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  • 2023/12/23 掲載

語学学習が「根底から変わった」、グーグルやOpenAIら出資企業が示すAI語学学習の未来

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語学学習といえば、かつては教室に通うスタイルが一般的であったが、現在ではオンラインで学ぶスタイルが定着している。AIによる翻訳ツールの登場で、語学学習の需要が減少する懸念があるが、最新のレポート調査によれば、むしろ拡大することが予想されているという。

執筆:細谷 元、構成:ビジネス+IT編集部

執筆:細谷 元、構成:ビジネス+IT編集部

バークリー音大提携校で2年間ジャズ/音楽理論を学ぶ。その後、通訳・翻訳者を経て24歳で大学入学。学部では国際関係、修士では英大学院で経済・政治・哲学を専攻。国内コンサルティング会社、シンガポールの日系通信社を経てLivit参画。興味分野は、メディアテクノロジーの進化と社会変化。2014〜15年頃テックメディアの立ち上げにあたり、ドローンの可能性を模索。ドローンレース・ドバイ世界大会に選手として出場。現在、音楽制作ソフト、3Dソフト、ゲームエンジンを活用した「リアルタイム・プロダクション」の実験的取り組みでVRコンテンツを制作、英語圏の視聴者向けに配信。YouTubeではVR動画単体で再生150万回以上を達成。最近購入したSony a7s3を活用した映像制作も実施中。
http://livit.media/

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世界のオンライン語学市場

オンライン語学学習市場、AI導入でさらに拡大

1ページ目を1分でまとめた動画
 精度の高い翻訳をこなす生成AIツールが多数登場する中、語学学習需要が減少するのではないかとの懸念が広がっている。しかし、現在のところ、リアルタイムで100%の精度で翻訳ができるツールは存在しておらず、語学学習需要が減少する見込みはない。

 むしろ、AI活用により、効率的かつパーソナライズされた語学学習が可能となっており、語学学習需要が今後さらに拡大することが予想されている。

 Kings Researchの最新レポートによると、世界のオンライン語学市場は、今後も13.74%の高い年率成長を遂げ、2030年には416億3,000万ドルに達する見込みだ。

 多くの産業で高い英語力を求める企業が増えていること、またバイリンガル(2カ国語を操れる人材)だけでなく、マルチリンガル(多言語を操れる人材)の需要が高まっていることなどが、オンライン語学学習市場の主な成長要因になるという。

 言語別の需要を見ると、オンライン語学学習市場では英語がトップとなり、その収益額は、2030年に242億2,000万ドルに達する見込みだ。英語は、オンライン語学学習市場全体の60%近い割合を占める計算となる。現在、世界では15億人以上がコミュニケーション手段として英語を使用している。

 オンライン語学学習の利用者は、個別学習者と学校などを介して学ぶグループ学習者の2つに分類されるが、オンライン特有の柔軟性から、個別学習者の利用が今後も増える公算だ。2030年における、個別学習者セグメントにおける収益は、254億5,000万ドルに達する。

 Kings Researchは、オンライン語学学習プラットフォームにおけるAI統合が進んでいることを挙げ、これが需要を刺激する要因になると指摘している。AIによる学習進捗や理解度の自動評価、音声認識、カスタマイズされた学習教材の統合が進んでおり、これが既存ユーザーだけでなく、新規ユーザーを魅了する要素になるという。

 インド工科大ムンバイ校が2021年9月に、技術的および科学的なジャーナルを英語からヒンディー語などに翻訳するAI駆動のシステムを導入するなど、教育機関におけるAI活用の増加も増えつつある。

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注目されるAI関連プレイヤーの最新動向
(Photo/Shutterstock.com)

グーグルもAIによる語学学習ビジネスの可能性を模索

 オンライン語学学習市場では、AIに強みを持つ企業の新規参入の試みが増える可能性が高まっている。

 グーグルも参入機会をうかがう企業の1つだ。

 2023年10月19日、グーグルは、同社のグーグル検索とAIを活用した英語のスピーキング練習機能を一部の国々で展開する計画を明らかにした。

 この新機能は、まずアルゼンチン、コロンビア、インド、インドネシア、メキシコ、ベネズエラのAndroidユーザー向けに展開されるもの。現時点では英語に限定されたスピーキング練習機能だが、練習対象言語や利用できる国は、今後追加される予定となっている。

 ユーザーがグーグル検索で、現地語から英語、または英語から現地語に関する検索を行うと、検索結果として単語の意味が表示されるとともに、その単語を使用した質問(プロンプト)が生成され、その質問に対して、ユーザーはスピーキングで返答するという仕組みだ。

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ヒンディー語による検索で表示される新機能
(出典:Google Researchブログより)
 たとえば、インドのユーザーがヒンディー語でplayという単語の意味を調べると、その単語の意味に加え、playを使った会話セッションが生成され、ユーザーは各質問にスピーキングで回答していくことになる。この会話セッションは、プログラムされた単調的なものではなく、ユーザーのレベルによって、ダイナミックに生成されるパーソナライズされたものになるようだ。

 各セッションのあと、パーソナライズされたフィードバックが表示される。またレベルアップのための練習セッションにサインアップする選択肢も提供されるという。

 フィードバックにおいては、質問に対して回答が意味をなしているのか、文法的に改善できる点はあるのかなどが評価される。

 セッション中に分からない単語がある場合、その単語をタップすると、会話文脈に即した翻訳を表示することもできる。この機能は、グーグル翻訳チームと共同開発されたディープラーニングモデル「Deep Aligner」が使用されている。このモデルを用いることで、1対1の定型的な翻訳ではなく、文脈に沿った動的な翻訳が可能となった。

 この新機能は現状、無料で提供される予定であり、グーグルの収益に直結するものではない。しかし、最近のオンライン語学学習市場におけるAI導入の流れに乗り、APIライセンス提供による収益化に打って出るなどの可能性はゼロではない。

 この点を踏まえ、同取り組みが今後どのように発展するのか、競合となり得るDuolingoなどにどのような影響を与えるのかに注目が集まっている。 【次ページ】ChatGPT企業が支援する語学学習AIスタートアップ

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