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- 2020/09/04 掲載
半導体市場はなぜ今後も好調なのか? 自動車関連で「2000億ドルの可能性」とは
EVと自動運転で高まる半導体需要
R&D、ポートフォリオ・マネジメントなどの分野で半導体産業の第一人者であり、インテル、クアルコム、ARM、ウェスタンデジタルその他多くの企業のアドバイザーなどを経験してきたKPMGのジョーンズ氏によると、自動車関連の半導体産業の規模は2040年には現在からCAGR(年平均成長率)が7.7%だった場合に2000億ドル(約21兆円)、6.2%であっても1500億ドル(約16兆円)規模に膨らむという。しかもこの数字は自動車の内部に含まれない半導体、つまりEV(電気自動車)用のチャージステーション、クラウド、V2Xなどのアプリケーションを含まない数字だ。ではどの分野で半導体需要が高まるのかというと、やはりEVと自動運転だ。平均的なEV(バッテリーEV:BEV)は内燃エンジンの車(ICE)と比較すると倍近い半導体を必要とする。また自動運転はレベルにもよるが、レベル0、つまり自動運転機能をまったく持たない車とレベル1~2の車で2~3倍、さらにレベル4~5になるとその4~5倍、つまり自動運転機能なしの車から比べると8~10倍の半導体を必要とする。
さらにハード部分だけではなく、ソフト部分の成長も見込まれる。KPMGによると、2019年のマーケットシェアではインフォテイメント、テレティクスがおよそ4分の1、ADAS関連が20%程度だが、2040年にはこの2つが全体の75%を占めるまでに成長する見込みだ。特にADASは全体の40%を占める大きな成長要素を持つ。
ただし、今後数年は自動車、半導体それぞれの業界でやや厳しい時代が訪れる可能性は否めない。コロナウイルスの影響により、今年の世界の自動車販売台数は昨年比で2割減が予測され、半導体も5%程度の減産となる見込みだ。自動車業界は特にコロナによるサプライチェーンの分断が響き、世界的な失業率の増加などで回復に多少の時間がかかると考えられる。
半導体業界は巨額のR&Dを実施
一方、半導体はマイナス面はあるものの、コロナによるリモートワーク普及などでデータセンター、PC、コミュニケーションインフラなどでの需要が増したため、マイナスはそれほど大きくなっていない。そもそも企業のR&Dにかける予算を比較すると、世界で最も巨額のR&Dを行っているのは医薬品業界でおよそ1250億ドル(13.2兆円)、続いて自動車およびサプライヤー業界が1150億ドル(12.2兆円)。それに続くのが半導体業界の700億ドル(7.4兆円)だ。このR&Dに関しても、医薬品業界はコロナワクチン開発、特効薬の製造などで今後さらなる投資が期待できる反面、自動車業界はコロナ不況によりやや後退する可能性がある。
一方の半導体はコロナの影響が最小限に留まる、さらにはコロナの影響によりデリバリーが発達したことにより、自動運転を導入したデリバリーサービスの充実などの必要性が高まっていることから、R&Dへの投資も今後さらに高まると予測される。
デリバリーに話を絞ると、米国のショッピングモールの集客力は年平均で4%ずつ減少の傾向にあった。そこにコロナが追い打ちをかけ、大手小売やデパートなどの倒産が相次いだが、それを補う形でオンラインショッピングへの需要が高まっている。
同じくKMPGが2018年に発表した自動運転によるデリバリーへの考察では、米国では2017年の時点でオンラインショッピングが全体の小売の9%を占めるまでに成長、人々が「買い物に出かけるために車で移動」する回数は2016年には年間で延べ500億回だったが、2040年にはこの回数は30~50%減少すると予想されている。一方でパッケージデリバリーは人々の買い物件数が30%減の場合470億回、50%減の場合は780億回にまで増加するという試算だ。
これを実現するためにはボットなどを用いた自動運転デリバリーの導入は必要不可欠で、今後はそのためのインフラ整備も始まるだろう。デリバリーにはAIを用いたリアルタイムのロジスティクスも必要となり、半導体の必要性はますます増していくことになる。
【次ページ】個人向けは減るがMaaS向けは拡大する
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