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  • 2021/04/20 掲載

進化する自動配車システム、それでも中小運送会社が配車に苦しむ決定的原因

連載:「日本の物流現場から」

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運送会社にとってビジネスの肝とも言えるのが、トラックの輸送ルートやスケジュールを決める配車業務であり、その配車業務を自動化するのが自動配車システムである。最新の自動配車システムの中には、社会的課題となりつつあるラストワンマイル問題に特化したもの、複数の物流拠点を経由する複数日の輸送計画を算出できるものなど、人の手では難しい高度な最適化計算機能を実現できるものも登場している。先進的な配車システムを開発、提供しているオプティマインド、日立製作所に取材を行い、進化する自動配車システムの今と、自動配車システムを介して見えてくる、中小運送会社の課題を考える。

執筆:物流・ITライター 坂田 良平

執筆:物流・ITライター 坂田 良平

Pavism 代表。元トラックドライバーでありながら、IBMグループでWebビジネスを手がけてきたという異色の経歴を持つ。現在は、物流業界を中心に、Webサイト制作、ライティング、コンサルティングなどを手がける。メルマガ『秋元通信』では、物流、ITから、人材教育、街歩きまで幅広い記事を執筆し、月二回数千名の読者に配信している。

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自動配車システムを介して見えてくる、中小運送会社の課題とは
(Photo/Getty Images)

自動配車システムとは?なぜ必要か

 配車は、トラックが貨物を輸送する上で不可欠な輸送スケジュールを立案する業務である。

 配車計画を立案するには、労働基準法、改善基準告示などの、トラックドライバーの労務コンプライアンスを遵守し、貨物の性質(冷蔵冷凍、もしくは毒劇物。荷役上の注意点など)を考慮した上で貨物の積み合わせとトラックをマッチングし、最適な輸送ルートを考える必要がある。

 配車業務を行うのは、経験豊かな配車担当者でないと難しいと考えられてきた。貨物の特性、卸地および積地の状況、渋滞の有無などを含めた道路交通情報などを総合的に勘案し、最適な配車計画を立案できる一人前の配車担当者になるには、数年の経験が必要とされるからである。

 だがそれゆえに配車業務は属人化しがちだ。育成に手間と時間がかかり、替えの効かない配車担当者だからこそ、ついてまわる課題である。

 運送会社にとって配車業務は、売上を確定し利益を生み出す、運送会社の肝となる業務である。それゆえに配車業務が属人化することは、運送会社にとって経営のリスクにもなり得る。

  • もし配車担当者が急病など、不慮のアクシデントでいなくなってしまうと、輸送業務の継続がきわめて難しくなってしまう。
  • 配車担当者が作り出す配車の品質が、運送会社の売上や利益に直結してしまう。

 配車システムが求められる理由はいくつもある。だが、総じて求められるのは、属人化の排除と、より生産性の高い配車計画立案への期待である。

 自動配車システムは、TMS(Transport Management System / 輸配送管理システム)とも呼ばれる。トラックドライバーの労務、貨物の積み合わせ、輸送ルート最適化の3要素を、ルート最適化アルゴリズムなどのエンジンによって最適化し、計画立案する機能を備えている。

 自動配車システムの中には、動態管理システムを備えているものも多い。動態管理システムとは、トラックに車載されたGPS装置や、スマートフォンなどを用いて、トラックの現在位置、運行状況、作業の進捗などを管理するためである。

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宅配便取扱個数の推移。ただし、2020年度は、ヤマト運輸、佐川急便、日本郵政の速報を元に、最低到達ラインの予測値を代入している。

 さて、ここからは自動配車システムの“今”を知るべく、先進的な配車システムを提供しているオプティマインド、日立製作所を紹介していこう。

ラストワンマイルの配送最適化を担う先進自動配車システム

 宅配便の取扱個数は年々増加している。2009年度に約31億3694万個だった宅配便の取扱個数は、2019年には43億2349万個に拡大している。2020年度の正式統計はまだ出ていないものの、宅配取扱量TOP3のヤマト運輸、佐川急便、日本郵便における宅配取扱個数の合計は45億個近くになる見込みだ。

 もともとあったECマーケットの拡大に加え、新型コロナウイルス禍における巣篭もり需要が、宅配便の取扱個数を押し上げている。

 トラックドライバー不足は依然として深刻な状況にある。

 最終消費者へ荷物を届けるラストワンマイル配送においては、在宅ワークの広がりによる再配達率低下などのプラス要因もあるものの、総体的にはトラックドライバー不足、ラストワンマイル配送を担う運送会社の不足などもあり、さらなる配送効率の追求が求められる。

 オプティマインド(愛知県名古屋市)は「世界のラストワンマイルを最適化する」をキャッチコピーに、走行データ学習型配車システム『Loogia』(ルージア)を提供している。

「トラックが配送を行った実際の走行実績データを元に、システムが統計解析や機械学習を行い、より最適な配車計画を立案することができます」

 オプティマインドの松下健CEOは、ルージアの特徴をこのように説明する。

 ルージアは協力会社から提供を受けた、日本全国の車両走行GPSデータを元に各道路の移動時間を予測し配車計画を立案する。宅配のように一日に数十~百件以上の配送を行う場合、移動時間算出の正確さは輸送効率の向上に直結する。

 またルージアは、実際に配送を行ったトラックの実走行ログから、配送先の搬入口や停車位置を学習していく機能を備えている。

 読者の皆さまも、カーナビに従って目的地に行ったら駐車場入り口とは違う建物の裏側などに誘導され、右往左往した経験があるかもしれない。ベテランの宅配ドライバーは、会社や工場といった大きな施設における搬入口や住宅地内におけるトラックの駐車位置等を、経験として把握している。ルージアは実走行ログから搬入口や停車位置を学習することができるのだ。

 ルージアの説明には「配車ノウハウを継承したい」というキャッチコピーが並ぶ。

「たとえば、配車の経験がまったくないパートやアルバイトであっても、完成度の高い配車計画を立案できること。ルージアを使えばそれが実現できるのです」(オプティマインド 松下健CEO)

 ルージアは配車担当者とトラックドライバーという、運送会社には欠かせないものの属人化しがちな知見をシステムが蓄積していくことで、より効率的な配車計画立案へ生かすことができるのだという。

【次ページ】自動配車システムを現場で使いこなせない、一番の原因は

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