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  • 2021/03/25

中外製薬のDX、「業界経験ゼロ」のリーダーはどう巻き込んだか?統轄部門長が語る

「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」を策定し、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する中外製薬。デジタルを活用した新薬創出など、R&Dに必要な投資を確保するための「バリューチェーン効率化」や、デジタル人財の獲得・育成、今後のIT投資の方向性にどんなビジョンを描くのか、中外製薬 執行役員 デジタル・IT統轄部門長の志済聡子氏に、今後の成長に向けた具体的施策について聞いた。

聞き手:編集部 松尾慎司 構成:編集部 渡邉聡一郎 執筆:阿部欽一

聞き手:編集部 松尾慎司 構成:編集部 渡邉聡一郎 執筆:阿部欽一

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中外製薬
執行役員 デジタル・IT統轄部門長
志済 聡子氏
(画像提供:中外製薬)



コロナ禍で変わる営業活動、デジタルマーケティングを一層強化

──前編では、「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」の3本柱のうち、「デジタルを活用した革新的な新薬創出」「デジタル基盤の強化」について詳しくお聞きしました。残る1つ、「全てのバリューチェーン効率化」についてお聞かせください。

志済聡子氏(以下、志済氏):R&Dに必要な投資を確保するために、全てのバリューチェーン効率化を目指しています。生産プロセスではAIと人間が協働した生産の自動化が、営業プロセスでは医療ニーズを予測し提案する営業スタイルなどを想定しています。

 特に新たな営業スタイルについては、営業本部主導で、もともとあるCRMシステムに加え、オウンドメディアから得られる情報を分析しながら、医療関係者のニーズを把握し、データドリブンなマーケティングに取り組んでいます。ITソリューション部も連携しながら、新システムのあるべき姿を描き、実際のシステム開発に落とし込んでいます。

──コロナ禍で従来の訪問営業ができなくなり、デジタルマーケティングの重要性が高まったのではないかと思います。この分野に関して、何か新たな取り組みはありますか?

志済氏:はい、医療関係者を直接訪問できない中で、いかに課題やニーズを把握していくかが重要です。中外製薬では、2019年4月から医療関係者向けのWebサイト「PLUS CHUGAI」で、専門医の高いニーズを満たすコンテンツやWeb講演会などを提供しています。

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デジタルマーケティングに活用される「PLUS CHUGAI」
(提供:中外製薬)

 ここから得られるデータを分析し、例えばどういうコンテンツに医師の関心が高く、どういうテーマのWeb講演会が視聴されたか、それに基づきMRがどういうアクションを起こすべきか、インサイトを与える取り組みを現在行っています。

 こうした取り組みは、コロナ禍でMRの業務の進め方が変わったことで、昨年から急速に加速しました。これまで作ってきたコンテンツをブラッシュアップしながら、データ活用の仕組みを整備しています。

デジタル変革のイネーブラーになるのが自分の役割

──志済さまは、全てのバリューチェーンの効率化にはどのように関わっていますか。

志済氏:中外製薬では、医薬安全性本部、営業本部、メディカルアフェアーズ本部を「ソリューション三本部」と位置づけています。上記のデジタルマーケティングに向けた具体的な取り組みは、営業本部が主導し、経営全体の方針に従ってどのように進めるかを三本部のメンバーが検討しています。連携を通じ、個別化医療の提案をはじめとするソリューションを提供していくのです。

 私が所管するデジタル戦略推進部はパートナーとして三本部の検討に加わります。たとえば、リモート環境で推奨されるITテクノロジーの推奨など、DX実現のために活用すべきテクノロジーや、実装のロードマップを策定し、経営の判断をサポートしています。

 2021年1月に発表した「デジタルプラントの実現に向けた生産機能のDX」への取り組みが、デジタル戦略推進部をパートナーとしたこのアプローチの始まりでした。これは日本IBMをパートナーに、浮間工場をモデルケースとして「人」に着目した生産機能のDXを展開するものです。自社創薬の加速や様々な環境変化に対応し、生産性向上や信頼性向上、働き方変革を推進していく取り組みです。

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中外製薬が目指す「デジタルプラント」のコンセプト
(提供:中外製薬)

 この取り組みでは、デジタル戦略推進部がプロジェクト立ち上げまでを伴走して支援し、実際にモノづくりが始まる段階からはITソリューション部がシステム構築を担っています。

──デジタルビジネスの領域ではシステム部門と事業部門との連携が不可欠ですが、モノづくりの現場とデジタル部門の連携はどのような方針で進めていますか?

志済氏:確かに、工場は今までのモノづくりに対する矜持を持っています。医薬品というモノの特性もあり、規制法令や規制当局の審査や査察などへのコンプライアンス対応を、人の力によって実施してきました。今後も対応すべきポートフォリオが増えていく中で、その業務を急にデジタルで置き換えることに抵抗感があるのは当然です。

 ただ、製薬本部のトップは、このデジタルの流れは「やらないといけないもの」という危機感を持っています。全社DXに向けた取り組みについて真っ先に手を挙げてくれたのも製薬本部です。今後もDX戦略に則って、変革を進めていけると感じています。

──デジタル部門を統轄する責任者としてのリーダーシップについて、どう考えていますか。

志済氏:私のバリューは、日本IBMを出自とし、テクノロジーやデジタルの目利きができる点です。そのコアバリューを、経験ゼロで飛び込んできた製薬業界の中でどう生かせるか。

 私の役割は、現場が変革に前向きになれるようなプロジェクトにいかに仕立てられるかにある、と考えています。実際に実行するのはそれぞれの本部ですが、デジタル部門の責任者として変革のイネーブラー(後援者)になるのが私のすべきことです。

 そのためにはテクノロジーありきでなく、各部門がどのような課題を持っているかを理解し、変革を「全社ごと」にするため各本部にそのマインドを根付かせることが重要だと考えています。

【次ページ】ビジョンを明確に打ち出すことが、人財獲得につながる

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