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  • 2023/10/30 掲載

「博多に持っていかれた」、鉄鋼の街だった北九州市が「製造DX拠点」を目指す超危機感

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人口減少・少子高齢化、東京一極集中などを解消するため、多くの地方自治体が地域経済の活性化、地域における雇用機会の創出、地域の活力を再生するための取り組みを進めている。九州地方で第2位の人口規模を誇る政令指定都市、北九州市も地域経済の活性化をデジタルの力などで進める自治体の1つだ。かつて「鉄鋼の街」として発展した同市は現在、「バックアップ首都構想」を掲げ、半導体や宇宙産業などで先進的な製造業を目指す「製造DX」による変革を目指している。同市の取り組みを現地で取材してきた。
聞き手・構成:松尾慎司、執筆:翁長 潤、写真:大参久人

聞き手・構成:松尾慎司、執筆:翁長 潤、写真:大参久人

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北九州市最大の小倉駅、JR九州内では博多駅に次ぐ利用者を誇る
(写真:大参久人)

かつての「鉄鋼の街」が目指す、産業構造の大変革

生成AIで1分動画にまとめました
 関門海峡に面した福岡県北部に位置する政令指定都市である北九州市は、2023年2月10日に市制60周年を迎えた。同市は、福岡市に次ぐ九州地方第2位の人口規模を誇り、グローバル創業・雇用創出特区として国家戦略特別区域にも指定されている。

 九州地方の玄関口として栄えた歴史を持ち、四大工業地帯であった北九州工業地帯(北九州工業地域)の中核を担っていた。特に1901年、官営八幡製鐵所が操業を開始して以降、「ものづくりの街」「鉄鋼の街」として発展し、日本の高度経済成長を支えてきた。

 しかし、戦後の日本と北九州地区の発展を支えてきた八幡の製鉄業は、日本の製鉄業の本場が次第に本州にシフトすることで陰りが見え、主軸となる製造産業が衰退する中、官民全体で危機感を共有して新産業の育成を目指してきた。

 さらに、2010年代以降はドイツや米国などの工業都市が「ものづくり×IT」を組み合わせたデジタル変革を進めていることを受け、北九州市でもDXの推進が市の発展の鍵を握ることとなった。

 現在、北九州市は地域のポテンシャルや強みを生かした独自の戦略を打ち出している。

 北九州市 デジタル政策監の三浦隆宏氏は「北九州市は『デジタルで快適・便利な幸せなまち』の実現を目指して2021年12月に「北九州市DX推進計画」を策定しました。誰もが安心して行政サービスを利用できるよう『市民サービスの向上』と『市役所業務の効率化』を目的とした取り組みを進めてきました」と説明する。

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北九州市 デジタル政策監 三浦隆宏氏
(写真:大参久人)

 少子化による急速な人口減少と高齢者人口がピークに達することで、日本が2040年に直面すると考えられている「2040年問題」への対応を最終的なターゲットと捉え、2021年度から2040年度の今後20年間を4期に分け、5年ごとに計画を見直しながら取り組む方針だ。

 現在は集中取り組み期間として、三浦氏主導のもと、市民目線の「デジタル市役所」構築にむけた基盤の整備が進められている(三浦氏へのインタビューを含めた詳細は次回、紹介する)。

「2023年2月に初当選した武内和久市長は新たな視点での行財政改革に取り組み、財政の健全化など、北九州市の市政変革に取り組んでいます。行政改革というと、コスト削減の話になりがちがですが、市の体制を筋肉質にすることで、市民サービスに加えて市役所の行政機能の効率的を実現する世界を描いています」(三浦氏)

 また、北九州市が掲げる成長に向けたキーワードの1つが「バックアップ首都構想」だ。首都直下地震などの大規模災害を想定した首都機能の誘致に乗り出す方針であり、国の中枢機能や企業の本社機能の誘致を進めている。

「バックアップ首都構想」の狙いとは?

 2023年2月に初当選した武内和久市長から要請を受けて官民連携ディレクターに就任した山本 遼太郎氏によれば、新型コロナウイルスがある程度落ち着いてきた今、企業が事業継続を考える上で、南海トラフ沖地震、首都直下型地震、富士山噴火などへの対応に関心がシフトしつつあるという。

「これらの災害の発生確率は30年以内に70%から80%で、特に南海トラフ地震では東名阪地域がすべて被災対象となってしまうと言われています」(同氏)

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北九州市 官民連携ディレクター 山本 遼太郎氏
(写真:大参久人)

 そこで出てくるのが「バックアップ首都構想」だ。首都圏一極集中から、国の中枢機能や企業の本社機能を自然災害の少ない北九州市をアピールしている。

「企業誘致の戦略では北九州市の強みを十分に生かしつつ、的を絞った戦略で取り組んでいく考えです」(山本氏)

北九州市が持つ「ハード/ソフト」両面の強み

 そもそも北九州市が持つ強みとは何か。八幡製鐵所を軸に「鉄鋼の街」として発展した理由を踏まえて、山本氏は次のように説明する。

「北九州地域は比較的災害が少なく、豊富な水資源があります。昨今では、環境未来都市に向けた自然エネルギーなども含めて有事でも補填できるようなレジリエンスを備えている点もアピールしています。また、本州と九州をつなぐ交通の要所として重要な役割を担ってきました。特にアジアに近く、本州と九州の結節点として、陸・海・空の物流インフラが充実しています」(山本氏)

 北九州市は九州・西中国の物流拠点空港である北九州空港を持ち、西日本最大級のフェリーターミナルである「北九州港」、新幹線や鉄道物流の要「北九州貨物ターミナル駅」、九州自動車道、東九州自動車道、中国自動車道などの高速道路が充実した交通の要衝である。

 現在も北九州空港の滑走路延長などの物流インフラの機能強化によって、さらなる物流拠点化を目指している。近隣で言えば、都市部に極めて近い福岡空港は便利だが、拡張できるようなスペースがない点は課題だろう。

 こうした北九州市の利点に目を付けて、誘致に応じる企業も少なくない。

 半導体基板向け処理薬品を製造するメックは2023年4月、北九州市に同社最大の生産拠点となる新工場を建設することを発表。メックは九州地域など国内の基板メーカーのみならず、コンテナ船で海外への輸出も見込んでいるとのことで、同市の物流拠点としての価値が証明されたとも言える。

 また山本氏は、充実したインフラのみならず、ソフトウェア面での知的基盤の充実も北九州市の強みであると説明する。「九州で唯一の国立系工業大学である九州工業大学やロボコンで有名な工業専門学校、工業高校を含めていわゆるエンジニアリング系の学術機関がフルセットでそろっており、毎年3000人ぐらいの理系人材を輩出しています」(山本氏)。 【次ページ】加速するIT企業の誘致、GMOや日本IBMも進出

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