• 2007/11/13 掲載

ボーン・グローバル:フィンランドからグローバル・ベンチャー企業をつくる人々のビジネス+IT戦略(4)

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IT先進国、フィンランド。この連載では、その国際競争力を支える「ボーン・グローバル企業」について考える。ボーン・グローバル企業とは何か、なぜフィンランドから多くのボーン・グローバル企業が生まれるのか。日本におけるボーン・グローバル企業育成についても考察する。

矢田龍生

矢田龍生

1976年東京生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。フィンランド、ヘルシンキ経済大学にて経営学修士(MBA)を取得。ヘルシンキ経済大学在学中に、アメリカ、ワシントン州立大学に交換留学。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社後、ビジネスプロデュースを行うヴォヴィスに設立メンバーとして参加。
 大学在学中からインターネットビジネスに携わり、数多くのインターネット、IT関連のビジネスに対してのコンサルティング活動に従事。戦略、オペレーション、デザイン、システムなどの幅広い知識を持ち、日本だけでなくフィンランドをはじめ欧州、そして、米国のIT業界にネットワークを持つ。
 共著書に、格差なき社会とIT産業が支える強い国際競争力を同時に実現したフィンランドの社会・産業構造を解説した、「ザ・フィンランド・システム」がある。

 前回は、ボーン・グローバルの好例として、ファースト ホップ社を取り上げた。ファースト ホップ社はいわば、成功したボーン・グローバルの例だろう。今回は、より規模が小さいレイキ (Leiki) 社を取り上げ、まさに国際的なオペレーションを急拡大していく過程にあるボーン・グローバル企業に迫っていきたい。

 なお、レイキ社を含めて、前回からご紹介しているボーン・グローバル企業は、2007年6月にフィンランドを訪問し、この連載のためにインタビューを実施した企業である。

コンテンツプロバイダの売り上げ増大を支える
レイキ社のテクノロジ

【マネジメント】ボーン・グローバル:フィンランドからグローバル・ベンチャー企業をつくる人々のビジネス+IT戦略
レイキ社が入居するヘルシンキ市内のビル
 レイキ社のテクノロジを一言でいえば、コンテンツレコメンデーションエンジンである。このコンテンツレコメンデーションツールとは、ユーザーがオンラインメディアサイトを訪れた場合に、ユーザーにとってより関心があると思われるコンテンツを自動的に表示することが可能になるソフトウェアだ。

 このソフトウェアは、オンラインメディア運営するコンテンツプロバイダにとって、どのような利点があるだろうか?

 結論から言えば、ユーザー数や、ページビューの増大を達成でき、より多くの広告収入を得ることができるということである。では、これはどのように実現されていくのだろうか。

 まずはじめに、1ユーザー当たりのページビューが伸びるということだ。たとえば、ユーザーがサイトを訪れた際に関連するコンテンツも一緒にレコメンド(=お勧め)されて表示されることになれば、そのコンテンツを一緒に閲覧しようという行動が起きやすくなる。

 また、ユーザーがサイトに何度も訪れたなら、その行動をもとにユーザーの興味が高いコンテンツを表示することもできる。このような行動を通じてユーザーのサイトへのロイヤリティ(つまり、サイト訪問頻度)を高めることができ、さらなるページビューの増大が期待できる。また、このような的確なコンテンツを表示するサイトは、利用者から他の利用者に推奨されること(口コミ)も期待できるため、新規ユーザーの獲得にも繋がるだろう。

 このようなコンセプトはだれにでも思い浮かぶかもしれない。しかし、レイキ社のコンテンツレコメンデーションエンジンのユニークな点は、今、さまざまな用途で注目されているオントロジー(ontology)という概念をコンテンツの解釈に導入していることだ。

 このオントロジーは、もともと「存在論」を示す哲学用語であったが、近年ではコンピューター用語としても使われている。オントロジーを簡単に解説すると、ある知識領域における概念の集まりと、その概念同士の関係を表すものと説明できる。

 オントロジーの詳しい解説は専門書に譲るとして、なぜオントロジーが注目されているかを一言で表すならば、オントロジーはコンテンツがもつ意味とユーザーの意図をうまく繋げることができるからである。

 たとえば、検索エンジンなどでは、ユーザーが入力した “キーワード”に関連性の高いコンテンツを表示する。そのため、ユーザーは自分の探したい“概念”をうまく“キーワード”として表す必要があり、このテクニックの差や慣れによって得られる検索精度が異なる。しかし、オントロジーが整備されれば、概念、言いかえれば、文書の意味が重視され、よりユーザーの意図に近いコンテンツが検索でき、検索精度を上げることができるといわれている。

 レイキ社は、コンテンツのプロファイル、ユーザーのプロファイル、ユーザー行動、オントロジーなどを組み合わせて、最適なコンテンツを推奨するソフトウェアの開発に成功した。「オントロジーに注目したことで、レイキのレコメンデーションエンジンは、ユニークなポジションを獲得できた」と、レイキ社のプロダクトマネジャー、パヌ・ピトカニネン氏は語る。

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