• 2006/04/14 掲載

経営の可視化・スピード化で実現するこれからのパフォーマンスマネジメント 第1回(3/4)

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スコアカードから
ビジネスインテリジェンスへ

 戦略マップを作ることにより経営の筋道がストーリーをなし、明確化されたあとは、そこに連なるKPIを集めてこなければならない。ただし、バランス・スコアカードの四つの視点のうち、特に顧客の視点は、内部管理指標としてのみ存在するわけではなく、インターネット等を通じて利用可能な外部のデータとも直結している。こうしたパフォーマンスマネジメントを可能にする環境の条件として、最終的に一つのソース・一つの入り口にまとめられた情報を、与えられるのではなく自ら取りにいき、因果関係に沿ってドリルダウンまたはより先行指標への可塑性を担保される必要がある。このことにより、タイムリーな情報把握、単発な“情報片”ではなく流れに即した判断基準としての情報が得られ、情報の品質と情報間の整合性も確保されることが望まれる。

 さらに、そこには例えば予算編成に伴なう情報の収集工程も統合化され、一つの窓から業績管理にかかるすべてが完結するという形が目指す方向となる。ベリングポイントでは、これを特にIntegrated Business Intelligenceと呼んで一つの標準と考える。

業績管理とリスクマネジメント
─裏から見る企業業績

 ここまでは、バランス・スコアカードの考え方を基礎に、いわゆるCPMと一般に呼ばれる業績管理の構成要素について述べたが、業績管理といった場合にもう一つ重要な要素がある。リスクマネジメントだ。
業績という意味のPerformanceの良い悪いは、向かう目標に対する進捗の早い遅い(たとえば売上未達)で測られるが、もっと広義に経営全体のPerformanceという場合、最も格好悪いのは根本的にお客にそっぽを向かれる(例えば品質表示の虚偽発覚!)という“パフォーマンス”であろう。

 企業の業績を測るに際し、売上高や利益といった財務的な、結果の数字のみでは今の時代の経営には不足であることは先に述べた。が、正しくは、不足であるだけでなくある面で危険でさえある。たとえば、「経営再建中の某社が、過去の架空の取引が発覚して上場廃止に追い込まれた」。これなどは、売上高さえ維持できていれば一定の評価が得られると思い込んだ経営幹部が組織ぐるみで売上高という評価指標をでっち上げた例だ。財務的数字以外ならいいのか、といえばそうではない。「時間に正確に」という業務プロセスのある1点に注力しすぎた挙句、「安全の視点」そのものを忘れた事故は記憶に新しい。

 真の意味での企業業績管理とは、表面的・断片的な指標収集ではなく、広くステークホルダー〈※注2〉の視点から、企業の内部で起こっていること、起ころうとしていることに目を向け、それを醸成した要因をチェックし好ましくない環境や業務プロセスを是正する、いわゆるリスクマネジメントの側面を合わせもつ必要がある。すなわち、業績を表からだけ見るのではなく内側からも見ることが、これからのパフォーマンスマネジメントに必須となってくる。

内部統制は
業績を向上させる?

 エンロン・ワールドコム事件を契機に米国で制定された企業改革法(サーベンス・オクスレー法)において、企業の内部環境を経営者が正しく認識し、その結果として報告される財務諸表の決算発表数値の信頼性に経営者個人が宣誓することが求められた。そのわが国への波及が議論されていた矢先に某鉄道会社グループの経営の不透明性が事件となり内部統制の必要性が改めてクローズアップされている。

 一般に内部統制とか、内部監査という言葉を聞くと公認会計士による会計監査に類する処置を思い浮かべるであろう。あるいは手間のかかるもの、面倒なものとの先入観がないだろうか。今企業に求められるのは、誓って公明正大な業務プロセス・外部取引の結果として正しく業績が把握され公表されていること、という至極当たり前のことへの「保証」なのである。

これはすなわち、常日頃から業績管理の一貫として経営者であれば当然気を配るべき経営インフラというべきではないだろうか。内部統制、あるいは広くエンタープライズ・リスクマネジメントと呼ばれる枠組みがCOSOモデル〈※注3〉としてデファクトスタンダードになりつつある。
その中では、例えば先に挙げた業績評価制度のゆがみが引き起こす不祥事といった問題は、COSOモデルでは統制環境のあり方として議論されている。完璧な保証を求めるのではなく、環境の是正と内部プロセスの可視化、情報伝達の効率性といった要素の組み合わせにより、結果として作成される財務諸表の正しさを確保しようという狙いである。

 これらの詳しい議論は別の機会に譲るとして、こうしたリスクマネジメントの取り組みは決して個別単体で行われるものでなく、また手間と費用ばかりかかる“余計な仕事”であってもいけない。あくまで経営管理の一貫として業績管理プロセスにビルトインされなければならないのだ。

 先に挙げたCOSOモデルでは、リスクマネジメントの目的に財務諸表の正しさと業務の効率性が並列してあげられている。すなわち、『「財務報告の信頼性」や「関連法規の遵守」のみを目的として、業務の有効性と効率性を犠牲にするものではなく、あくまでも組織活動の目的を達成するための重要な要素であることを再認識していることにほかならない』〈※注4〉のだ。

〈※注2〉利害関係者と一般に訳される。企業にとって、顧客、株主、従業員とその家族、金融機関、仕入先、さらには地域社会も含む。
〈※注3〉1992年に米国のトレッドウェイ委員会組織委員会(Committee of Sponsoring Organizations of the Treadway Commission)が、内部統制の共通の指針として調査研究の結果取りまとめた内部統制のフレームワーク。
〈※注4〉『内部統制マネジメント』(べリングポイント共著、生産性出版)より。

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