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  • 2023/07/14 掲載

牛肉大国 米国で続く「和牛」人気、50年で独自進化? すし・和食と違う「流行の秘密」

連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤

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世界一の牛肉消費量を誇る米国。そんな「牛肉大国」で、ひそかな和牛ブームが続いている。北米エリアで見ると和牛の市場規模は年率4.8%のペースで成長する見通しで、米国の一部地域では庶民の味であるハンバーガー店で使われるほど和牛が定着しているという。米国における和牛の成功には、比類なきおいしさや希少価値だけでなく、すしや和食とは異なる成功の秘訣が隠されているようだ。本稿では、米国和牛の歴史を振り返りつつ、独自の進化を遂げたブランド力を解説する。
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米国ではひそかな和牛ブームが続いている
(Photo/Shutterstock.com)

始まりは「雄牛4頭」、半世紀前に米国へ

 米国和牛における歴史の始まりは、1976年にまでさかのぼる。コロラド州立大学で生産研究を行うため、神戸牛生産会社(Kobe Beef Producers, Inc.、テキサス州)の社長であったモリス・ホイットニー氏が、兵庫県産の「富士山(Mt. Fuji)」と鳥取県産の「マツダ(Mazda)」と名付けられた雄の黒毛和牛2頭と、熊本県産の「柔道(Judo)」「龍昇(Rueshaw)」と呼ばれた雄の赤毛和牛2頭を、合法的な方法で米国に輸入した。

 これに先立つ1971年には、米ニューヨーク・タイムズ紙が「多くの米国人が神戸牛のことを耳にしたり、味わったりしたことがあるが、日本では松坂牛の方がより優れているとされている」との記事を掲載。米国において、和牛の注目度が上昇し始めていたことがわかる。

 同記事には三重県松阪市の有名すき焼き料理店「和田金」の当時の社長が、「終戦直後にある米国人がやって来て、生きた牛を輸出してくれと頼まれたが、断った」と語ったエピソードが紹介されており、それから30年後に和牛を買い付けたホイットニー氏の行動が、米国側の宿願的なものであったことが示唆されている。

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和牛が米国で親しまれるようになった理由とは
(Photo/Shutterstock.com)

 一方、ホイットニー氏が米国に持ち込んだ和牛は後に、テキサス州のジョージタウンで牧場を経営していたドン・ライブリー氏と、同州ローズバッドで牛の肥育(肉を生産するために家畜を太らせること)を行っていたフレッド・ヒルドブランド氏に譲渡された。そしてライブリー氏は、和牛の精子を大量に採取して米国各地に販売した。

 そして、これらの和牛と、主に米国で育ったアンガスやホルスタイン、ヘレフォードなどの品種の雌牛がかけ合わされて子孫が誕生、これが現在の米国和牛のルーツである。またその後の1990年代前半には、合法的に輸入された数十頭の雄牛と雌牛との間でも子孫が繁栄していった(ちなみに、オーストラリア和牛の一部は、米国和牛が主な先祖だ)。

日本産の和牛が輸出規制に……

 品種改良を重ねることで生み出された日本産の和牛は、多大な時間と労力と費用の結晶である遺伝資源であり、知的財産と言える。そのため、日本からの生きた牛や精液、受精卵の輸出は1990年代後半から規制されるようになる。

 そうした事情もあり、和牛の分類はF1(50%以上の純血種)からF4(93.75%以上の純血種)、そして純血種のいずれかが適用されるが、米国にいる純血種は少ない。

 非営利団体として1990年に設立された米国和牛協会によれば、現在、テキサス州、ニューメキシコ州、オレゴン州、アイダホ州など全米でおよそ4万頭の和牛由来の牛が飼育されており、そのうち純血種は5000頭未満だとされる。こうした物語が、和牛に希少価値を生み出すものとなっていった。 【次ページ】すしや和食と異なる「人気の秘訣」と「成功ポイント3つ」

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