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- 2024/03/07 掲載
“疑惑”にさらされる「日本アカデミー賞」、読めば納得する「投票の実態」とは?
稲田豊史のコンテンツビジネス疑問氷解
1974年生まれ。映画配給会社勤務、出版社繁務を経て2013年よりフリーランス。 おもな著書は『ぼくたちの離婚』(角川新書)、『「こち亀」社会論 超一級の文化史料を読み解く』(イースト・プレス)、『オトメゴコロスタディーズ フィクションから学ぶ現代女子事情』(サイゾー)、『映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形』(光文社新書)、『ポテトチップスと日本人 人生に寄り添う国民食の誕生』(朝日新書)、『このドキュメンタリーはフィクションです』(光文社)、『アゲもん 破天荒ポテトチップ職人・岩井清吉物語』(KADOKAWA)(詳細)。

身内が身内を労う賞
来る2024年3月8日、第47回日本アカデミー賞の授賞式が行われる。既に発表されている各部門の優秀賞の中から最優秀賞が選ばれる、年に一度の映画人たちの祭典だ。ここでいう優秀賞は米国アカデミー賞で言うところの「ノミネート」、最優秀賞は「受賞作」にあたる。日本アカデミー賞のスタートは1978年。主催は日本アカデミー賞協会で、本家である米国の映画芸術科学アカデミーから正式な許諾を得て発足した。授賞式は毎年、日本テレビ系で生中継され、各メディアもそれを報道するので、特に映画ファンならずとも賞の存在を知っている方は多いだろう。今年は山崎貴監督の『ゴジラ-1.0』が、正賞全15部門中12部門の優秀賞に輝いた。
大前提として、日本アカデミー賞は批評家や一般の映画ファンが投票する賞ではない。投票権のある会員は、公式サイトによれば「映画事業に継続して 3 年以上従事し、当協会で定めた運営・実行委員、または賛助法人の推薦を受けた者」である。その内訳は、俳優とそのマネージャー、プロデューサー、監督、脚本家、音楽家、技術スタッフ、映連4社(松竹、東宝、東映、KADOKAWA)の社員、賛助法人(映画事業を行う会社で賛助法人加入)の社員、フリーの映画スタッフで協会役員が認めた者──で構成されており、2023年の会員数は3950名。当然ながら映画業界従事者全員というわけではなく、選ばれた人たちだ。
なお、「映連」とは日本映画製作者連盟のこと。国内最大の映画業界団体で興行データの取りまとめなども行っている。また、「賛助法人」は大小の映画会社とそのグループ会社、テレビ局、出版社、芸能プロダクションなどで構成されている。
つまり大雑把に言えば、日本アカデミー賞は「身内が身内を労(ねぎら)う賞」だ。
無論、本家の米国アカデミー賞も大枠は同じく「同業者が投票して決める賞」だが、細部が違う。そのひとつについては後述する。

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