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急速にテレワークが浸透している中、Web会議システムの需要も拡大傾向だ。企業の担当者にとって、Web会議システムの導入は急務といえる。しかし、どのサービスを利用するのが適当なのか頭を悩ませている人もいるだろう。ここではWeb会議システム導入に向けた基本知識を解説しながら、選び方のポイントとあわせてシェア上位ツールを紹介していく。
企画:ビジネス+IT編集部、構成・監修:時田信太朗
企画:ビジネス+IT編集部、構成・監修:時田信太朗
テック系編集者/メディア・コンサルタント
外資系ITベンダーでエンジニアを経てSBクリエイティブで編集記者、スマートキャンプでボクシル編集長を歴任。2019年からフリーランスで活動。メディアコンサルタントとしてメディア企画プロデュース・運営に携わる。
Web会議システムとは
Web会議システムとは、インターネットを通じて音声と動画、資料などをお互いに共有できるシステムだ。双方向通信を可能とし、リアルタイムでコミュニケーションが取れる仕組みである。場所を選ばず利用できる点は大きなメリットだ。
テレビ会議システムとの違い
Web会議システムと同様、遠隔地同士でコミュニケーションを取る方法として「テレビ会議」というものもある。具体的に、以下の表でWeb会議システムとテレビ会議システムの違いを確認してみよう。
項目 |
テレビ会議システム |
Web会議システム |
機器・設備 |
・専用回線・専用端末など |
・インターネット回線 ・インターネット対応端末
|
利用場所 |
・専用機器の設置場所 |
・制限なし |
用途 |
・会議室でのミーティング |
・テレワーク ・外出先での打ち合わせ ・商談 ・業務支援など
|
機能 |
・音声や動画 |
・音声や動画、資料の共有 |
参加者 |
・専用回線や機器のある場所への参加に限られる |
・招待により誰でも可能 |
テレビ会議では専用の機器を会議室に設置、さらに専用回線を敷設して使用する。一方、Web会議システムでは専用機器は不要だ。インターネット回線と接続できる端末があれば、特別な準備は必要ない。
簡易的なカメラやマイク、スピーカーを準備するケースはあるものの、基本的にはPCなどの端末に搭載されたカメラやマイクでも十分に対応可能だ。
Web会議システムの提供形態
テレビ会議のように特化した設備や回線が不要のため、比較的コストをかけずに気軽に導入できるのがWeb会議システムの大きな魅力だ。Web会議システムは有料・無料、また機能の違いなどからさまざまなサービスが提供されている。サービスの種類を大きく分けると主に2つ。
主に「クラウド型」と「オンプレミス型」だ。「クラウド型」は、サービス提供事業者が管理するサーバにアクセスし情報を交換する。「オンプレミス型」は、自社内のサーバを使う方式だ。
つまり、Web会議システムで使うサーバが「どこにあるか」という違いだ。セキュリティポリシーの厳しさやコスト面といった観点から、選択を検討することが望ましい。
Web会議システム導入のメリット
Web会議システムを業務上取り入れるメリットにはどのようなものがあるのだろうか。主に以下の4つがあげられる。
- ・費用負担が少なく手間がかからない
- ・遠隔地との迅速な情報共有
- ・柔軟なコミュニケーション
- ・経費削減効果・生産性向上への期待
これらのメリットについて、順番に見ていこう。
費用負担が少なく手間がかからない
コロナ禍以前より、遠隔地同士でのコミュニケーションを求められる場面が増加していた。今後はますます利用価値が向上する可能性が高い。しかし、企業負担はなるべくかけたくないものだ。
Web会議システムの導入には、テレビ会議システムのような大がかりな準備は必要ない。専用機器や専用回線の負担がないため、大きなコスト軽減となる。
総務省の情報通信白書(令和2年版)によれば、インターネットの利用率は個人利用でも9割前後の普及率となっており、あとは端末さえあれば誰でも参加可能だ。Webカメラやヘッドセット、マイクスピーカーなど簡易的な機器をそろえる程度であれば、コスト負担は少ないだろう。
PCやスマートフォンも搭載されているスペックによって、端末だけで対応できるものもある。また、事前の面倒な準備や難しい設定を行う必要がないため、どこでも誰に対してでもスムーズに展開できる。
遠隔地との迅速な情報共有
インターネット回線を利用するWeb会議は、場所や距離に左右されないことがメリットだ。1ヵ所に集まる必要がないため、テレビ会議と比べても時間的な自由度が高い。いつでもどこからでも参加できるため参加者の制限も少なく、必要に応じてすぐに情報を共有することが可能だ。
そのため、企業としての意識統一の迅速化に役立つ。専用回線や設定の準備が不要であり、手元のモバイル端末でも接続できることで、これまでにない形での打ち合わせやミーティングの可能性が広げられるだろう。遠隔地であってもスピード感のある情報共有ができれば、事業展開にも弾みが付けられるのではないだろうか。
