- 2025/07/20 掲載
GAFAも重視する「具体・抽象力」とは? 元デロイト「Sランク」人材がわかりやすく解説(2/2)
大手企業の経営者らは、数字や論理だけで物事を見ていない
学校教育で、「1+1=2」という、答えが決まった問題をひたすら解かせる訓練は、同じ論理的思考力の人間を生産するには効率的な手法だと思います。しかし裏を返すと、みんな同じ答えしか出すことができません。しかも、それを今はコンピューターが簡単にやってくれる時代です。ですから、人間たる価値というものを考えると、与えられた条件をもとに、たった1つの正解を導き出す論理的思考力というものの価値は、相対的に下がっていくのではないでしょうか。もちろん、論理的思考力に長けている人は素晴らしいです。けれども、そこだけに注力していると、これからの社会を生き抜いていくのは難しくなるかもしれません。たとえば、大手企業の経営者など、ビジネスシーンでトップを走っている方々は、数字を見ることはもちろんですが、論理だけで物事を見ていることは少ないです。論理的思考力だけに頼るのであれば、数字を見て誰でも成功するでしょう。それが最も合理的だからです。けれども、数字に表れないこと、顧客や現場の感性や感情など、現場の声を聞かないとわからないこともあります。数字という表面的な部分からは見抜けなかった本質が現場の声を聞くことで見えてくることもあるでしょう。そうやって、本当に頭のいい人というのは、マクロの世界と現場の世界、抽象と具体を行ったり来たりすることで、本質を見抜いてアクションを起こし、未来を切り拓いていくのです。
(本論は決して「論理的思考力」そのものを否定するものではありませんし、具体・抽象力のうちに論理的思考力も含まれます。ただ、論理的思考のみにフォーカスを置くと見逃してしまう「こと」がある、という点を申し上げております。)
ちなみに、地頭がいい人というのが稀にいます。具体・抽象力とはひと味違う、頭の良さがここにはあります。しかし残念ながら、地頭の良さは先天的なものだと思います。要は遺伝です。だから、地頭がいいというのは素晴らしいことなのですが、鍛えるのは難しいと言わざるを得ません。その点、具体・抽象力は、今からいくらでも鍛えることができます。あなたが20代でも30代でも、40代でも50代でも、凝り固まった考え方をときほぐして、脳を解放してあげればいいだけだからです。
GAFAやコンサルなどでも求められている思考プロセス
GAFA(Google、Apple、Facebook(現Meta)、Amazon)や外資系コンサル、大手金融、総合商社などの採用試験では、ケース面接というプロセスがあります。ケース面接で問われているのは、具体・抽象力があるかどうかです。どんなことが行われるのかというと、面接官から具体化、抽象化それぞれを問うような問題をパッと出されて、一定の時間が与えられた後に答えさせられる。さらに、答えを言った後に、面接官と一緒に具体抽象を使ってコミュニケーションを取りながら、より良い答えを作っていく。その2段構えで頭の使い方を見られています。
たとえば、「ラーメン屋の売上を2倍にするにはどうすればいいか?」という問題が出された場合。これは売上を2倍にするということを分解しなければいけないので、具体化思考が必要です。そして、客数、単価などの要素に分解した後に、じゃあその中のどこを伸ばすんだというところで、鋭い洞察を通して成功法則を導き出さなくてはいけません。ここでは抽象化思考が必要です。このように、目的に合わせて具体抽象を行き来しながら、ソリューションを出すという形になります。

ですから、とにかくその場で論理的思考力だけを使って答えを出せばいいということではなくて、思考プロセスの中で具体化、抽象化が使えているか、柔軟性があるかということが見られているのです。
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