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  • 2022/05/25 掲載

ユニクロ・ミズノ・キリンはどう対応? 経済を破壊する最悪な「2つの地政学リスク」

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ロシアによるウクライナ侵攻から3カ月以上が経ち、日本企業の間でも脱ロシアの動きが進んでいる。「地政学リスク」「政治リスク」は企業経営に大きな影響を与えるが、ウクライナ侵攻はそのリスクの1つにすぎない。ここ数年を振り返ると、海外で事業を手掛ける日本企業はあらゆる国際的な政治リスクに直面している。こうした情勢の中でも事業を継続するためには、リスクを適切に捉える必要がある。今回は日本企業による対応事例を踏まえながら政治リスクについて解説する。

執筆:オオコシセキュリティコンサルタンツ アドバイザー/清和大学 和田 大樹

執筆:オオコシセキュリティコンサルタンツ アドバイザー/清和大学 和田 大樹

岐阜女子大学特別研究員などを兼務、専門分野は国際安全保障論、国際テロリズム論、企業の安全保障、地政学リスクなど。共著に『2021年パワーポリティクスの時代―日本の外交・安全保障をどう動かすか』、『2020年生き残りの戦略―世界はこう動く』、『技術が変える戦争と平和』、『テロ、誘拐、脅迫 海外リスクの実態と対策』など。所属学会に国際安全保障学会、日本防衛学会など。詳しい研究プロフィルはこちら、https://researchmap.jp/daiju0415

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ロシアからの攻撃が続くウクライナ。日本企業が懸念すべき地政学リスクとは
(写真:AP/アフロ)

ウクライナ侵攻では「事業停止」が過半数

 ジェトロ(日本貿易振興機構)が4月15~19日にかけて実施した企業アンケート調査によると、ウクライナ侵攻後におけるロシア事業の現状について、「一部もしくは全面的に事業(操業)を停止」と回答した企業が過半数の55%に上った。

 続けて、「通常どおり、または検討中」が44%、「撤退済み、もしくは撤退を決定」が1%となった。「一部もしくは全面的に事業(操業)を停止」の回答率は前回の調査より12%も上昇したという。

 また、ジェトロが3月下旬に実施した同様の調査では、半年後から1年後の見通しとして、「撤退」と回答したのが6%、「縮小」38%、「分からない」29%、「現状維持」25%、「拡大」は2%となり、半数近くの企業が脱ロシアの見解を示した。

 日本企業の中にはロシアへ駐在員を戻すため、そのトリガーとして、外務省の危険レベルの引き下げ、ロシアウクライナの停戦合意、ロシアによる規制の緩和・撤廃(非友好国指定、輸出入制限の解除)などを挙げている。だが、この問題の長期化は避けられず、そのめどはまったく立っていない。

経済破壊もあり得る「2つのリスク」

 当然ながら、ロシアによるウクライナ侵攻も政治リスクの1つの事例だが、政治リスクには厳格な定義がないが、筆者なりに定義すると次の2つになる。

  • ・暴動や抗議デモ、テロや戦争など現地に滞在する駐在員や出張者(その帯同家族を含む)の仕事や生活に悪影響を及ぼす恐れのあるリスク

  • ・政治紛争下の国家による輸出入制限や関税引き上げなど、進出先での経営状況を含めて会社全体の利益に悪影響を及ぼす恐れのあるリスク

 傾向としては、前者が実際に派遣される社員が懸念するリスクで、後者が社長や役員など経営層が懸念するリスクと言える。

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政治リスクは経済活動を破壊する危険性もある
(Photo/Getty Images)

 当然ながら、グローバル経済の中で企業が注視すべきリスクは、雇用や法務、生活、医療、情報システムなど多岐にわたり、政治リスクはその中の1つでしかない。

 しかし、政治リスク(特に前者の駐在員や出張者に悪影響を及ぼす恐れのあるリスク)は、瞬時もしくは短いスパンでリスクの度合いが爆発的に高まり、経済活動の根底にある国家の安定や社会基盤そのものを不安定にさせる可能性がある。最悪の場合は経済活動を破壊し、そのほかのリスクを悪化させる危険性も内在している。

ミャンマー情勢:キリン・ENEOSの対応事例

 先述の2つの政治リスクをより詳細に解説する。前者に当たる駐在員や出張者へのリスクの例としては、2021年2月のミャンマークーデターがある。近年、ミャンマーは経済フロンティアとして世界の注目を集め、進出する日系企業の数が増えているだけでなく、日本とミャンマーを結ぶ直行便も運航している。

 しかし、昨年2月初めに発生した国軍によるクーデターという一瞬の出来事をきっかけに実態は一変。今日に至るまでミャンマー国内では国軍による市民殺害が相次ぎ、国際社会のミャンマーへの風当たりが厳しくなった。

 そして、電車やバスなど公共交通機関が麻痺し、生活必需品の品薄や価格高騰、ネットの遮断などが相次ぎ、現地で安心して生活できる環境は一瞬のうちになくなった。それによって、日系企業の間では駐在員や帯同家族の帰国が進み、中には退避対策がうまく進まず危機管理体制の脆弱性を露呈する企業も見られた。

 そういった事情もあり、ここ最近を見てもミャンマーから撤退する動きが広がっている。キリンホールディングスはクーデターを契機に、ミャンマーからの撤退計画を進めている。国軍系企業との合弁会社で事業を手掛けてきたが、クーデターをきかっけにその国軍系企業に合弁解消を繰り返し働き掛けたものの、難航してきた経緯がある。今年の6月末までに保有する全株を売却する形で撤退する予定だ。

 また、ENEOSホールディングスも5月、現地で展開する天然ガス採掘事業が、クーデターで実権を握った国軍の資金源になっているとの批判を受け、ミャンマーでの事業から撤退すると発表した。

【次ページ】人権デューデリジェンスとは? ユニクロ・ミズノ・カゴメの事例を解説

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