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  • 2022/03/31

リクルートワークスに聞く「リスキリング」、DXが不発の理由は“スキル不足”か

国も自治体も中小企業のデジタル活用を支援している。しかし、うまくいったという話は、残念ながらあまり聞こえてこない。デジタルを使いこなせる経営者と従業員が育っていないからだ。だからこそ、リクルートワークス研究所 主任研究員の大嶋 寧子 氏は「スキルの再開発(リスキリング)」の重要性を訴える。ここでは、リスキリングとデジタル活用の研修プログラムを容易に選択できる仕組みについて解説する。

ITジャーナリスト 田中克己

ITジャーナリスト 田中克己

日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長、主任編集委員などを歴任し、2010年1月からフリーのIT産業ジャーナリストとして活動を始める。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)、2012年度から一般社団法人ITビジネス研究会代表理事を務めるなど、40年にわたりIT産業の動向をウォッチする。主な著書に「IT産業再生の針路」「IT産業崩壊の危機」(ともに日経BP社)がある。


中小企業のデジタル化を阻む理由は「リスキリング」にあり

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リクルートワークス研究所
主任研究員
大嶋 寧子氏
 リスキリングとは何か。リスキリングとは「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること(リクルートワークス研究所)」を指す。近年、特にDXやビジネスのデジタル化と同時に生まれる新たな職業や、仕事の進め方が大幅に変わりそうな職業につくためのスキル習得を指すことが多い。

 DXを筆頭にビジネスモデルや事業戦略が変わるなら人材戦略も必然的に変わるため、DX時代の人材戦略には「リスキリングが必要不可欠」と言えそうだ。

 エンタープライズ企業に比較し、中小企業のリスキリングとデジタル化がなかなか進まない。経営者のデジタル化に対する意識や従業員の活用力、導入コスト、デジタルツールの選択など解決すべき課題が残っており、資金や人材が乏しいこともある。

「大企業に比べると、中小企業は人手も予算も少ないのは確かです。しかし、たとえば月額1,000円程度で利用できる安価なツールや無償で使えるツールもあります。つまり、資金がないからデジタル化に取り組めないのではなく、こうした便利で安価なツールがあることを知らないのです」(大嶋氏)

 しかも、デジタルやITへの投資は、大きなものから小さく柔軟に現場のニーズに応じて活用できるものへと変質している。問題は、中小企業の経営者がこうした情報をうまくキャッチアップできず、変革の機会やデジタルがもたらす脅威を正しく理解できていないことにあるのだ。

 ただし、中小企業が安価なデジタルツールを導入したからといって問題が解決するわけではない。ツールを導入すると保守費や、使いこなすためのコスト、リスキリングのための教育費などが積み重なっていく現実もある。月額使用料1,000円でも、従業員20人が使えば2万円になるなど新しいツールに多額のコストを使うことは難しい。

「デジタル化に先行した中小企業に聞いてみると、多機能のアプリケーションを入れても使いこなすスキルがないので、まずは部分的に導入して自分たちにメリットがあることを確認し、スキルの再開発を含めて広げていくケースが多いようです。最初から一気に変えようとするとコストがかかるだけではなく、人がついてきません。スキルを開発しつつ従業員が使っていくプロセスが重要です」(大嶋氏)

経営者向けと従業員向けのリスキリング

 リクルートワークス研究所は、中小企業のリスキリングとして「経営者向け」と「従業員向け」があると説明する。経営者向けは、デジタルの活用が効率化など経営に深く関与することを理解し、ビジネスがどのように変わっていくのかを思い描けるようにするものだ。

 従業員向けのリスキリングは3種類ある。1つは「使いこなしのリスキリング」だ。デジタル化は仕事の内容を大きく変えるので、それに適用するツールを使いこせるようにする。デジタルのメリットを感じられるようツールを導入することでもある。

 2つ目は「変化創出のリスキリング」だ。簡単にいえば「こうしたい」といった現場の声を吸い上げて、課題と解決を提案できるようになることだ。IT企業とコミュニケーションし、デジタル推進プロジェクトを担う、いわば旗振り役に求められるスキルである。

 3つ目は「仕事転換のリスキリング」だ。デジタルを使った新規事業の立ち上げではビジネスモデルが変わり、担う役割が変わる。このため、古いスキルを捨てて新しいスキルを身に着ける必要がある。その学習教材を用意するとともに、アサインした新規事業の担当者らを脱落させないようにする。

「この3つを混同してはいけません。まず従業員に『デジタルは役立つ』ことを実感し、スキル開発に前向きになってもらいます。たとえば、入退室管理や社内に設置した自動販売機の利用をICカード管理に、従業員に『便利だ』と感じてもらうのです。こうした取り組みを積み重ねないと、デジタル化に現場が疲弊し、管理職が反発します。これまでのやり方を否定されるためです。変わることへのアレルギーをなくすために、就業時間を変えたり制服を変えたりといった進め方もあります」(大嶋氏)

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経営者のリスキリングと従業員のリスキリング
(出典:リクルートワークス研究所)

 デジタル人材は自社で育て、IT企業に正確に要求を伝えられるようにするなど、IT企業に丸投げしないようにする。ビジネスを変えていくための課題と解決の知識・知見を蓄積し、活用できるようにするためだ。

【次ページ】経営者向けと従業員向けのリスキリング

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