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  • 2021/05/28 掲載

デジタル庁は「何に」「どのように」取り組むのか? 5つの重点施策とは

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2021年4月14日、「デジタル庁」の発足を柱とするデジタル改革関連法案の審議が衆議院で始まった。デジタル社会の形成に関する施策を迅速かつ重点的に推進する新たな司令塔として、デジタル庁を2021年9月1日に発足する予定だ。デジタル庁とは、どのような体制で、どのように取り組む組織なのだろうか。デジタル庁の目指す姿と具体的な5つの重点施策を解説する。
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デジタル庁は何に取り組む省庁なのか
(出典:デジタル庁 Webサイト)

コロナ禍で顕在化した「遅れ」:デジタル庁発足の背景

 新型コロナウイルス感染症の影響により、日本経済は大きな打撃を受けて経済回復にも大きな時間を要すことが懸念されている。コロナ禍では世界の先進国と比べ、日本における官民のデジタル化の遅れが顕在化した。

 そのため、政府は2020年12月、「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」を策定し、ポストコロナの新しい社会を目指すためにデジタル改革の推進を目指している。新しい社会とは「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会」を指す。「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」を目的とする改革の目玉の1つが「デジタル庁」の設置である。

 2021年2月にはデジタル庁の組織や所掌範囲を規定した「デジタル庁設置法案」などのデジタル改革関連6法案が国会に提出されて閣議決定された。これにより、2021年9月1日にデジタル庁を発足する予定だ。

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デジタル庁設置法案の概要

デジタル社会の形成を推進する:デジタル庁が担う役割

 デジタル庁は、内閣官房とともにデジタル社会の形成に関する施策などの内閣事務を支援し、行政事務の迅速かつ重点的な遂行を図ることを任務とする。具体的には、デジタル政策の企画立案により、国や地方公共団体、準公共部門などの情報システムを統括・監理し、重要なシステムを整備していく。

 デジタル庁の長、主任の大臣は内閣総理大臣が務める。また、内閣総理大臣を助け、デジタル庁の事務を統括するデジタル大臣を置く。副大臣、大臣政務官に加えて、デジタル監やデジタル審議官などの特別職を設ける。

 さらに、CTO(最高技術責任者)やCDO(最高データ責任者)などを置き、官民問わず適材適所の人材を配置する予定だ。2021年4月12日には、競争倍40倍を超える1432人の応募から選抜された35人が辞令交付を受けた。2021年9月の庁発足時は500人の規模を想定し、民間からは約100人を登用する計画である。

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デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針の概要

デジタル庁が目指す大きな5つの柱

 デジタル庁では、国民向けサービスの実現やデジタル社会を支えるシステムの共通機能の整備や普及、データ戦略など、大きな5つの柱を掲げている。

デジタル庁の5つの大きな柱:デジタル庁の取り組み
  1. (1)徹底したUI・UX/国民向けサービスの実現
  2. (2)マイナンバー・マイナンバーカードなどデジタル社会の共通機能の整備・普及/PFとしての行政
  3. (3)データ戦略(ベース・レジストリの整備/トラストの確保/DFFTの推進)
  4. (4)官民をあげた人材の確保・育成
  5. (5)新テクノロジーを大胆に活用調達や規制の改革


 ここからは、5つの柱の内容について解説していく。

(1)徹底したUI・UX/国民向けサービスの実現

 「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」を踏まえて、政府は、国・地方自治体のデジタル化指針を盛り込んだ「2020年改訂版 デジタル・ガバメント実行計画」を2020年12月に策定した。デジタル・ガバメントとは、国民・事業者の利便性向上に重点を置き、行政の在り方そのものをデジタル前提で見直すという方針を掲げている。デジタル庁では、その取り組みを加速させる。

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【2020年改定版】デジタル・ガバメント実行計画の概要

 国・地方自治体では、政府ホームページの統一化を図り、マイナポータルなどの情報システムのUI/UXの抜本的な改善を進める。また、「国・地方の情報システム、準公共分野の情報システムの整備方針」(2020年12月策定)に従い、デジタル庁が関わる情報システム整備の際に、社会が具備すべき共通機能などを提示する。

 デジタル庁では、情報システム関連予算を段階的に一括計上して予算を配分したり、プロジェクトを管理する仕組みの構築を目指す。地方自治体の情報システムについては、標準化・共通化を推進し、2025年の全国規模のクラウドへの移行を目標としている。2020年12月に策定した「自治体DX推進計画」に基づき、情報システムの標準化・共通化や行政手続きのオンライン化などの実施手順をまとめた「自治体DX推進手順書(仮称)」を2021年夏を目途に提示する計画だ。

(2)マイナンバー・マイナンバーカードなどデジタル社会の共通機能の整備・普及

 「デジタル・ガバメント実行計画」の工程表に基づき、マイナンバーの利活用促進やマイナンバーカードの普及に取り組む。2021年3月末時点で、有効申請受付累計数は約4549万件、交付実施済数は約3590万数となっており、国民の約3人に1人の割合で申請している状況にある。

 マイナンバーカードは、令和4年(2022年)度末までにほぼ全員に行き渡ることを目指し、遅くとも2021年度10月までには健康保険証としての本格運用を開始し、2024年度末には運転免許証との一体化などを進める計画だ。

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マイナンバーカードの申請・交付状況

 政府は、「ガバメントクラウド(Gov-Cloud)」によって官民がデジタルトランスフォーメーション(DX)を進める上でのインフラを整備・運用する。ガバメントクラウド(Gov-Cloud)とは、政府の情報システムにおける共通的な基盤・機能を提供する複数のクラウドサービス(IaaS、PaaS、SaaS)の利用環境を指す。

 たとえば、各府省が標準仕様書を作成する業務システムについては、ガバメントクラウドの活用を積極的に推進。2025年度末には、原則すべての自治体でガバメントクラウドを開始し、各府省・地方自治体のプラットフォームとしての行政の実現を目指すという。


【次ページ】デジタル庁が目指す「人材育成」「規制改革」
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