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  • 2022/12/13 掲載

大谷翔平・八村塁らの共通点、なぜ日本企業は「超一流人材」を育てられないのか

連載:トップアスリートの仕事哲学

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企業にとって「人材」は、これからの業績を大きく左右するほど重要な資源の1つです。しかし、優秀な人材とはどういった人材か、優秀な人材を育成するには何が必要かで悩んでいる企業は少なくありません。これらの答えを導くヒントがスポーツ界には多く存在しています。特に昨今では、NBAの八村塁選手やMLBの大谷翔平選手のように、海外で活躍する超一流のアスリートが増えてきました。そこで、スポーツドクターの第一人者でエミネクロス代表の辻 秀一氏に、一流のアスリートに共通する性質や、企業が優秀な人材を育成するための秘訣などについてお聞きしました。

聞き手・構成:編集部 井内亨、執筆:阿部欽一、撮影:吉成大輔

聞き手・構成:編集部 井内亨、執筆:阿部欽一、撮影:吉成大輔

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エミネクロス代表 スポーツドクター・辻秀一(つじ・しゅういち)氏
北海道大学医学部卒業後、慶應義塾大学で内科研修を積む。慶大スポーツ医学研究センターを経て、エミネクロスを設立。応用スポーツ心理学をベースにパフォーマンスを最適・最大化するための独自理論「辻メソッド」によるメンタルトレーニングを展開する。著書は、37万部を突破した『スラムダンク勝利学』(集英社インターナショナル)や、2022年9月に出版された『「左ききのエレン」が教えてくれる「あなたらしさ」』(集英社インターナショナル)など多数。

八村塁や大谷翔平ら一流選手の共通点

 バスケットボールのNBAで活躍する八村塁選手や渡邊雄太選手、WNBAの町田瑠唯選手、野球のMLBで二刀流に挑戦している大谷翔平選手のように、海外で活躍する選手が増えてきました。彼らのように超一流と言われる選手に共通することは「主体性」だと思います。

 自分で何かをやろうとしていくこと、自分で自分の目標を立てていること。そして彼らを動かしているのは何か、なぜその目標を手に入れたいのか、という内発的な動機です。

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NBAドラフトで日本人初の1巡目指名を受けて主力として活躍する八村塁選手と、MLBで投手と野手の二刀流に挑戦して数々の記録を打ち立てている大谷翔平選手
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 以前、格闘技の那須川天心選手と対談したことがありました。僕が天心選手に「世界チャンピオン、世界一を目指しているんですか?」と質問したところ、彼は、「自分で自分の価値を上げていることを感じることが僕の目的です」と答えたんですね。

 自分としては自分の価値が上がることを感じるために努力しているのだ、と。その結果として、チャンピオンというのがあるのです。そして、6月に開催されたTHE MATCH 2022での武尊選手との世紀の一戦にも勝利できたのだと思います。僕は今まであったアスリートの中で、最も自然体で、最も強いアスリートの1人だと思いました。

一流が生まれない根源は学校教育? 企業はどう育成すべきか

 翻って、今、企業において主体性を持った人材が少ないと言われます。どうやって主体性を持った人材を育成したら良いのでしょうか。これは簡単ではありません。スポーツでは主体性を持たないと試合に負けてしまいますが、企業では主体性がなくても月末には給料が振り込まれる構造になっています。

 学校教育も、決められたことができれば是とされ、「これはなぜ?」と疑問を持つよりも、テストで良い点を取った人が東大に行き評価される構造になっています。「言われたことだけをやる」という非主体性は、学校教育の問題から始まっていると思います。

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主体性が生まれない学校教育の問題や企業が進めるべき教育などについて語る辻氏

 自分で「なぜ?」を考える機会がとても少ない。そういう教育を受けていないから、目的を問われた時に多くの大人が外的な要因、理由を見てしまうのです。内面からやりたいという動機を磨くために、内面を見つめるトレーニングをしていく必要があります。

 企業は新入社員のころから、このトレーニングを続けていくことで主体性のある人材を育てることができます。そのためには採用と評価と教育、この3つを一体化することが必要です。すなわち、どういう人材を採用し、教育して、どういう人材が評価されるかを明確にしていくことが重要です。

 一方で、主体性を持って自分の進む方向を決められる人材は、企業にとってマネジメントしづらいという側面があるかもしれません。その意味で、今後は、組織で言われたとおりにして問題のないように生きていく人材と、起業家精神を持つ人の二極化が進んでいくのではないでしょうか。

 アスリートは「自分の明日は自分で作る」という発想を持つ点で個人事業主の側面があります。一方、会社は固定化されていて、決められた役割を果たせば給料がもらえる側面があります。ただ、これはどちらが良いというものではなくて、多様性という面では、どちらの人材もいるということは、実は健全なことなのかもしれません。

「根性論」は必要か?「全力」との決定的な違い

 スポーツでもビジネスでも、気合と根性という言葉をよく聞きます。個人的には、この言葉はあまり好きではありません。というのも、どちらもエネルギーを感じるのですが、どこか我慢しているニュアンスがあるからです。

 根性とは、何かがつらいからそれを我慢することを指しています。主体的で自立している人はあまり「根性」とは言わないんですね。もちろん、目標が高ければ高いほど大変なこと、辛いことは増えます。やらなければいけないことが増えるのは苦しいことです。

 しかし、主体的にやるべきことをやっているのと、苦しいことを根性や気合で我慢しているのとは違います。主体的にやらなければならないことは、根性ではなく「一生懸命」「全力」という表現になると思います。

 『巨人の星』で星一徹が息子の飛雄馬に大リーグ養成ギプスを装着して特訓を行うのとは違います。やるべきことを自分で決められることが大事で、耐えている感じがなく、さわやかな生き方、これが大事だと思うのです。

【次ページ】ビジネスパーソンに必要な心理面での「3つのこと」

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