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- 2024/10/08 掲載
AIによる「現代の奴隷制度」がヤバすぎる、時給300円、精神的ダメージでPTSDも
ニュージーランド在住ライター。東京で編集・ライター職に従事後、1998年NZに移住。オークランド博物館での短期事務職、日本語誌1誌の副編集長を経て、2000年、仲間とメディア会社、Japan Media Creations Co., Ltd.を創立する。編集長として、他誌にない、NZ文化を深掘りした季刊誌を発行するかたわら、NZ航空や政府観光局の媒体に寄稿。2003年からフリーランスとして、印刷・ウェブ媒体で、NZに加え英語圏のソーシャルビジネス、AI、環境保護関連やウェルネス関連のテクノロジー、新たな働き方などについての記事執筆を手がける。2021年、『コロナ対策 各国リーダーたちの通信簿』を共著。興味分野はトラベル、環境、移民、先住民、イスラム文化など。
ヨーロッパと東南アジア、それぞれのハブ都市であるオランダ・アムステルダムとシンガポールを拠点に、海外のビジネスやテクノロジーの最新動向を日本語で発信する編集プロダクション「Livit」を運営。近年は、生成AIやロボティクス、フィンテックなどの先端産業や、海外の柔軟な働き方やサステイナビリティなど今後の重要テーマに注力し、主にミレニアル・Z・α世代の読者をメインターゲットとするオンラインメディアの運営に貢献。その知見やスキル、海外在住ライターとのネットワークを活かして、企業の認知向上や採用促進を目的としたオウンドメディアの運営・編集機能も果たす。
Livit社ホームページ
https://livit.media/

ケニアの「現代の奴隷制」を終わらせるよう訴え
2024年5月、ワシントンで、ケニアのウィリアム・ルート大統領を迎え、米国とケニアのパートナーシップ60周年の国賓晩さん会を催す米バイデン大統領宛に、公開状が届いた。公開状はケニアの技術者100人からのもので、米国のテクノロジー分野における「現代の奴隷制」を終わらせるよう訴えるものだった。手紙を書いたのは、メタ、OpenAIなどの米企業でデータ・ラベラーやコンテンツモデレーター、AI関係の仕事に就く労働者だ。バイデン政権に、米国企業がケニアの大手テクノロジー企業の従業員との協力を約束し、今後のパートナーシップにおいて、国際労働規則を遵守するという条項を含むよう求めた。
ケニアは世界でも指折りの新興テクノロジーハブであり、「シリコンサバンナ」と称されているが、失業率が高い。そのケニアで、テクノロジーブームは特に多くの若者に仕事をもたらした。
しかし、提供されたのは、精神的なダメージを受ける、最も過酷な仕事だった。たとえば、ソーシャルメディア上でヘイトスピーチや暴力を扇動する言葉で溢れないようにしたり、OpenAIのChatGPTのような生成AIツールのトレーニングのために、画像やテキストにラベルを付けたりといった仕事である。ときに殺人や斬首、児童虐待やレイプ、ポルノや獣姦を1日8時間以上見ることを強いられていたという。
時給は290円未満で、支払われない可能性すらあり
健康はもちろん、家族や生活上、大きな犠牲を払った仕事ながら、時給はたった2米ドル(約290円)に満たない。OpenAIは2021年に、ケニアの下請け会社、Sama社に3つのプロジェクトを20万米ドル(約2,900万円)で委託。OpenAIが時給12.50USドル(約1,830円)に設定し、Sama社へ業務依頼したところ、労働者は時給2米ドル(約290円)以下で雇われていたことが、『Time』誌の調べで判明した。2023年3月にSama社はOpenAIとの契約を期間途中ながら破棄した。理由の1つには、不適切なコンテンツが労働者に与えたダメージが大きかったことが挙げられている。
企業の口コミや年収情報などを確認できる米国発の企業口コミサイト、グラスドアによれば、ナイロビにおける平均月給は8万ケニアシリング(約9万円)。週休2日、1日8時間という一般的な勤務時間を超え、労働者は働いてはいるが、月に8万ケニアシリングにはとても届かない。
加えて、賃金の支払いが滞ったり、未払いだったりするのは日常茶飯事のようだ。急な解雇も珍しくない。必要とされるメンタルヘルスケアを提供されることもなく、労働者の多くはPTSD(心的外傷後ストレス障害)を抱えているという。 【次ページ】予算が大きくても、フィリピンの末端労働者には見返りなし
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