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  • 2023/03/15 掲載

まるで日本経済の「写し鏡」、モデルナ生んだボストン地区に今こそ注目すべきワケ 篠﨑教授のインフォメーション・エコノミー(第156回)

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米国ハイテク産業の2大拠点といわれていたルート128がIT革命の中でシリコンバレーと明暗を分けたのは、失われた30年を余儀なくされた日本の姿に重なる。だが今では、デジタル化の新たな展開とともにルート128が輝きを取り戻している。リアルとの融合によって「ウェットラボ」の領域に可能性が広がったからだ。リアルな物質を取り扱う領域の技術開発力は、日本が得意とするところでもある。ルート128の復活は、日本経済再生の手掛かりになりそうだ。

執筆:九州大学大学院 経済学研究院 教授 篠崎彰彦

執筆:九州大学大学院 経済学研究院 教授 篠崎彰彦

九州大学大学院 経済学研究院 教授
九州大学経済学部卒業。九州大学博士(経済学)
1984年日本開発銀行入行。ニューヨーク駐在員、国際部調査役等を経て、1999年九州大学助教授、2004年教授就任。この間、経済企画庁調査局、ハーバード大学イェンチン研究所にて情報経済や企業投資分析に従事。情報化に関する審議会などの委員も数多く務めている。
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インフォメーション・エコノミー: 情報化する経済社会の全体像
・著者:篠崎 彰彦
・定価:2,600円 (税抜)
・ページ数: 285ページ
・出版社: エヌティティ出版
・ISBN:978-4757123335
・発売日:2014年3月25日

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米国ルート128の復活は、日本経済再生の手がかりになるかもしれない
(Photo/Shutterstock.com)

復活した「地球上で最も革新的な一画」

 第153回の連載で解説したとおり、米国東海岸のルート128は、IT革命の中でシリコンバレーと明暗を分け、いったんは衰退した。だが、イノベーションの舞台がバーチャルとリアルの融合した世界へと相転移する中、今では活気を取り戻している。

 ルート128を形成する東海岸エリアには、ハーバード大学、MIT(マサチューセッツ工科大学)、ボストン大学など核となる多彩な大学のキャンパス群が存在し、コンパクトなエリア内に異なる特徴のミニ・エコシステムが集積している。

 こうした地域の特徴を背景に、地理的、歴史的背景で育まれたリアルな技術開発の領域で、課題解決に向けた実践的なイノベーションが湧き起こったのだ。コロナ禍におけるモデルナ社の躍進は、その象徴といえるだろう。

 同社の本社やMITが所在するケンブリッジ市の街路には、「地球上で最も革新的な一画(Most Innovative Square Mile on the Planet)」と記載されたモニュメントがさりげなく設置されている(図表1)。

画像
図表1:モデルナ社やMITが所在するケンブリッジ市の街路の一角には、Most Innovative Square Mile on the Planet(地球上で最も革新的な一画)と記されたモニュメントが立つ
(写真:著者撮影)

ルート128の歩みは日本経済の「写し鏡」だ

 そもそも、シリコンバレーと並ぶハイテク産業の2大拠点と称されていたルート128がIT革命下の1990年代に衰退したのは一体なぜだったのだろうか。

 両地域を比較分析したSaxenian(1994)によると、ルート128では保守的な大企業が技術を自前主義的に抱え込む一方で、政治力を頼りにワシントンへ過度の傾斜を進めたからだとされる。この点は、連載の第153回で解説したとおりだ。

 この見立てによれば、1990年代にみられたシリコンバレーとルート128の明暗は、同じ時期にみられた日米経済の明暗とうり二つだ。そうだとすれば、その後のルート128の復活は、日本経済の再生に向けた手掛かりになるかもしれない。

 ルート128の復活は、新たなデジタル化によって、リアルと融合した「ウェットラボ」の領域に可能性が広がっていることが一因だが、これは日本が得意とする技術開発の領域といえそうだ。

 実際、ノーベル賞で多くの日本人受賞者を輩出している分野は、化学賞や生理学賞などリアルな装置や器具、化学品や試薬を使用する「ウェットラボ」の領域だ。また、過去を振り返ると、1980年代の日本は、ルート128と同様に、「エレクトロニクス革命」で世界最先端の地として脚光を浴びていた。

 デジタル化の波がリアルな領域に押し寄せているならば、日本にも可能性が及んでいると考えてもおかしくはない。その意味で、過去30年間のルート128の衰退と復活の道筋は、日本経済の写し鏡として、課題と可能性を考える際に極めて興味深い。 【次ページ】日本がかつて電子機器で優位だったのはなぜ?

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