• 2026/02/16 掲載

五輪の開会式でも…世界に広がる「AIヘイト」、“大AI時代”の「新・価値基準」とは

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現在開催中の「ミラノ五輪」では、開会式で用いられたAIアニメーションの演出をめぐり、SNS上で批判の声が相次いだ。こうした「AIの表現が嫌われる」現象は、前回の記事でも大きな共感を集めたテーマでもある。そして最近では、AI表現への嫌悪感だけにとどまらず、人の手で作られた作品すら「AIではないか?」と“AI疑惑フィルター”にかけられる状況が目立ち始めている。AIが当たり前になりつつある時代に、「AIコンテンツ」はどのように扱われていくのかを考えたい。
執筆:桜美林大学准教授/コンサルタント 西山 守

桜美林大学准教授/コンサルタント 西山 守

大手広告会社に19年勤務。その後、マーケティングコンサルタントとして独立。2021年4月より桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授。「東洋経済オンラインアワード2023」ニューウェーブ賞受賞。テレビ出演、メディア取材多数。著書は『話題を生み出す「しくみ」のつくり方』(宣伝会議)、『炎上に負けないクチコミ活用マーケティング』(彩流社:共著)など。

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AI疑惑で本物すら袋叩き…?イラストも動画もすぐ疑うようになった“大AI時代”の行方
(画像:本文をもとにAI(Gemini/Nano Banana)を使用して生成)

本物でも疑われる、“AI疑惑フィルター”を無視できないワケ

 生成AIが飛躍的に進化し、テキストだけでなく、画像や動画がAIで大量生成される時代になった。今年に入ってからも、X(旧Twitter)の生成AIチャットボット「Grok」で性的画像が生成、拡散して問題になり、生成AIで女性芸能人のわいせつ画像を大量に生成して公開した男性が逮捕される事態なども起きている。

 視聴者側にしても、もはやAIによって生成されたコンテンツとそうでないコンテンツを区別することができなくなってしまっている状況だ。

 さらに、今年に入ってから別の問題も目立ち始めた。最近のSNSを見ていると、生成AIで作られていない画像や動画に対して、「生成AIで作られたのではないか?」という疑惑が持たれるようになってきているのだ。

 生成AIで作られたコンテンツが反発を受ける──という事態が起きているのみならず、人の手で作られた動画や画像に対してまで「生成AIではないか?」という疑惑がかけられてしまう現象も起きているのだ。

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【関連記事】「なんか違和感…」嫌われるAI広告、「リポビタンD」新CMはギリOK…?炎上の境界線は
 この「AIっぽいものは受け入れがたい」という空気は、個人の投稿や広告表現に限った話ではない。

 直近では、ミラノ五輪の開会式でAIを用いて制作されたアニメーション演出に対し、SNS上で賛否が巻き起こった。演出全体の評価とは別に、「AIを使った表現であること」自体への違和感や拒否感が強く語られた点は象徴的だ。

 作品の完成度以前に、「AIかどうか」が評価の入口になってしまう現象が、国際的な舞台でも可視化されたと言えるだろう。

 こうしたトレンドは、今後もさらに加速していくことが予想される。企業は、生成AIを「使っている・使っていない」に関わらず、消費者に対して説明責任が求められる状況になっていくだろう。

確証ゼロでも“AI疑惑”が止まらない…AI時代のSNSリスク

 「生成AIを使っていないにも関わらず、生成AIを使っている」と疑われる「生成AI疑惑」とでも呼べるような現象は、すでにいくつも起きている。

 米国の事例になるが、米国の任天堂が公式Xアカウントに投稿した新発売のグッズを紹介する画像に対して、「生成AIが使われているのではないか?」という指摘がなされ、議論が巻き起こった。

 投稿された画像の母親役の指が不自然に曲がっている──というのが主な理由なのだが、画像をよく見ると、たしかにAIを使ったと疑われかねない不自然さがある。


 これに対し、モデルの女性、任天堂が「AIは使用していない」という、疑惑を否定する表明を行った。

 こうした問題は、決して海外や一部の炎上事例だけの話ではない。日本でも今、「本物なのに疑われる」ケースが増えている。

優秀な学生やクリエイターまで…「生成AI冤罪」は日本でも

 日本においても、あるイラストレーターが同人イベントに寄稿したイラストに対し「AIで作られたのでは」という批判が巻き起こるこという事態が起きた。イラストレーターご自身も、イベントの主催者もAIの使用を明確に否定したのだが、疑惑が晴れることなく、批判がやまなかった。

 この事案に限らず、最近、イラストに対して「生成AIを使っているのではないか?」という疑惑が持たれることが急速に増えている。

 筆者は大学教員をしているが、学生が描いたレポートや論文に関しても、生成AIの使用が疑われるものが非常に増えている。1年前であれば、読めば判断できたし、生成AIを使って判定させることで、生成AIの使用の有無は、ほぼ正しく判定することができた。

 最近では、生成AIが進化して判定がしづらくなっている。加えて、学生の方でも事実関係のチェックや文章の校正など、作業の一部で生成AIを使用することが一般的になっており、どこからどこまで生成AIが使用されているのか、判定することはほぼ不可能になっている。

 さらに、誤字脱字のない、文法的に正しい文書ほど、「生成AIを使用した」という判定がなされるという現象も起きている。優秀な学生が自分でやった課題が、「生成AIを使用した」と判定されてしまうことも起きている(筆者自身、学生からそのような懸念を吐露されたこともある)。

 「AIか人間か」という疑心暗鬼は、現代特有の病なのだろうか。実はそうではないといえる。歴史を振り返れば、人類は何度も「新技術」という異物に対して揺れ動き、そのたびに「人間の価値」を再定義してきたのだ。

 これからは、過去の事例をもとにAIが当たり前の時代に支持される新しい価値軸とは何なのかを考えていく。 【次ページ】【分析】実はAI以外も揺れてきた…“新技術への反発”の歴史から見る今
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