柔軟なコミュニケーション
お互いの顔を見て話すことで、わずかな表情の変化から意図を汲み取れる場合もある。また、テレワークにおいて定時に社員が顔を合わせることは会社組織の維持にも役立つだろう。
お互いの健康や精神状態を確認し合う意味でも、Web会議システムが果たす役割は大きい。Web会議システムで提供されるサービスによっても参加人数は変わるが、グループや部署、より大きな単位まで自在に参加者を変更できる。さらに、資料共有機能が付加されたサービスを使えば、配布資料の閲覧がそれぞれの手元で簡単に行えるなどの柔軟性も魅力だ。
経費削減効果・生産性向上への期待
Web会議システム導入により、宿泊費や交通費などの出張経費、会場費などの大幅な削減が可能だ。さらに、社員の移動や集合などにかかる時間の削減ができ、業務効率化や生産性の向上が期待できる。コロナ禍においては、多くの企業が営業回りに変えて、Web会議システムの活用に踏み切った。
Web会議システム導入のポイント
いざWeb会議システムを導入するとなると、「どのように考えるべきなのか」迷うかもしれない。導入時に押さえたほうがよい主なポイントには、以下の4つがある。
- ・導入のニーズを明確にする
- ・予算とのバランス
- ・映像・音声品質を吟味する
- ・サポート体制を確認
これらのポイントについて、順番に見ていこう。
導入のニーズを明確にする
Web会議システムは導入して終了ではない。使いこなさなければ、いかに優れたシステムも無用の長物。利用価値を高めるためには、導入前に自社におけるニーズを、次のように細分化しておくことが必要だ。
- ・利用する職種
- ・利用するシチュエーション
- ・利用するデバイス
- ・参加人数
- ・頻度
これらを材料として、利用状況を想定しながら無料版・有料版を含めたWeb会議システムサービスの選択を検討しよう。映像や音声の質、通信の安定性、資料閲覧機能などの付加サービスについて、条件を絞り込むときに具体的かつ現実的な判断が期待できるだろう。
予算とのバランス
通信品質やセキュリティ面での充実、常時サポートの有無といった点では、有料ツールのほうが利便性は高い。自社のビジネスシーンで必須となる機能があれば、有料の導入もやむを得ないだろう。
ただし、無料サービスであってもビジネスユースに十分活用できるものも少なくない。ニーズと効果を踏まえ、トータルでの検討が重要だ。
映像・音声の品質を吟味する
Web会議システムにとって、映像や音声の品質は非常に重要だ。会議中に映像が乱れ、音声のみの会議に切り替えるケースがあるが、できればそうした事態は避けたい。ただWeb会議システムの映像や音声は、通信環境に大きく依存する。
快適な環境の要素は、「回線帯域」と「データ通信量」。このうち、回線帯域は通信速度を指し、映像や音声のズレに関係する。
データ通信料は、Web会議で消費されるデータの量だ。たとえば、1時間あたりの通信量は、Skypeで約2GBの消費だがZoomでは約200MB~300MBと、システムによって大きく異なる。これらの仕様について知っておくことも、安定した映像や音声を利用するために必要だろう。
サポート体制を確認
Web会議システムに限ったことではないが、サービス利用を選ぶにあたり留意したいのが、サポート体制だ。通常スタイルの会議の代替とするのであれば、トラブル発生時、即座に対処できなければビジネスには使えないだろう。
トラブルの際にどの程度の時間で対応可能か、問い合わせ窓口のポテンシャルや対応時間など、自社業務に不足のないサポート体制であることが重要だ。たとえば、業種によっては、土日・祝祭日でも必要なケースが考えられる。障害対応への備えを考慮することが、ツールの選択時には必要だ。
導入予定のWeb会議システムが海外の製品の場合、日本語での問い合わせに対応しているのかも要確認。トラブル時はもちろん、導入の際の設定でも迅速な指示があるのかがポイントとなる。
Web会議システムのシェア動向
利用者は、どのようなWeb会議システムを利用しているのだろうか。ここでは、利用動向について解説する。
Web会議システムの動向を確認
2020年4~5月にかけてMM総研が行った「
SaaS・コラボレーションツール利用動向調査」によると、2019年12月末におけるWeb会議システムの利用率は44%だった。しかし、2020年4月末には63%へと急激な上昇を見せている。
大企業を中心にテレワークが普及した結果、急速に導入が進んだ。導入目的の上位は次のような内容となっている。
2020年5月時点でのWeb会議システムのシェア状況は、「Zoom」が約35%。次いで、マイクロソフトの「Skype」と「
Microsoft Teams」がともに18%と続く。一方で、利用者の満足度の高さでは「Skype」が総合的なポイントで優位。理由としては、アカウント作成により無料での利用が可能なことがあげられている。
