• 2006/04/04 掲載

SOAとは、サービスという単語を組み合わせ、自在なフレーズを作り出すための文法

【IT基盤】

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企業のシステムをSOAに対応させるためには、どのような考え方で取り組んでいくべきなのか。サービスを提供する側の視点ではSOAはどう捉えられているのか。SAP ジャパンのバイスプレシデントであるザーレック アクセル ヘニング氏にSAPジャパン ESAオフィスとしての取り組みやSOAに対する考え方をうかがった。

SOAは日本の企業風土にマッチしている

 SAPジャパン(以下、SAP)では、ESA(Enterprise Services Architecture)を提唱している。SOAがビジネスシステムを構築するための基盤の概念であるのに対し、ESAとはSOAの概念に則った基盤の上に実際のサービスを統合し、ビジネス現場で実際に使えるものとして提供されるシステムの構築手法だ。理想を描く概念ではなく、現実的で、利用することによりメリットを享受できるシステムの構築に直結している。ザーレック氏は、SOAとESAの関係性を次のような例えで説明してくれた。

 「SOAとは、システムを考える上で必要な文法のようなものです。我々は、その文法に則って利用できる単語に当たる、数々のサービスを提供します。ユーザーである企業は、我々が提供するサービスを、SOAという文法に則って配置することで、自在なフレーズを作り出せるのです」

 つまり、SOAに対応するプラットフォーム上に標準化されたサービスを組み合わせたものが、ESAに則ったソリューションとして提供されるという訳だ。

 SAPはERPなどのパッケージソリューションを長年提供してきた。パッケージソリューションの開発は、ミドルウェア部分とアプリケーション部分の2つに大きく分かれるが、そのなかで培われたミドルウェア開発のノウハウを生かし、SOA対応のプラットフォームを展開している。そうした活動の中、日本という市場の重要性を強く認識してESAオフィスを日本に設置した。日本国内におけるプロモーション活動と、SAPのESAソリューションに対する日本からの声を身近に聞き取るのが使命だという。

 日本の市場には、欧米にない独自の傾向があるとザーレック氏は語る。欧米では便利なパッケージソリューションがあると、そのメリットを享受するために自分たちのビジネススタイルを変革することが少なくないという。それに対して日本の企業では、自分たちのビジネススタイルに合うソリューションのみを導入する傾向にあり、ソリューションのカスタマイズで対応することが多い。こうした背景から、標準化プラットフォームで共通部分の開発を省力化しながら独自機能を統合できるSOA対応プラットフォームは、日本の土壌に合うとザーレック氏は考えている。

 「カスタム志向の強い日本市場で受け入れられると、カスタマイズに対する柔軟性の証明にもなるでしょう。SAPのESAがそのようなソリューションに育っていくためにも、ESAを日本国内に広くアピールし、日本における実績をつくっていかなくてはなりません」。

リユースがSOA対応ソリューション最大の魅力

 ザーレック氏はSOAの最大の魅力を、サービスをリユースできることだと強調した。企業で利用されるシステムには、その企業や業界に特化した機能と、他の企業と共通な標準的機能がある。SAPではそのなかの共通部分をサービスとして開発し、提供していく構えだ。これまでSAPがパッケージソリューションとして提供してきたソフト群も、順次ESA実現のためのサービスとして提供されている。

 また、プラットフォームや標準的なサービスを提供する一方、それらの仕様を広く公開している。そうすることにより、ISV(独立系ソフトウエアベンダー)、SIerやユーザ企業が独自にサービスを開発できる環境も整えようとしているのだ。SAPが提供するプラットフォーム、標準的なサービスを利用し、その上に企業や業界特有のソリューションを独自開発し、統合することで独自のアプリケーションを構築できる。こうすることで、企業独自のアプリケーションを開発する場合でも、イチからすべてを開発する必要はなくなり、コストや工数を削減しながらなおかつ安定したシステムを構築できる。

 「SAPが提供する機能をリユースしてもらうことで、SIerやユーザ企業に独自のアプリケーションを手軽に作っていただけます。そうして開発されたアプリケーションが新たなソリューションとして広がっていくことが私たちの理想です」

 ザーレック氏はそう述べ、技術の標準化が進んだことでISAとSIerも含めたエコシステム(協業関係)を築けるのではないかと語った。また、それを現実的なものとするために、SAPのESAプラットフォームである「NetWeaver」はJava技術に対応しているという。Javaに対応することで他のシステムとの連携にかかる負荷を低減し、SAPのシステムへの統合はより容易になっている。

 SAPのシステムをうまくリユースした例として、フランスのマンシェット社のASPソリューションが挙げられる。同社はオンライン広告システムを構築する際に、SAPのESAソリューションを利用し、その上に独自開発したサービスを追加し、独自のアプリケーションとして構築した。広告管理など自社の要求部分のみを独自開発し、他の部分に標準的なサービスを流用することで開発コストを抑え、なおかつ安定的に稼動するシステムを実現した。このアプリケーションの導入により広告販売コストを50%も削減できたうえに、アプリケーション自体もASPとして他社に提供し、新たな市場も獲得している。

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