- 2024/10/16 掲載
【マンガ付】アシックスDX担当者が「振り返って実感」、DX成功に「最も大切な本質」
連載:マンガとアシックスに学ぶDX成功法
世界の売上・在庫情報を「Excel」などで集計していた
アシックスは1949年に神戸市で創業し、2024年で創業75周年を迎えた歴史のある会社です。日本発祥のスポーツブランドとして、国内にとどまらず、主に北米・ヨーロッパ・豪州・中華圏など海外へとビジネスを拡大してきました。『マンガでわかるDX』ではDXを推進し始めようとしているシーンが紹介されていますが、アシックスは(DXを開始した時期ではありませんが)2005年ごろにターニングポイントを迎えました。この時期を境に、国内と海外の売上比率が逆転し始め、海外ビジネスの勢いが増してきました。一方で、「システムのグローバル化が進んでいない」ことによる業務効率の悪さなど、いくつかの課題が浮き彫りになっていたのです。
「システムのグローバル化」とは何か。例として基幹システム(ERP)を挙げて説明します。基幹システムは、一般的に企業資源計画を一元管理するシステムで、主に生産業務・購買業務・物流業務・販売業務・会計業務・人事業務などのビジネスの基幹となる業務情報を処理実行します。
当時アシックスでは「地域最適」の考えが主流で、それぞれのリージョン(地域)が別々の基幹システムを活用していました。約20以上のシステムが稼働していたため、全リージョンの売上や在庫情報を集めるには、本社のスタッフがExcelなどを用いて集計する必要がありました。
これは大変非効率なだけでなく、リアルタイムで情報を収集することが不可能でした。この状況を脱するために行ったのが「全リージョンで基幹システムを統一する」、つまりシステムのグローバル化です。
このシステムをグローバルで統一するという考え方は、システムというIT分野を飛び出し、アシックスの経営戦略にもなりました。2024年1月1日~2026年12月31日を実行期間とした「中期経営計画2026」では、「GIE(Global Integrated Enterprise)への変革」を方針として掲げ、グローバルでダイナミックな経営の実現を目指しています。
振り返って実感した「最も大切なDXの本質」
「システムのグローバル化」は、基幹システムにとどまりません。商品開発の基盤となるシステムや自社ECサイトであるasics.comなどほとんどすべてグローバルで統一し、社内運用効率化を図ったほか、お客さま目線での統一も進めました。以前はフィットネス・トラッキング・アプリ「ASICS Runkeeper」や、ECサイトでの購買や閲覧などは、別々のIDを振り分けて管理されていましたが、これをロイヤリティプログラム「OneASICS(ワンアシックス)」を使って1つの顧客IDにまとめ、CDP(Customer Data Platform)という、グローバル統一のシステムに顧客情報を集約し、活用する体制を構築しました。これによってお客さまとの直接のコミュニケーションや、個々の目的・レベルに適したパーソナライズされた価値・体験を提供できるようになるなど、当社のビジネスは大きな変革をとげました。
DX推進そのものをゴールとして捉えるのではなく、ビジネス目標を達成するために、DXが手段として非常に効果的でした。昨今、DXはトレンドキーワードですが、DXという手段の目的化は避けたほうが良いと実感しました。
次回は、グローバル基幹システム導入の事例から、DX推進のヒントをお伝えします。
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