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- 2022/06/03 掲載
EV化で壊滅的な被害も、カーディーラー視点で「2年後に向けて取るべき」次世代戦略
EV化でカーディーラーが直面する2大課題
自動車およびカーディーラーの市場がEV化に向けて大きく動いたきっかけは、2020年10月、菅首相(当時)が2050年までにカーボンニュートラル(以下、CN)を実現すると宣言したことだった。以来、自動車の電力源をガソリンから電気へ変えていくことがCNのポイントとなり、モビリティとエネルギー供給の両面をしっかり押さえていくことによってCNを実現する大きなロードマップが意識されるようになってきた。
そして、これから訪れるEV普及の流れの中で、カーディーラー経営へのマイナスの影響は大きく2つ考えられる。1つは自動車販売台数の減少。もう1つは、アフターサービス関連の収益低下である。
1つ目の自動車販売台数の減少は、カーディーラーの売上では新車販売がもっとも大きなウェイトを占める一方で、自動車メーカー側によるサブスクリプションモデルの浸透とEC化が進むということ。
たとえば、2022年の発売が発表されているトヨタのbZ4Xは、国内ではサブスク型のKINTOで提供される。EC化の例でいえば、ホンダが自社オンラインストアのHonda ONを通じて、ユーザーと直接つながりを持って販売するようになった。
また、輸入車の動きとしても、今年より日本への再参入を果たす韓国の現代(ヒョンデ)は、オンライン完結型の販売方式を採用しており、今後、EVの広がりと合わせて「ディーラーレス」のサプライチェーンが広がる可能性がある。
このような変化により、カーディーラーが手がける自動車販売台数は急にとは言わないまでも、じわじわと減少していく可能性が高いだろう。
2つ目のアフターサービス関連の収益低下は、EV化に伴う車の部品点数の減少や、自動運転技術の向上や安全装備の拡充によって整備需要が減少し、収益低下をもたらすということ。
今後の見通しとして、日本自動車販売協会連合会は1台あたりの整備費は現行の50%に減少するという予測を掲げている(乗用車ディーラービジョン(2021年版)より)。このような影響を抑えるために、カーディーラーは中長期的な収益を見据えて、バリューチェーンを強化していく必要があるだろう。
すでに輸入車業界では、ボルボ・カー・ジャパンがオンラインでのEV販売収益を手数料としてカーディーラーに割り当てる仕組みに移行すると発表している。この手数料を得るためには、アフターサービスや中古車販売などによってバリューチェーンを強化することが求められ、そのような変化を見据えた上で本業に近いところからビジネスを作り、広げていくことが重要である。
これからは電力プランの最適化提案が求められる
もう1つの大きな変化はEV化によって、車の動力源の確保はガソリンスタンドから自宅での充電に変わっていくことだ。これはカーディーラーを含むモビリティ産業にとって大きな変化である。これに対して、カーディーラーは従来のように車両保険やアクセサリーなどにとどまらず、EVへの乗り換えに伴う電力プランの最適化などの提案が可能になる。EV化は、モビリティ産業から見れば、車をきっかけとして、電力、ガス、太陽光、蓄電池といったエネルギー商材を手掛ける機会になるわけだ。
たとえば、EV購入の商談で充電設備について質問したときに、「うちでは扱っていません」「お客さまご自身で準備してください」と答えるカーディーラーと、「当社で扱っています」「設備選びのポイントを教えます」と対応してくれるカーディーラーがあれば、価格などの要素はあったとしても、ほとんどの人は後者で買いたいと答えるだろう。
顧客とリアルの接点が持てることがカーディーラーの強みであるとすれば、車に関してだけではなく、エネルギーに関する相談にきちんと対応でき、説明できるようにすることが、営業品質を高めることにつながり、選ばれる店舗になる要因になる。
参考に、EVを自宅で充電するとなった時の電力使用量を見てみると、年間で1500から1700kwhの増量となり、平均的な4人家族の場合で、電気料金が30%から40%ほど上がる。しかし、主に充電を行う夜間帯に料金が下がる電力プランに変えることにより、ランニングコストを抑えられる可能性がある。
【次ページ】事業化までのスピード感が重要
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