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- 2020/11/10 掲載
オイシックス執行役員 西井敏恭氏が考える、サブスクリプションモデルの原理原則
サブスクリプションの定義に感じる「違和感」
デジタル化によって、生活のあらゆるシーンにおいて「質の変化」が生じている。このほど都内で開催された「CMO JAPAN SUMMIT」に登壇した西井氏は、旅行を例にとって説明した。「たとえば、2003年当時は、旅行者はガイドブックを携えて旅行をしていましたが、2013年にはスマホ1つで宿の予約から目的地までの経路検索まで、何でも行えるようになり、以前は1年かけた行程を3カ月で回れるようになりました」(西井氏)
デジタル化によって情報の量や質が変化し、これによって旅行という体験の「質も目的も大きく変化」したわけである。西井氏は、オイシックス・ラ・大地(当時はオイシックス)において、2016年頃にビジネスモデルを定義した。
「豊かな食卓を創造する」ミッションの実現のために、「食×サブスクリプションの圧倒的ナンバーワンプレーヤーをめざす」というもので、同社はいわば「サブスクリプション」をビジネスに取り入れてきた先進企業の一つだといえる。
しかし、サブスクリプションという言葉が定着するにつれて、「ある違和感を覚える」と西井氏は述べる。
「サブスクリプションの定義を見ると、『顧客がサービスの利用期間に応じて料金を支払うビジネスモデル』などとされ、定期購読や予約購買などと言い換えられていますが、これには少し違和感があります」(西井氏)
これのどこに、西井氏は違和感を覚えているのか。
サブスクリプションの本質は「マーケティングの変革」にある
西井氏は「サブスクリプション」と従来の「定期販売」の違いについて説明した。たとえば、「Netflix」などの動画配信サービスと、従来のケーブルテレビのビジネスを見ると、「月額いくらの定額サービスという点では同じだ」という。あるいは「NewsPicks」などのニュースサービスの有料会員と、新聞などの従来メディアの違いはどこにあるのか。西井氏は「単にオンラインで商品やサービスを定期販売するのがサブスクリプションかというと、私は違うと思う」と指摘する。
また、最近注目を集める「D2C(Direct to Consumer)」と「製造小売(Specialty store retailer of Private label Apparel:SPA)」の違いについても、「D2Cはブランドの立ち上げから情報発信、広告、マーケティング、購入までデジタルで完結しており、SPAは実店舗を持っている点が異なるといわれるが、私はもっと本質的な違いがあると考えている」とした。
西井氏は、サブスクリプションのビジネスモデルの基本は「LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)がCPO(Cost Per Order:新規顧客の獲得単価)を上回ることにある」と述べる。これは「1人の顧客が、将来的に自社にどれだけ利益をもたらすか」が「新規顧客に自社商品を購入してもらうために要した費用」を上回ることだ。
しかし、従来の定額通販ビジネスがWeb化、デジタル化するに際して「CPOが高い」「LTVが低い」という議論になることが多いと西井氏は話す。これは、デジタル化によって、ユーザーはスマホ1つで簡単に買い物が行えるようになり、「定期的に商品が届くことがユーザーにとっての利便性につながらなくなってきた」ことが背景にある。
顧客にとっての利便性が少なくなり、かつ、広告によって商品の差別化が難しくなったことで「従来のビジネスモデルよりもLTVが低くなり、CPOが高くなった」というのだ。
では、Webで定期販売のモデルを成功させるにはどうしたら良いか。西井氏は「成功のカギを握るのはマーケティングだ」と述べる。
サブスクリプションは、「定期通販とビジネスモデルは同じでも、マーケティング手法が異なる」と西井氏は話す。すなわち、サブスクリプションとは、「デジタル(データ)の活用によってマーケティングが変革することだ」というのだ。
【次ページ】「サービスを使い続ける気持ち」を高めるオイシックスの施策
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