Web会議システム(n=1,481) |
|
製品名 |
利用率 |
1 |
Zoom |
35% |
2 |
Skype |
18% |
3 |
Microsoft Teams |
18% |
4 |
Cisco Webex |
11% |
5 |
Live On |
3% |
Web会議システムのシェア
一方、最もシェアの高かった「Zoom」の満足度は、セキュリティ面での不安要素から最下位となっている。(※2)
Web会議システム評価 |
|
UI/UX |
セキュリティ |
料金 |
運用 |
サポート |
合計 |
Zoom |
66.6 |
56.4 |
71.2 |
69.1 |
61.1 |
324.4 |
Skype |
68.9 |
68.3 |
72.7 |
68.1 |
65.1 |
343.0 |
microsoft Teams |
70.1 |
69.3 |
66.1 |
70.4 |
66.7 |
342.6 |
Cisco webEX |
68.2 |
68.9 |
64.6 |
64.6 |
59.6 |
326.1 |
Live On |
71.3 |
69.9 |
66.2 |
66.2 |
64.7 |
338.2 |
※評価方法 満足:100pt どちらかと言えば満足:75pt どちらとも言えない:50pt どちらかと言えば不満:25pt 不満:0pt |
Web会議システムの評価
人気Web会議システムの比較
知名度がある製品だからといって、必ずしも自社のニーズにマッチするとは限らない。利用するシチュエーションによって選ぶポイントは変わってくる。ここでは、基本的に見るべきポイントから人気Web会議システムを比較してみよう。
名称 |
接続アカウント数 |
接続の安定性 |
操作性 |
セキュリティ |
料金 |
Zoom |
最大100名 |
〇 |
ワンクリック操作でわかりやすい |
海外で不正アクセス発生、セキュリティ強化策を発表 |
基本:無料 プロ:2万100円 ビジネス:2万6,900円
企業:2万7,000円 |
Skype |
最大50名 |
▲ |
使い慣れていない場合直感的な操作が難しい |
ややリスクが高い |
無料 |
Microsoft Teams |
最大10,000人規模(プランによる) |
▲ |
Office との連動性がある インターフェイスがなじみやすい |
組み込みのインテリジェンスで組織を保護するなど良好 |
年間契約
基本:無料 Business Basic :540円/月 Business Standard:1,360円/月
E3:2,170円/月 |
Google meet |
最大100人(プランによる) |
〇 |
Gmailなどからの起動も可 直感的に操作しやすい |
良好 |
無料 Google Workspace Essentials:8 米ドル/月 |
Whereby |
最大4名(プランによる) |
〇 |
シンプル画面 |
脆弱性の指摘もある |
無料 |
Fresh Voice |
最大5名 |
〇 |
シンプルな画面構成 |
強固なセキュリティで信頼性が高い |
初期費用:一律10万円 3,000円~/拠点 |
LiveOn |
20名以上も可能(プランによる) |
〇 |
簡単・シンプルが売り |
官公庁・金融機関などの採用実績あり |
3,000円/月 ※初期費用あり |
人気Web会議システム比較検討のポイント
Web会議システムを比較検討する際に、押さえておくべき主なポイントを5つ解説していく。
・一度に接続できるアカウント数
有料・無料を問わず、接続可能なアカウント数はツールによって差が見られる。たとえば、Microsoft Teamsは最大1万人規模をうたっているが、これはオンラインライブを想定。逆に少人数での会議を想定しているツールでは、参加人数も限定されている。自社のニーズとのマッチングが重要だ。
・接続の安定
話の途中で切断されたり画面が乱れたりすると会議に集中できない。ビジネスユースであれば接続の安定性確保は必須だ。
・操作性
PCや端末操作に慣れていないユーザーでも、スムーズに会議に参加できることが大切だ。直感的な操作が可能なツールは生産性を高めるだろう。
・セキュリティ
業務上の話題、データを扱うのであれば、セキュリティの信頼性は必須だ。他者からの不正介入などが発生するようでは、ビジネスツール以前の問題だろう。
・料金(無償か有償か、有償の場合の金額)
無料ツールだからといって、必ずしも使えないわけではない。最初から有料・無料で決めるのではなく、各ツールのメリット・デメリットから判断しよう。有料の場合には、コスト対効果のバランスを見極めることが必須だ。
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