• 会員限定
  • 2023/09/15 掲載

生成AIを災害対策にどう活用? IBMとNASA、Hugging Face公開の「空間AI基盤」とは

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
  • icon-close-snsbtns
記事をお気に入りリストに登録することができます。
日本でも台風が猛威を振るっているが、ハワイでは山火事、欧州や中国では洪水が起こり、世界各地で甚大な損害が発生している。2022年の自然災害による経済損失額は3,130億ドルに上るという推計もある。甚大化する災害への対策や予測の重要性が年々高まっている中、IBM、NASA、そしてHugging Faceが協力し、最近、話題の生成AIを災害対策に活用しようという試みを実施しようとしている。なぜ機械学習だけではダメだったのか。取り組みの詳細を見ていこう。

執筆:細谷 元、構成:ビジネス+IT編集部

執筆:細谷 元、構成:ビジネス+IT編集部

バークリー音大提携校で2年間ジャズ/音楽理論を学ぶ。その後、通訳・翻訳者を経て24歳で大学入学。学部では国際関係、修士では英大学院で経済・政治・哲学を専攻。国内コンサルティング会社、シンガポールの日系通信社を経てLivit参画。興味分野は、メディアテクノロジーの進化と社会変化。2014〜15年頃テックメディアの立ち上げにあたり、ドローンの可能性を模索。ドローンレース・ドバイ世界大会に選手として出場。現在、音楽制作ソフト、3Dソフト、ゲームエンジンを活用した「リアルタイム・プロダクション」の実験的取り組みでVRコンテンツを制作、英語圏の視聴者向けに配信。YouTubeではVR動画単体で再生150万回以上を達成。最近購入したSony a7s3を活用した映像制作も実施中。
http://livit.media/

photo
自然災害対策にAIは活用されてきたが生成AIの活用も広がりつつある
(Photo/Shutterstock.com)

IBMとNASAが地理空間AI基盤モデルを公開

 ハワイでの山火事、欧州や中国で多発する洪水など、今年も世界各地で大規模な災害が発生している。世界では、この数年災害による経済損失が増加傾向にあるといわれており、災害予防や対策が急務となっている。

 さまざまな対策や取り組みが実施されているが、今後はAIを活用した災害予防・予測などの取り組みが増えてくるかもしれない。

 IBMとNASAは、2023年8月3日、世界最大となる地理空間AIファンデーション(基盤)モデルをAIプラットフォームであるHugging Face上で公開した。

photo
IBMとNASAは地理空間AI基盤をHugging Face上に公開した
(出典:IBM発表資料)

 このモデルは、NASAが持つ大量の衛星画像データの価値を引き出し、気候科学だけでなく、さまざまなビジネスユースケースに役立てるために開発されたもので、今年2月に初めて開発プロジェクトの存在が明らかにされた。

 2月の発表では、IBMとNASAは、ペタバイト単位のテキストデータとリモートセンシングデータを分析するAI基盤モデルを開発し、AIアプリケーションの構築を容易にすることを目指すと述べていた。

画像
生成AIの災害対策への活用法とは?
(Photo/Shutterstock.com)

なぜ機械学習だけでは不十分だったのか

 ここでいう基盤モデルとは、文字どおりさまざまなAIアプリケーションの基盤となるモデル。ChatGPTのGPT-4やグーグルBardのPaLM2なども基盤モデルに分類される。たとえばGPT-4は、ChatGPTだけでなく、マイクロソフトの検索エンジンBingで利用されたり、APIを通じてさまざまなアプリケーションで活用されている。

 基盤モデルは、少ない量のラベル付きデータがあれば、膨大な量の生データを取り込み、データの基本的な構造を検出することができるという。これにより、NASAが持つ膨大な衛星データを活用することが可能になり、そこから災害対策・予測やビジネスユースケースなど、何らかの価値創出が起こることが期待されている。

 基盤モデルが主流となる以前は、機械学習が利用されていたが、そのアプローチでは、ラベル付けされたデータが必要となる。衛星データ内の木や作物などを人間の専門家がセグメンテーションとラベル付けを行う必要があったのだ。しかし、コストがかかり過ぎるため、衛星データのほとんどが活用できていない状況だった。

 NASAは現在、70ペタバイトの衛星データを保有しているが、今後の衛星ミッションを含めると、そのデータ量は、2030年までに600ペタバイトに達する見込みだ。

IBM・NASA・Hugging FaceによるAI基盤モデルの特徴
  • 過去の洪水や山火事のマッピング
  • 将来リスクが高い地域の予測
  • 森林伐採の追跡
  • 作物収量の予測
  • 温室効果ガスの検出とモニタリング
  • オープンソース化されており、誰でも利用可能
【次ページ】IBMとNASAが開発した2つのAI基盤モデル

関連タグ

関連コンテンツ

あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます