• 会員限定
  • 2023/01/04 掲載

効率化すると“激怒”される? ITベンダーにだまされている? 物流DXの不都合な真実

連載:「日本の物流現場から」

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
  • icon-close-snsbtns
いいね!でマイページに保存して見返すことができます。
あらゆる産業でDXが進められる中、物流業界においては「進んでいる」とは言い難い。その要因の1つは、物流DXが関係企業にとって痛みを伴うからだ。さらに物流業界は、ITやデジタルに慣れ親しんでいない人が多い。このため、単なるデジタライゼーションを物流DXと偽称し、物流企業に取り入ろうとするベンダーが見受けられる。こういった不埒なベンダーの存在は、むしろ物流企業の競争力を低下させかねない。日本のインフラを維持させるためにも、今こそ物流DXについて見直すべきだろう。今回は物流業界の実情を解説しつつ、物流DXのあり方について考える。
photo
物流DXで生じる不都合な真実とは。物流業界の実情と物流DXのあり方を解説する
(Photo/Getty Images)

配送効率を上げて“激怒”されたワケ

 血を流さない物流DXなどあり得ない──これは新進気鋭の物流ITスタートアップ、オプティマインド 松下 健社長の言葉である。

 同社は「世界のラストワンマイルを最適化する」を掲げ、ラストワンマイルに特化した配車システム「Loogia(ルージア)」を提供。Loogiaは日本郵便が大規模導入したことで話題になったが、ほかにも宅配便事業者、LPガス配送、食品配送など、ラストワンマイル配送を担う運送会社などに導入されている。

 「誤解を恐れずに言えば、Loogiaのサービスを開始した当初、物流改善ってもう少しかんたんなものだ、と考えていました」と松下氏は振り返る。

 たとえば、Loogiaを導入したことで、配送効率が大幅に上がったメーカーがあった。「それは素晴らしい!」と多くの人は思うかもしれないが、実際には配送効率の向上に伴い、さまざまな問題が生じてしまったという。

 配送効率が上がれば、より多くの貨物を運ぶことができるようになり、より早く荷物を届けることができるようになる。それまで午前10時30分に配送していた会社であれば、午前9時に貨物を届けることができるわけだが、これがダメだった。

 「いつもと違う時間に配送に来られては困るんだよ!」と、配送先からメーカーの営業担当者にクレームが入ったのだ。当然、営業担当者は配車システムを導入した物流部門に対し、クレームを入れてくる。

画像
効率化しても激怒されてしまう理不尽な現実
(Photo/Getty Images)

 「えっ、配送効率を向上させたのに、怒られてしまうの!?」と、理不尽なことのようにも思うが、これが現実である。

物流DXで誰かが“血”を流す…

 クレームを入れてくるのは営業担当者だけではない。配車システムに限ったことではないが、新たなシステムや機器を導入すれば、最初は戸惑う。特に物流現場では慣れた業務プロセスではなく、新たなシステム・機器を使用した不慣れな業務プロセスを強いられることになる。

 そのため、「よりにもよって、繁忙期にこんな面倒くさいことをさせるんじゃない!」と現場から怒られてしまったのだ。

 まだある。貨物の輸送を依頼していた運送会社から、「なぜ、ウチの仕事を減らしたんですか!?」と詰め寄られたのだ。

 たとえば配車システムでこれまでの配車計画を見直した結果、従来は1日30台のトラックで運んでいたものが、25台で配送できるようになったとする。これも配送効率向上の成果であり、コスト削減に直結する。荷主の立場からすれば喜ばしいことなのだが、仕事を減らされた運送会社からすれば、たまったものではない。

 「配送効率の向上を目指した結果、これほどの多方面からお叱りを受けるとは、私どもも、お客さまも想像していなかったのです」と、松下氏は当時を振り返る。つまり、DXを進めようとシステムを導入して効率化を図ったとしても、不便に感じたり、業績が低下したりなど、どこかで血を流している者がいるということだ。

【次ページ】言葉巧みに中小企業をだますITベンダー
関連タグ タグをフォローすると最新情報が表示されます
あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます