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- 2024/03/25 掲載
「生成AIは差別化要因」3つの調査で判明、小売業のスゴイ活用事例とは
流通・小売分野のAIポテンシャルと課題
シリコンバレーのMenlo Venturesの調査によると、流通・小売業における生成AI導入率は3%にとどまることが判明した。一方、生成AIが流通・小売業にもたらすインパクトは非常に大きなもので、今後どのタイミングで導入が加速するのかが注視されるところだ。マッキンゼーは、流通・小売業で生成AIがフル活用された場合、生産性が大きく改善し、世界売上の1~2%に相当する、年間4,000億~6,600億ドルにのぼる価値が創出されると予想した。
しかし流通・小売業では、生成AIだけでなく、既存のAIシステムについても課題が山積しており、マッキンゼーが予測するようなシナリオが実現するには、多くのハードルを超える必要がありそうだ。
製造・流通向けソフトウェア企業Epicorの依頼によりForrester Researchが実施した調査で、米国とカナダの流通・小売企業におけるAI導入の実情が明らかになった。
この調査は2023年8月、米国とカナダの流通・小売企業205社を対象にAI導入や活用状況を調べたもの。調査対象となった企業の44%は収益規模が5億~9億9,900万ドルと、比較的規模が大きい流通・小売企業におけるAI活用状況が反映された調査となる。
調査の結論から言うと、流通・小売企業の意思決定者らの多くはAIによる可能性や恩恵を理解しており、AI投資を計画しているものの、データ品質などの課題がAI活用のボトルネックになっており、AIによる恩恵を最大化できていない状況であることが明らかになった。
流通・小売企業の意思決定者らがもくろむAI投資領域で、最も関心が高いのは、顧客体験(CX)の向上で、実に41%が投資促進要因であると回答。次いで、40%が収益拡大、33%がオペレーション効率の改善、32%が従業員の生産性改善、30%が需要予測の精度改善、30%がオペレーションコストの削減と回答した。
多くの意思決定者らがAI投資による効果を見込む一方、データ関連の課題が多く横たわっており、これが幅広いAI活用を拒んでいることも判明した。自社のAI活用を拒む障壁として最も回答割合が多かったのが「収集したデータからアクションにつなげるインサイトを得ることができない」というもの。77%もの意思決定者らが、これが大きな障壁になっていると回答した。また67%が「インサイトを得ることができる利用価値のあるデータを収集できない」と回答しており、流通・小売企業の多くがデータ関連の課題に直面している状況があぶり出された。
これに関連して、70%が「社内のリテールAIソリューションに関する教育が不足している」、65%が「新しいAIテクノロジーについていけない」、58%が「新しいAIテクノロジーへの投資が複雑化している」と回答しており、意思決定者らの間ではAI教育の重要性が認識され始めていることも示唆される結果となった。
流通・小売業は何に投資しているのか
NVIDIAが2024年1月に発表した調査でも、流通・小売業におけるAI活用に関する興味深い現状が浮き彫りとなった。流通・小売業関係者400人以上を対象に実施されたこの調査によると、AI(生成AIを含む)をすでに活用しているとの回答は、流通・小売業全体で42%に上ることが判明。また、年間売上5億ドル以上の企業では、この割合は64%に達することが分かった。また、現在AI施策をテスト中であるとの回答は、流通・小売業全体で34%となった一方、売上5億ドル以上の企業のみでは20%ほどにとどまり、大手企業ほどAI施策のテスト段階から実行段階に移行している状況が示唆される結果となった。
AIをすでに活用している企業は、複数のユースケースで活用する傾向も観察された。
AIをすでに活用していると回答した企業のうち、ユースケースの数が「6つ以上」との回答が54%で最多となったのだ。「1~2つ」は16%、「3~5つ」は30%だった。80%以上の企業が3つ以上のユースケースでAIを活用していることになる。
ユースケースをより具体的に見ていくと、回答割合が最多となったのが53%の「店舗アナリティクス/インサイト」だ。これに「カスタマーレコメンデーションのパーソナライズ」が47%、「アダプティブ広告・プロモーション・プライシング」が40%、「チャットAI」が39%、「在庫管理」が39%などと続いた。
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