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  • 2022/06/08

長期的な視野で設計が必要、流通・小売り業界の「止まった時計を動かす」システムとは

SIC流通とシステム化分科会

社会基盤としてなくてはならない小売市場だが、その巨大な市場の中に、多種多様な商品、サプライチェーン、さらには消費財、物流との兼ね合いなど、さまざまな要因が絡み、なかなかDXが進んでいない。30年変わらずに来てしまったとも言われる小売、その変革のタイミングはまさに今だ。システムイノベーションセンター(SIC)の流通とシステム化分科会では、急速に加速する社会変化に対応し得る小売・流通機構のあり方を探っている。今後、20年と続けていける持続可能なシステムを作るためには何が必要か。

執筆:フリーライター/エディター 大内孝子

執筆:フリーライター/エディター 大内孝子

主に技術系の書籍を中心に企画・編集に携わる。2013年よりフリーランスで活動をはじめる。IT関連の技術・トピックから、デバイス、ツールキット、デジタルファブまで幅広く執筆活動を行う。makezine.jpにてハードウェアスタートアップ関連のインタビューを、livedoorニュースにてニュースコラムを好評連載中。CodeIQ MAGAZINEにも寄稿。著書に『ハッカソンの作り方』(BNN新社)、共編著に『オウンドメディアのつくりかた』(BNN新社)および『エンジニアのためのデザイン思考入門』(翔泳社)がある。


分科会の立ち上げと目的

 流通とシステム化分科会は昨年8月にスタートしたばかり。主査は河合亜矢子氏(学習院大学)。河合氏は、その立ち上げの背景を次のように述べる。

 小売市場はGDPの約20%(金額にして114兆円)という巨大な市場であり、サプライチェーン、物流、消費財といった、さまざまなサービスも存在する。その巨大な産業の出口になっているにもかかわらず、小売はこの30年間ほぼ変わらずに来てしまった。時代は変わっているのに、だ。それが、食品ロスや過重労働、CO2削減、ドライバー不足など多くの社会課題を生む温床になっている。小売業界の止まった時計の針を動かすというのが、日本経済の停滞を打破する鍵になるのではないかと河合氏は語る。

 分科会の目的としては、長期的、広範囲な視野でオペレーションシステムの設計についての議論を行うことで、この先10年、20年と続けていけるような持続可能なシステムを作るために何が必要かを考えること。

 3期に分けて活動を進めていく予定で、1期目は勉強会と意見交換会を進めている。小売流通に関わるサプライチェーンのプレイヤー、経営層に講演してもらい、実態と課題について理解する。2期目は他の領域との接続性という観点から、流通・物流境域における企業間インターフェース、特にデータ連携というところに焦点を当てて調査を行う。3期にこれまでの勉強会、調査の内容を報告書にまとめるという形だ。

 流通業が現在抱えている問題点を洗い出すところから始めるのではなく、河合氏と副主査・藤野直明氏(野村総合研究所)が日本小売業協会で提言書としてまとめたものをベースにシステムの連携の部分を深堀りしようという位置づけになっている。

 河合氏によると、流通システムが目指す方向性は複数あるわけではなく、システムとして共通基盤を作り、標準のAPIで決められた作法を守ってやっていくことが大事なのだという。欧米の先行事例も、企業間の協働を促進し、マーカーとリアルタイムの在庫情報を共有する、補充の情報を同期して必要なものだけを作ってしっかり流していくCPFR(Collaborative Planning Forecasting Replenishment)という取り組みが重要であることを示している。日本の流通業界としてもそこを目指していかないといけないのだが、なぜそれができないのか、そこを調査していきたいという。

 目的は、より長期的な視野でオペレーションシステムの設計について議論すること。社会基盤としての小売流通機構のあり方、他領域との接続性に焦点を当ててシステムアーキテクチャ、システムチューニング、チームマネジメントを考察し、提言を行っていくことになる。それだけではなく、情報システムがコモディティ化していった先でどういう価値を創造していけるのかという可能性も模索していきたいと河合氏は語る。

流通が抱える課題

 2回目の研究会を終えたところだが、すでにさまざまな議論が巻き起こっているという。参加した企業のメンバーからは、サプライチェーンマネジメントにかかわる問題解決は1社では決められないものなのでこういう場から働きかけができれるとよい、薄利多売な業界なので明確な利益が示されるとよい、などさまざまな声が挙がったそうだ。

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図1:第2回研究会
(出典:SIC提供)

 要は、問題はいろいろと顕在化してきてはいるが、それぞれの問題が絡み合っていて、その糸を両端から無理やり引っ張って、解けないでいる状態だ。このあたりはソフトシステム方法論、システムダイナミクスといったシステム科学の手法を適用することで、何か面白い結果が出るのではないかという意見もある。

 しかし、河合氏は1周回って今が変革の大チャンスだと捉えている。クラウド、AI、IoTが出揃って、コモディティ化してきているし、あとはきっかけだ。とにかくやる気のある人を集めて実証していくというアプローチも有効だろうし、一方で新たな消費者のニーズ、生活者の行動変容には素早く対応する必要がある。そこはシステムモビリティ分科会とも連動していける部分がある。デマンドウェブやサプライチェーンをどういうふうに現実に合わせて実装していくのか。また、たとえばフィジカルインターネットの考え方も有効なのではないかという。

【次ページ】ミッションクリティカルなシステムを

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