- 会員限定
- 2024/08/30 掲載
『パルワールド』で新会社設立のソニーグループ、裏にある任天堂との「埋まらない差」
パルワールド開発元はわずか「50人」規模
まずはパルワールドを生み出した、ポケットペアについておさらいしておきたい。ポケットペアは、仮想通貨取引所 Coincheck創業者の溝部拓郎氏が2018年に設立したゲーム企業だ。現在は50人程度の規模で、スクウェア・エニックス、セガ、バンダイナムコなどの大手ゲーム企業と異なり、企画力や意思決定の速さで勝負する。
現在ゲーム市場では、Steamに代表される世界を直接相手にできるPC向けゲーム配信プラットフォームと、UnityやUnreal Engineなどの無料で高性能なゲームエンジンが普及したことで、世界中に個人から中小企業レベルのゲームパブリッシャーがひしめいている。
そんな中でポケットペアは、過去のゲームのヒット要素を組み合わせることで、売れるゲームを開発するという手法を取ってきた。2019年に同社からリリースされた『Overdungeon』はカードゲームの『Slay the Spire』とリアルタイム対戦ストラテジー『クラッシュ・ロワイヤル』からヒントを得て、ビジュアル要素は市販のアセットを組み合わせて作ったものだったが、10万本以上のセールスとなった。
2020年にリリースされた『Carftopia / クラフトピア』は、『マインクラフト』と『ゼルダの伝説』を組みあわせたクラフトゲームとして発想し、そこにほかのゲームの経営や生産管理要素を入れて、60万本を超えるヒット作となった。
そして、クラフトピアの利益をすべて注いで作ったというパルワールドは、発売6日目にしてSteam同時接続数200万人を突破して歴代2位に輝いた。ちなみに、ほかの日本企業ではKADOKAWAグループ/フロム・ソフトウェアの『ELDEN RING』が95万で7位、カプコンの『Monster Hunter:World』が33万で30位。すでにグローバルではパルワールドのほうがメジャーだとも言える。
販売本数も、発売から約1カ月でSteam 約1500万本、Xbox 約1000万人で、総プレイヤー数計2500万人を達成。膨大なサーバーへのアクセスを処理するためにマイクロソフトがサポートを行うに至った。
ポケモンに「そっくりすぎる」キャラクターたち
ポケットペアは、ヒットゲームの「良いとこどり」をパルワードでも行った。ゲームシステム面では、恐竜を捕獲して戦わせたり生産に従事させて使役するゲーム『ARK: Survival Evolved』がお手本になったと見られており、オープンワールドの自由な冒険という点で『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』や『原神』の影響があるとされている。『Fatorio』の生産の自動化要素もクラフトピアに続いて取り込まれた。しかし、最も話題となったのはゲーム内で登場する「パル」と呼ばれる生物が、ポケモンに非常に似ていると感じられるデザインだったことだ。ポケモンユーザーなら誰もが元になったと思われるポケモンを連想させる「パル」が多数登場する。
これに対して、一部のネットユーザーが異常とも言えるほど過剰に反応した。ユーザーからの問い合わせが殺到したポケモンが異例の声明を出し、ポケットペアの関係者も誹謗中傷に晒された。
しかしパルとポケモンは、実際のところ見た目の印象は似ていても、細部のデザインは異なる部分が多く著作権法で訴えることは難しいという指摘も早くから出ていた。
たとえば、「エテッパ」(パル)と「ヤナップ」(ポケモン)は、どちらも植物と猿がモチーフで、「ペンタマ」(パル)と「ポッチャマ」(ポケモン)は子供のペンギンと白と青のツートンがモチーフとなっている。ポケモンに詳しい人ほど両者は似ていると感じるだろうが、植物+猿というモチーフに、独自性の高い創意工夫があるかというと難しい。そもそもポケモンは、既存の生き物その他を複数組み合わせたモチーフが多く、独自性を主張できる部分が少ない。
実際に任天堂サイドが行ったアクションは、パルワールドのパルをポケモンに置き換えたYouTube動画をデジタルミレニアム著作権法(DMCA)に基づいて削除させただけだった。
そして今回、ソニーグループがポケットペアと組んだことで、著作権侵害の問題がクリアになった可能性が高いと言える。 【次ページ】それでも「圧倒的」なポケモンの強さとは
関連コンテンツ
関連コンテンツ
PR
PR
PR