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  • 2022/09/13 掲載

「未来人材ビジョン」とは何か、要約すると? 経産省「人材戦略」の中身

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デジタル化の加速度的な進展や「脱炭素社会実現」などの世界的な潮流は、これまでの産業構造を抜本的に変革し、労働需要や人材政策のあり方にも大きな変化をもたらすことが予想されている。日本の生産年齢人口は、2022年の7400万人から、2050年には5300万人まで大きく減少するという予測もある。こうした状況の中、経済産業省は2030年、2050年の産業構造の転換を見据えた、今後の人材政策について検討するため「未来人材会議」を設置。2022年5月31日に「未来人材ビジョン」を公表した。本記事では、同ビジョンの概要について解説する。
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未来人材ビジョンとは何か?
(Photo/Getty Images)

「未来人材ビジョン」とは何か?

 「未来人材ビジョン」とは、経済産業省が今後の人材政策などを検討するために設置した「未来人材会議」が2022年5月末に公表したもので、未来を支える人材を育成・確保するための大きな方向性と、今後取り組むべき具体策を示すビジョンと位置付けられている。

 同ビジョンでは、将来の労働需要の変化を推計した上で、社会システム全体を見直す大きな方向性を「旧来の日本型雇用システムからの転換」「好きなことに夢中になれる教育への転換」の2つに整理し、今後取り組むべき具体策を示している。この2つの転換を図るための具体策については後述で詳細を解説する。

「未来人材ビジョン」を検討する背景

 現在、デジタル化の加速度的な進展や脱炭素化の流れにより、知的創造作業に付加価値の重点がシフトしつつある。この急速な変化により、日本企業の競争力をこれまで支えてきたと信じられ、現場でも教え込まれてきた人的な能力・特性とは異なる要素が求められ始めているのだ。

 そこで企業は、この事実を直視し、必要とされる具体的な人材スキルや能力、時代が求める人材育成への対応が必要不可欠となってきた。未来人材会議では、これらの問題意識のもと、2030年、2050年の未来を見据え、産学官が目指すべき人材育成の大きな絵姿が議論された。これを踏まえ、採用・雇用から教育に至る幅広い政策課題に関する検討を進めるために公表されたのが、未来人材ビジョンだ。

「未来人材ビジョン」で求められる人材像

 未来人材ビジョンでは、これからの時代に必要となる能力やスキルを提示。基礎能力や高度な専門知識だけでなく、次の社会を形づくる世代に求められる根源的な意識・行動面に至る能力・姿勢として以下の4つを挙げている。

  1. (1)常識や前提にとらわれず、ゼロからイチを生み出す能力
  2. (2)夢中を手放さず一つのことを掘り下げていく姿勢
  3. (3)グローバルな社会課題を解決する意欲
  4. (4)多様性を受容し他者と協働する能力

 未来人材会議では上記の内容を踏まえる形で、2030年、2050年における日本の労働需要を推計した。ベースとなるのは、先行研究において56項目に整理された「意識・行動面を含めた仕事に必要な能力等」である。

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意識・行動面を含めた仕事に必要な能力等
(出典:経済産業省「未来人材ビジョン」2022年5月)

 労働需要推計では、考え得る未来のシナリオのいくつかにすぎないという留保とともに、デジタル化や脱炭素化を受けた能力などの需要変化を仮定し、2030年および2050年に各能力などがどの程度求められるかを試算。さらに、職種別・産業別の従事者数を推計している。

 これまでは「注意深さ・ミスがないこと」「責任感・まじめさ」などが重視されていた。56項目で構成される人の能力を整理すると、未来の2050年にはデジタル化・脱炭素化という大きな構造変化によって「問題発見力」「的確な予測」「革新性」が求められているという。

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56の能力等に対する需要
(出典:経済産業省「未来人材ビジョン」2022年5月)

 また、2050年には、現在の産業を構成する職種のバランスが大きく変わる可能性があると示唆する。たとえば、「問題発見力」や「的確な予測」などが求められるエンジニアのような職種の需要が増えるという。

 その一方で、事務・販売従事者といった職種に対する需要は減ると推測。現在、事務・販売従事者を多く雇用する産業の労働需要が大きく減ると算出している。こうした変化に対応するため、時間軸を分けて人材育成を整理することが重要と説いている。
  • 2030年目線:今の社会システムを出発点として変化を加える
  • 2050年目線:全く異なる社会システムを前提に、バックキャストして、今からできることに着手する
 その上で、未来人材ビジョンでは、上記の考え方を基に大きな方向性と当面取り組むべき具体策が整理されている。

「未来人材ビジョン」と日本型雇用システムとのギャップ

 未来人材ビジョンでは、日本型雇用システムのあり方にも言及している。

 具体的には、これまでの日本型雇用システムは、大量生産モデルの製造業を中心に競争力の源泉となり、右肩上がりの経済成長の下で、長期雇用を前提に長期的な視点に立って人材育成を行い、組織の一体感を醸成してきたという。

 また、長期雇用を前提として定着した「新卒一括採用」によって、一時的な例外期を除けば多くの学生が卒業後に就職できる傾向となり、若年失業率は低い水準に収まるなど、社会の安定につながっていた。

 しかし、日本の経済成長が鈍化し、日本企業特有の賃金・人事制度の前提とされていた「成長の継続」が見込めなくなった結果、1990年代からは日本型雇用システムの限界が指摘されはじめたという。

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年代ごとの日本型雇用システムの特徴と経済環境
(出典:経済産業省「未来人材ビジョン」2022年5月)

 その上で、同ビジョンでは現実を直視し、企業の終身雇用や年功型賃金に代表される「日本型雇用システム」などの雇用・人材育成システムにおける「聖域なき見直し」の重要性を挙げている。

【次ページ】「未来人材ビジョン」において新たな未来をけん引する人材像
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