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  • 2020/08/17 掲載

ノーベル平和賞 アル・ゴア氏が語った、環境とテクノロジーの「あるべき未来」

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新型コロナの影響で地球温暖化効果ガスが一時的に減少した話は聞いたことがあるかもしれない。しかし、これは短期的な話であり、今後は再度増加することが予想されている。環境問題への取り組みでノーベル平和賞を受賞したアル・ゴア元副大統領は、コロナによるパンデミックと環境汚染の共通点と相違点を浮き彫りにするとともに、こうした問題にテクノロジーがどう立ち向かっていけばよいのかについて語った。

執筆:米国在住ジャーナリスト 土方 細秩子

執筆:米国在住ジャーナリスト 土方 細秩子

米国在住のジャーナリスト。同志社大学卒、ボストン大学コミュニケーション学科修士課程修了。テレビ番組制作を経て1990年代からさまざまな雑誌に寄稿。得意分野は自動車関連だが、米国の社会、経済、政治、文化、スポーツ芸能など幅広くカバー。フランス在住経験があり、欧州の社会、生活にも明るい。カーマニアで、大型バイクの免許も保有。愛車は1973年モデルのBMW2002。

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アル・ゴア元副大統領

大気汚染とコロナに相関関係?

 今年50周年を迎えた米セミコン・ウエスト(SEMICON WEST)だが、コロナの影響でオンラインによるバーチャルコンベンションとなった。7月21日、基調演説を行ったのは環境問題への姿勢でノーベル平和賞を受賞したアル・ゴア元副大統領だ。同氏が語ったのはサステイナブルな未来を切り開くためには一層のテクノロジーの進化が必要だという意見だ。

 海水の温度の上昇は世界的に気候の変化をもたらしている。米国でも毎年ハリケーンや大雨被害がひどくなっているが、日本でも梅雨時前後の大雨、台風で多くの人が実感しているだろう。ゴア氏によると、気温の上昇は「毎年50万個の原爆が投下されている」のに等しい状態なのだという。世界各地で大雨による被害が出るのは、気温の上昇により海水の蒸発量が増え、それが局的な豪雨を伴う大雨となって地上に還元されるためだ。

 また北極の氷が溶けるために海面が上昇し、多くの生物が存続の危機にさらされている。熱帯地域に特有だった数々の疫病が、今や地球の南北に広がっている。これを放置すると人類の文明の存続さえ危ぶまれるとゴア氏は強調する。実際、過去10年間で気候変動による自然災害は地球規模で2兆5000億ドルの被害をもたらしたが、その前の10年では1兆ドルだった。この増加傾向は今後も続くと予想される。

 皮肉にもコロナウイルスのまん延により、地球温暖化効果ガスは一時的に減少した。しかしこれは短期的なイベントであり、コロナ克服後には再び増加が予想される。

 ゴア氏はここで興味深い研究結果を報告した。ハーバード大学が今年4月に発表したレポートによると、大気汚染の激しいところ(PM2.5の空気中密度が高いところ)ではコロナによる死亡率が高かったというものだ。初期の検証結果だが、大気汚染は環境だけではなく人々の暮らしや疫病対策にとっても重要なファクターとなっている。レポートでは1 μg/m3のPM2.5増加により、死亡率は8%増えると指摘されている

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PM2.5の密度が高いところではコロナによる死亡率が高いという調査もある
(出典:Media Resource 社)


パンデミックと環境汚染の2つの共通点

 またゴア氏はコロナによるパンデミックと環境汚染には2つの共通点があると指摘する。まず、どちらも科学者が最初にその危険性について指摘したが、政治などがそれに真剣に耳を傾けなかった結果、災害が広がったという点。2つ目はどちらの問題も、それ以前に存在した社会の問題点を浮き彫りにしたという点だ。

 もちろん前者の場合、環境が長期にわたる問題だったのに対しコロナは短期に起こった問題である、という違いがある。また後者では浮き彫りとなった問題が環境ではいわゆる南北問題など、地域的格差であるのに対し、コロナでは人種間の格差、同一国内での貧富の差などが対象となっている。

 ただし違いもある。コロナパンデミックが世界各国政府に多大な経済的損失を与え、今後の世界がそこからの立ち直りに苦心するであろうことと比較すると、環境問題は今後企業にとって多大な機会をもたらすものになり得るという点だ。たとえばゴア氏によると、米国で今、成長が最も著しい産業はソーラーパネルの設置、そして2番目が風力発電技術なのだという。

 今後、世界中で古い建造物をグリーン・ビルディングにレトロフィットする、スマートグリッドの設置、EVの開発と普及などで、多くの雇用が生み出される可能性がある。これらを推進していく上で欠かせないのがクラウド・コンピューティング、AI(人工知能)の存在で、そのために今後データ・サイエンティストの需要は大きく伸びると予測される。ゴア氏によると現在は新しいデジタル・テクノロジー、マシン・ラーニング、AIなどによる「サステナビリティ革命」の初期にあたる。

【次ページ】デジタル・テクノロジーは多大な電力を消費する

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