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  • 2023/03/02 掲載

『ポケモン』は生涯いくら稼いだ?最も商業的に成功したキャラを生んだ“日本的泥臭さ”

連載:キャラクター経済圏~永続するコンテンツはどう誕生するのか(第9回)

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世界中から愛される「ポケモン」が1996年の誕生から現在までの間に稼ぎ出した金額は、大企業のそれに匹敵する。映画で18億ドル、ゲームで200億ドル超、グッズ・商品化で800億ドルなど、累計経済規模は1,000億ドル(約13兆円)に達する。単純平均すると、毎年5,000億円を25年間稼ぎ続けたことになる。企業で言えばフジ・メディア・ホールディングスや森永乳業、東武鉄道といった企業体と同レベル、またキャラクターの世界で言えば、ハローキティやスターウォーズ、さらにはミッキーマウスを上回る。つまり、人類史上最も消費のすそ野を広げたキャラクターと言えるのだ。今回は、そんなポケモンが商業的成功を収めることができた理由を、売上の内訳を見ながら徹底解説する。
執筆:エンタメ社会学者、Re entertainment代表取締役 中山 淳雄

エンタメ社会学者、Re entertainment代表取締役 中山 淳雄

東京大学大学院修了(社会学専攻)。カナダのMcGill大学MBA修了。リクルートスタッフィング、DeNA、デロイトトーマツコンサルティングを経て、バンダイナムコスタジオでカナダ、マレーシアにてゲーム開発会社・アート会社を新規設立。2016年からブシロードインターナショナル社長としてシンガポールに駐在し、日本コンテンツ(カードゲーム、アニメ、ゲーム、プロレス、音楽、イベント)の海外展開を担当する。早稲田大学ビジネススクール非常勤講師、シンガポール南洋工科大学非常勤講師も歴任。2021年7月にエンタメの経済圏創出と再現性を追求する株式会社Re entertainmentを設立し、大学での研究と経営コンサルティングを行っている。『推しエコノミー「仮想一等地」が変えるエンタメの未来』(日経BP)、『オタク経済圏創世記』(日経BP)、『ソーシャルゲームだけがなぜ儲かるのか』(PHPビジネス新書)など著書多数。

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人類史上最も商業的な成功を収めたキャラクター『ポケモン』。なぜ、ここまで成功することができたのか?
(写真:つのだよしお/アフロ)

ポケモンにまつわるギネス記録の数々

 ポケモンにまつわる数字はあまりに大きすぎ、残してきた記録の膨大さは、まるで「ギネスの海」と言えるほどだ。たとえば、スマホゲーム『Pokemon Go』は世界ギネス5冠、大元のポケモンの家庭用ゲームもまたギネス5冠を記録している。

■『Pokemon Go』のギネス記録
  • 初月で最も収益をあげたモバイルゲーム
  • 初月で最もダウンロードされたモバイルゲーム
  • 初月ダウンロードでランキング首位となった最多国数
  • 初月モバイル売上でチャート1位獲得の最多数国
  • 最も早く1億ドルに到達したモバイルゲーム)

■家庭用ポケモンゲームのギネス記録
  • 最も売れた戦略ビデオゲーム
  • TIME誌の表紙を飾った最初のビデオゲーム
  • 3DSで最初に1億本売れたビデオゲーム
  • 事前予約数が最も多かった任天堂DSのビデオゲーム
  • 最も売れたRPGビデオゲームシリーズ

 ポケモンカードゲームにおいては、YouTuberのLogan Paul氏が2022年7月に527万ドル(約7億円)でポケモンカードを落札し、これがまたまたギネス記録となっている。

 また、ゲームから生まれたキャラクターとしては、任天堂の中でこそスーパーマリオの総売上5.6億本に及ばないポケモン(4.4億本)だが、映像・商品化など、派生した商流を含めた売上で比較すると、間違いなく歴代ゲームキャラクターNo.1はポケモンである。

ポケモンを生んだ1枚の企画書

 この人類史の金字塔とも言えるキャラクターは、当時25歳、たった1人のゲームプランナーから生まれた。

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あの有名キャラたちは、なぜ成功できたのか?本連載でまとめて解説する
 1990年秋に『Capsul Monster』の企画書を任天堂に持ち込んだ田尻智氏は、当時社員2人の開発会社ゲームフリークの社長でしかいなかった。任天堂は当時売上4,700億と、すでに世界1位クラスのゲーム会社であったが、このベンチャー企業が持ち込んだアイデアに可能性を感じ、開発費を出すことになった。

 しかし、構想が膨らみ1年が経過しても開発しきれない田尻氏に対し、任天堂サイドは急かすわけでもなく、むしろファミリーコンピュータ・ゲームボーイ用のゲームソフト『ヨッシーのタマゴ』という別のゲームの企画に携わらせ、田尻氏に“成長”の機会を与え、その完成を待ち続けたのだ。

 このことは、現在にいたる伝説をさらに輝かせる美しいストーリーだ。創業時からのポケモンのデザイナーを務める杉森建氏の言葉がそれを象徴している。
“ポケモンは、ノウハウがないと大変だということがわかってから、難航しそうな予感があったので、のんびり作っていたということもありますね。忘れ去られていたと言いますか、手の空いたスタッフでたまにいじくっていたという感じで、何年かたっちゃったんです…当時は、任天堂にとってもポケモンはあまり重要なプロジェクトじゃなかったので、何カ月後までに完成させろっていうようなことが、あまりきつくなかったんですよ”
(出典:畠山けんじ・久保雅一『ポケモン・ストーリー』日経BP2000)

 1992年に一度ストップした開発が「再開」されるのは1994年半ば。そして1年半ほどかけて1996年2月にゲームボーイ用ロールプレイングゲーム『ポケットモンスター(赤・緑)』が完成したときでも、ゲームフリークは社員9人の会社にすぎなかった(注1)
注1:“特集ゲームフリーク30年の歴史” 週刊ファミ通2019年5月9日発売号

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ポケモンの売上はどのように推移していったのか?(次のページで詳しく解説します

ディズニーではあり得ない?ポケモンの日本的な特徴

 日本のキャラクター作りは「連携と調和」にある。ポケモン“原作”として著作権を保有しているのは巨大企業の任天堂だけではない。

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