限の措置が取られてる。日本では4月7日に7都府県を対象として政府が緊急事態宣言を発出、9日後の4月16日からは対象地域が全国に広がった。

 緊急事態宣言は、当初5月6日を期限としていたが、その後5月31日まで延長されることとなった。新型コロナとの戦いは、第二次世界戦後の国際社会が経験したことのない「持久戦」になるとの指摘もなされている。 

 一刻も早い事態の収束を願うばかりであるが、落ち着きを取り戻した後も、社会が以前と同じ姿で機能していくのは容易ではないだろう。少なくとも人々の意識や交流のあり方は、これを機に大きく変容すると考えられる。

 ただし、この数カ月の動きからは、絶望的な悲観だけでなく、新型コロナ後の社会に向けた手がかりも窺える。その1つがエッセンシャル・テクノロジーとしてのICT(情報通信技術)だ。今回は、インフォメーション・エコノミーの観点からコロナ後の世界について考えてみよう。

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人々の意識や交流のあり方は、新型コロナの感染拡大を機に大きく変容すると考えられる
(Photo/Getty Images)

社会活動維持のカギ、エッセンシャル・テクノロジーとは

 新型コロナの特効薬やワクチンが開発途上の現在、拡大防止対策として最も重要なのが人々の接触機会を減らすことだ。緊急事態宣言下の日本では、以前と比較して7割から8割の削減が求められた。

 もちろん、接触機会をゼロにすることが望ましいが、それでは経済活動が停止し、社会システムが機能不全に陥ってしまう。社会システムの維持に不可欠なギリギリの活動を支えるのが「エッセンシャル・ワーカー」と呼ばれる働き手だ。

 こうした中で、人々の接触機会を減らしつつ、通常の活動に可能な限り近づけるためのさまざまな創意工夫も試みられている。遠隔医療やオンライン授業、在宅勤務は、その代表例だ。いずれもICTの利活用が不可欠で、まさにエッセンシャル・テクノロジーといえる。

 医療の現場では、喫緊の課題として新型コロナへの対処に注力する一方、持病のある高齢者など感染した際に重篤化しやすい一般の通院患者には、遠隔医療による診断で投薬の処方箋を出し、薬局から宅配してもらうなどの対応が可能だ。

 教育の現場も今やICTはエッセンシャル・テクノロジーだ。教育は「国家百年の計」であり、今の子供や若者たちは、将来の社会を支える最も大切な財産だ。学校が閉鎖され通学が出来ない状況下にあっても「教育の灯」を絶やしてはならない。筆者が教育に携わる九州大学でも、新学期は全面的にオンライン授業でスタートした。

3密を避けるヒントはマイナンバーにアリ?

 エッセンシャル・テクノロジーとしてのICT利活用は、行政の領域でも待ったなしだ。現在は、感染リスクだけでなく、かつて経験したことのない経済活動の急停止とその長期化による景気の下方リスクが深刻だ。対応を誤れば未曽有の不況に陥りかねない。

 全住民に対する一律10万円の特別給付金や雇用調整助成金、中小企業への資金繰り支援などさまざまな政策が打ち出されている。

 問題はその事務手続きだ。複雑な仕組みで書面や対面による申請を求めれば、現場の窓口は3密状態となり混乱の極みに陥りかねない。簡素な仕組みにした上で、手続きの全面ネット化を目指す取り組みが欠かせない。

 マイナンバーは今こそ出番だ。2013年に成立したマイナンバー法は、社会保障、税、災害対策に関する行政事務の効率化や手続きの簡素化、利便性の向上を図ることが目的だった。ここで有効に活用できなければ存在意義を失ってしまう。

 現下の経済情勢を考慮すると、一律10万円の特別給付金は緊急性が高い。すべての納税者は、年末調整や確定申告で扶養家族も含めてマイナンバーを提示しており、特別給付金は額と期間を限定した一種の「ベーシック・インカム(最低限所得保障)」制度とみることもできる。この経験は、AI(人工知能)時代を視野に入れた税と社会保障の仕組みづくりにも役立つはずだ。

コロナがもたらした、医療・教育・行政の現場の変化

 政策立案の基盤となる各種の審議会や委員会もICT化が一気に進み始めた。つい数カ月前までは、委員などが全国から霞が関に結集し、議論を交わすのが通例であった。ところが、4月からはWeb会議が標準化した。

 連載の第119回で解説したBeyond 5G(第5世代移動通信システム)推進戦略に関する有識者会議も例外ではない。4月の第2回会合はWeb開催となった。

 医療、教育、行政は、これまでICTの導入がなかなか進まない領域といわれてきた。その領域で一気呵成(いっきかせい)に壮大な変化が起きているのだ。新型コロナの世界的拡大と接触機会削減の行動自粛は、私たちに困難な課題を突き付けると同時に、エッセンシャル・テクノロジーとしてのICTの重要性を再認識させたといえる。

 そして、今まさにこのタイミングで5Gの本格的導入がスタートした。インフォメーション・エコノミーの観点からは、大きな意義があると考えられる。

【次ページ】“遠隔”を実現するために、不可欠な要素とは

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