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  • 2024/04/10 掲載

ゼロから始める“攻め”の「広報戦略」、博報堂グループ会社に学ぶ成功法則

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PR市場は右肩上がりに成長をしており、拡大傾向にあります。なぜ多くの企業がこぞって広報活動に力を入れるのでしょうか。攻めの広報戦略によって得られる6つの効果と、博報堂のグループ会社であるスパイスボックスの成功事例をご紹介します。

執筆:松田 純子、高橋 ちさ

執筆:松田 純子、高橋 ちさ

松田 純子 リープフロッグ合同会社代表
早稲田大学卒業。求人広告のコピーライターを経て、2007 年よりワークスアプリケーションズ、博報堂グループのスパイスボックスで広報業務に従事。2019 年、伴走型、人材育成型の広報部立ち上げ支援を行うリープフロッグ合同会社を設立。「外から来る広報マネージャー」をコンセプトに数多くの企業を支援。広報関連の勉強会の主催や登壇、メディアでの寄稿や連載多数。

高橋 ちさ 株式会社SPRing 代表取締役
法人向け製品を扱うIT 企業等でのPR コンサルタントとしての豊富な経験を持つ。2017 年8 月、フリーランスとして独立。ベンチャー企業から大手上場企業、外資系企業の日本法人立ち上げ期の広報支援まで、幅広い分野での広報活動を手掛ける。特にマーケティング、営業、人事、採用との連携、メディアとの強固な関係構築を通じての企業ブランド価値の向上、目標達成・事業成長に寄与する広報活動のプロフェッショナルとして活動中。

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攻めの広報にはさまざまなメリットがある
(Photo/Shutterstock.com)
本記事は『小さな会社の広報大戦略』の内容を一部再構成したものです。

拡大傾向にあるPR市場規模

 公益社団法人日本パブリックリレーションズ協会では、「PR業実態調査」という名前で隔年でPR市場規模に関する調査データを発表しています。これはPR会社の売上データから市場規模を推計して出しているものです。

 このデータを見ると、2020年度こそ新型コロナウイルスの影響を受けて前回調査より市場規模が縮小しましたが、基本的には一貫して右肩上がりで成長しています。

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PR業界全体の市場規模(推計)

 企業における広報部の設置数については調査データがありませんが、PR会社の売上が拡大しているのであれば企業の広報部も増加傾向にあることは間違いありません。広報担当者、コンサルタントとして双方の経歴を持つ筆者の感覚でも、ここ5、6年で小さな会社も含めて、広報部を持って広報活動を始める会社が増えているという実感があります。

 一昔前まで、広報部は上場している大企業のみが持つというのが一般的でした。その数が今急速に増え始めている理由は何でしょうか。

 理由は大きく分けて2つあります。1つは、誰もが手軽に情報発信ができる環境が整ってきたことです。2つ目の理由は、情報のデジタル化により広報施策の成果がある程度、定量的に見えるようになったことです。

認知拡大と顧客・パートナー獲得の後押しに

 情報発信が手軽になったことで小さな会社も広報部を置くようになりました。こうした小さな会社では、これまで大企業の広報部が注力してきたようなブランドを「守る」活動よりも、会社のファンや協力者を増やして直接的、間接的に企業成長につなげることを目指して攻めの広報活動をすることが一般的です。

 ここでは、小さな会社が攻めの広報活動をすることによって、どのような効果を狙うことができるのかについて解説していきます。

1. 認知拡大、ブランディング

 繰り返しになりますが、広報活動とは、各ステークホルダーと中長期的に良好な関係性を構築する活動です。どんな会社にとっても自社や自社の商品、サービスを「知ってもらう」「理解してもらう」ことは最も重要な広報活動の目的です。また、認知拡大、ブランディングは、広報活動で得られる効果として、とてもイメージしやすいものだと思います。

 しかし、広報活動で得られる効果は、そうした定性的なものにとどまりません。広くステークホルダーに望ましい形で自社を「知ってもらう」「理解してもらう」ことは、ビジネスに直接的に貢献する側面もあります。

2. 顧客獲得

 自社や自社の商品を望ましい形で「知ってもらう」「理解してもらう」ことで、潜在顧客や既存顧客に情報が届き商品が売れるという効果が考えられます。BtoC商品の場合は、TVの人気番組で取り上げてもらったり、記事に載ることで直接的に商品が売れることもあります。

 ただ、誤解してほしくないのは、前にも説明した通り「広告」と「広報」は別ものです。そもそも広報は「メディア露出で商品を売るため」の活動ではないので、売上への効果というのはBtoCでもBtoBでも基本的に中長期的、間接的なものです。

 企業が広報活動によって情報発信を続けることで潜在顧客の中に会社や商品に対する信頼の土台ができ、最終的に何かのきっかけ(広告かもしれません)で企業や消費者が商品を購入する際の後押しになるということです。

3. パートナー企業の獲得、市場開拓

 パートナー企業を探すためや市場開拓を目的に広報活動をしています、という会社は少ないはずです。しかし、私が企業の広報担当者だった時代を振り返ってみても、広報活動はこうしたことにも確実に寄与します。

 これはかつて実際に筆者が見聞きした、あるメーカーの話です。ある日突然、当時給与計算システムで米国市場ナンバーワンの企業が、人事業務管理システムで国内シェアナンバーワンの国内企業に業務提携を申し込んできました。その米国企業は、各国のナンバーワンの業務管理システム会社と提携しながら海外市場に進出するというビジネス戦略を取っていたのです。

 業務提携を申し込まれた国内企業は、その当時、何年にもわたって人事業務管理システム市場でナンバーワンをキープしており、そのことを広報活動で強く訴求していました。この広報活動が実って、それまで何の面識もなかった海外企業に見つけてもらうことができ、結果、この提携はその国内企業にとっても新たなビジネスへと繋がりました。

 こうした提携の話は実は少なくありません。どんな会社もそれぞれの事業で、自社サービスの顧客層を広げたい、サービスを提供できる市場を広げたい、新しい事業を始めたい、などと考えています。その際に有効な手段の一つに、協業や提携など企業同士のコラボレーションがあります。

 たとえば、同じ業界だけれど顧客層が違うサービスを提供している企業がコラボレーションすれば、親和性の高いお互いの顧客におのおのの商品を知ってもらうチャンスを作れます。

 インターネットが普及し、あらゆる企業にとって広報活動が一般的になってきた結果、こういったコラボレーションの動きが活発になってきています。特にIT系のスタートアップなどは、必ずしも物理的にモノを用意する必要がないことも多く、フットワークが軽い印象です。

 この時に、重要なのが自社の強みや実績について、しっかりと市場に知っておいてもらうことです。どんなに実績があっても、それが知られていないと相手に見つけてもらうことができません。

 筆者が知る限り、こうしたコラボレーションはネット検索から始まることも少なくありません。他社から声がかかった際に理由を確認すると、「特定のキーワードでいろいろと検索をかけた結果」「よくメディアに取り上げられていたから」「市場調査などで名前が挙がっていたから」などとおっしゃっていました。こうした経緯は、誰もわざわざ「ネット検索で偶然見つけてコラボしました」とは言わないので、一般に知られることはありません。 【次ページ】「攻めの広報による効果」の残り3つ

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