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  • 2021/04/09

運送会社「配車担当者」の苦悩…会社の大黒柱が抱える多大なストレス

連載:「日本の物流現場から」

「どんな運送会社にも欠かせない人材は?」と尋ねれば、「トラックドライバー」と答える方が多いかもしれない。だが正解は、トラックドライバーではなく、配車マンである。すべての運送会社がトラックを自社保有しているわけではないが(ノンアセットと呼ばれる、車両を保有しない運送会社もある)、業務内容に多少の差はあれど、配送スケジュールや車両の手配などを行う配車マンは、どんな運送会社にも必要とされる人材である。一般的には注目されることも少ない配車マン、その苦労とは。

物流・ITライター 坂田 良平

物流・ITライター 坂田 良平

Pavism 代表。元トラックドライバーでありながら、IBMグループでWebビジネスを手がけてきたという異色の経歴を持つ。現在は、物流業界を中心に、Webサイト制作、ライティング、コンサルティングなどを手がける。メルマガ『秋元通信』では、物流、ITから、人材教育、街歩きまで幅広い記事を執筆し、月二回数千名の読者に配信している。

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配車マンの苦悩と、会社経営におけるリスクとは
(Photo/Getty Images)

臨時配車マンを担った、筆者の失敗談

 運送会社によって、もしくは配送する貨物や荷主などによって、配送の段取りは異なる。配車マンはトラックごとに、積込みと荷卸しのスケジュール、配送コースなどの段取りを立案する。貨物とトラックの積み合わせのマッチングから、トラックの走行ルート、積地、卸地の状況、もしくはドライバーたちの間で仕事に対する不公平が出ないように配慮するなど、論理的思考能力と細やかな気遣いの両方を必要とする仕事である。

 筆者は、かつてトラックドライバーだった。ある時、配車マンが出張に出なければならなくなった。そこで、私が臨時の配車マンを務めることになった。

 率直に言えば、私には自信があった。当時の配車マンは、私と同期であり、私は彼よりも、ドライバーとしては優秀であるとうぬぼれていたのだ。また、彼の組む配車に対して不満も感じていた。彼の組む配車は、私にはどうにもぬるく感じていたからである。

 私が配車を組んだ当日の朝。何人かのドライバーは、「厳しいな~」などと苦笑いをしながら、出庫していった。だが、表立って文句を言うドライバーはいない。当時の私は、言わばサル山のボスであり、私に表立って意見を言うことができるドライバーはいなかったからだ。

 当日、私は、事務所にいて、ドライバーたちの配送進捗状況をチェックしていた。時が経つにつれ、私は焦り始めた。事務所に掲げられたホワイトボードに記された、当日の配車スケジュールはスムーズに進行せず、積地/卸地に到着する予定時刻はどんどん遅れていったからだ。

 時間指定のあるお客さまのもとには予定を組み替えて、早く到着できそうなトラックを向かわせた。だがそれでもカバーできないお客さまもいた。私は延着するお客さまにお詫びの電話を入れながら、次第に怒りをためていた。

「俺だったら、時間通り回れるのに……。みんな、仕事が遅いよ!」

 結局私が立てた配車は計画通りにいかず、大幅な当日変更を強いられた。変更の挽回には手間がかかる。全車両が帰庫したのは、通常よりも大幅に遅れてのことだ。

 中でも、特に遅くなったドライバーがいた。というよりも、彼の作業遅れが最大の敗因だった。帰社した彼に対し、私はつい「俺だったら、予定通り回れましたけどね」と嫌味を言ってしまった。

 彼は、私よりもひとまわり以上年上であった。だが生意気な年下の先輩である私を、それでも立ててくれる彼は、私の言葉に怒ることもなく、穏やかにこう言ったのだ。

「僕もそう思いますよ。でも、僕があなたと同じように仕事ができるようになることは、ちょっと無理なんじゃないかな。優秀なあなたの基準では、この営業所は回らないと思います」

配車計画を立案するうえで必要な3要素

 配車計画を立案する上で勘案すべきは、以下の3要素である。

・シフト
 ドライバーが守るべき労務上のコンプライアンス(労働基準法や、改善基準告示)を遵守した上で、ドライバーたちの出勤シフトを立案する。

・貨物の積み合わせ
 貨物の荷姿や性質、荷役上の都合などを総合的に勘案し、トラックと貨物、もしくは同じトラックに積み合わせる貨物の組み合わせなどを立案する。

 当然だが、たとえば4トン車に10トンの貨物は載せられない。また、貨物の荷姿や性質によって平トラック、ウイング車など適切なトラックを選択する必要がある。さらに複数の荷主、複数の行き先の貨物を混載するときは、同じトラックにどのように積み合わせることが適切か、考慮する必要がある。

・配送ルート
 複数の積地。卸地を効率よく移動するための配送計画を立案する。効率の良い配送を実現するためには、基本的にはなるべく卸地、積地が固まった地域にある方がいい。時間も走行距離も短縮できるからである。

 だが、地理距離の発想だけでは、適切な配送ルートは組めない。たとえば午前中に神奈川県西部(平塚や厚木、小田原など)から移動するケースでは、距離では近い横浜や川崎よりも、入間、川越といった圏央道で向かうことができる埼玉方面に向かうほうが、短時間で移動できることもある。

 さらには卸地、積地における作業性(「A物流センターは、待機時間が長い」など)、トラックのサイズや貨物の特性を考慮した通行規制なども考慮する必要がある。

 配送の形態によってそれぞれの要素の重要度は変わってくる。

 コンビニ配送などはあらかじめ配送ルートが決まっていてケースが多い。路線便における主要都市に配置された物流センター、営業所などを長距離輸送する運行においても、トラックが走る移動経路は原則、大きく変更されることはない。こういったケースでは、貨物の積み合わせや配送ルートの考慮よりも、シフトをしっかりと管理することが重要になる。

 一方で、配送先や荷主に日々変化があるケースでは、また事情が異なってくる。たとえば建築資材を運ぶ場合、荷主、積地は同じであっても、輸送先となる工事現場は日々異なる。このように配送先が日々異なるケースでは、貨物の積み合わせや配送ルートが重要になる。

 さらに言えば、異なる荷主の貨物を積み合わせて、より割安な配送サービスを提供する混載便であれば、シフトよりも配送ルート、貨物の積み合わせに対し、より高度な配車手腕が求められる。

 配車マンは担当する配送の形態を考慮し、最適な配送計画を立案することが求められる。同じ配車マンと言えど会社、もしくは営業所が異なれば、求められるノウハウは千差万別なのだ。

【次ページ】人間関係のストレスにさらされがちな配車マン

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