• 2006/04/14 掲載

経営の可視化・スピード化で実現するこれからのパフォーマンスマネジメント 第1回(2/4)

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企業経営における
業績管理サイクル

 経営戦略を策定し、それを具体的な予算計画に落とし、事業を遂行する。結果を示すデータを集計し、計画と対比して評価を行う。それに基づく意思決定を行い、場合によってはその先を含めてこれまでの予想を修正する。これが一連の業績管理の流れであり、PDCAという言葉で表されるとおり、企業経営の日常そのものである。この中で、結果を示すデータとは通例、売上高や営業利益といった財務的数字がほとんどで、決算が締まってから幾日かの集計日数を経て利用可能になる。

これらの数字もただ眺めていれば何かが分かるというものではなく、数字同士を掛けたり割ったりして指標化する、あるいは目標値や前年同期と比べて評価するという作業が必要になる。その方法だけでも書店に行けば「財務分析入門」といった指南書が並ぶとおり一定の知識と技術がいる。

 問題は、そういう努力で得た“結果”も、要するに過去の一定期間の事業活動の成果を財務的に表現した数値にとどまり、なぜそうなったのか、だからこの先どうなるのか、ということにはなかなか答えてくれないということだ。

まして、今後の投資はどうあるべきか、何をもって判断するべきかといった個別の問題は別途数字を集めた分析が必要で、そこに集められる数字は財務的数字だけでなくセグメント別の顧客の動向だったり物流工程の時間を表す指標だったりする。

つまり業績管理を生きたものにするには経営戦略を出発点に経営ストーリーを図式化して予算なり、決算がそのストーリーのどこにあるのかが分かることが条件となる。そして、非財務的な業務に密接した数字も利用可能でなければならないわけだ。業績管理体系とは単にKPIの羅列ではない。数値に判断基準を与えることとストーリーのどこにあるのかが明確になって、初めて機能するものだ。

バランス・スコアカードによる
業績管理

 こうした要請に応える形で注目を集めるのがバランス・スコアカードである。1992年にハーバード・ビジネス・スクールのロバート・キャプランらによって提唱され、わが国でも数年前から多くの企業で取り入れられるようになった。CPM(コーポレート・パフォーマンス・マネジメント:企業業績管理)といった場合、その中心コンセプトとして位置付けられる方法論でもある。

 バランス・スコアカードは企業(事業)経営を財務的視点(売上高や利益、あるいはキャッシュフローなど)だけで評価せず、顧客の視点(たとえば新規顧客獲得数)と社内ビジネスプロセスの視点(たとえば工程短縮日数)および学習と成長の視点(たとえば従業員満足度)という四つの視点を基本モデルに、各視点にバランスの取れた定量指標を配置して業績を評価していこうという仕組みである。

 バランス・スコアカードに関しては関連書籍も多くその詳細はそれらをご覧いただくとして、押さえておくべき点は、バランス・スコアカードが単なる多面的業績評価制度を指すのではなく、経営戦略を戦略テーマごとにストーリー順に並べ、進捗を測るために四つの視点を定義するところにある。まず戦略マップを作り、戦略ストーリーを明確化・図式化することで、指標間の因果関係が明らかになる。

 筆者は以前、あるIT関連の上場企業のトップから「風を読むスコアカードを作ってくれ」と依頼されたことがある。風を読むとは、先行きの変化を真っ先に嗅ぎ取るKPIは何かという問いである。そのためには、その企業の戦略は言うに及ばず、競合他社動向など、業界を取り巻く外部環境を分析しそれと内部環境(事業構造・プロセスと組織構造)との対比から戦略を構造化して……といった作業を繰り返して戦略マップを構築し、そこに最も的確なKPIを当てはめていくことが必要になる。

いかに的確であってもその数値が採取できなければ仕方がないし、採取できてもマーケットシェアといったもののように、発表されるのは半年に一度というのでは柔軟に対応することができない。風を読むというのは究極の狙いかもしれないが、経営者の目線からすれば、業績管理とはこのように、構造化された経営戦略ストーリーの上にほとんどリアルタイムに表示される、意味付けられたシグナルを操ることで実現されるものなのである。



(図1)戦略マップとスコアカード

〈※注1〉Gartner Research Note "Corporate Performance Management: BI Collides With ERP" Lee Geishecker, Nigel Rayner, 17 December 2001, GJ02153

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