- 2025/09/18 掲載
買収劇「ついに終幕」のセブン、猛追のローソン・ファミマに「勝つの激ムズ」なワケ(2/3)
「宿題山積み」と言えるワケ
経緯はともあれ、ACTの買収提案撤回によってセブンはひとまず胸をなでおろす形にはなったのでしょうが、企業としてはこれで経営課題が解決したというわけではありません。ACTからは、「我々のほうが、あなた方よりもセブンを成長させることができる」という意味で、買収提案を受けたわけです。それを1年弱の「牛歩戦術」の末に相手を失望させ撤回に持ち込んだ以上、自らの中期戦略が他者による買収を必要としない強固なものでなければ、今回の一連の流れに関して株主を納得させることはできないからです。
このような状況下で今年8月に、セブンは2030年度までの中期戦略を発表しました。今年5月に正式就任したスティーブン・ヘイズ・デイカス新社長は計画の説明に際して、「長期にわたる成功が慢心をもたらし、現状に甘んじてしまっている」と話して、ACTから買収提案を受けた現状を厳しく自戒。今回の計画を、「信頼と誠実」「変化対応」といった創業精神を取り戻すための第一歩に位置付ける、としました。
中期戦略の中身を見てみると、国内のコンビニエンスストア事業に関しては、計画期間中に約1000店舗増加させること、30年度までに3,000億円を投じて5000店以上の店舗でレイアウト変更などの設備投資をおこなうことなどで、1店舗当たりの売上高の伸び率を年平均2%とする、としています。収益の半分を稼ぐ北米コンビニ事業については、レストラン併設店を含む1300店を新規で出店。プライベートブランド商品の拡充、宅配サービスの拡大などを測り、売上高の伸び率で年2.4%を目指すとしました。
さらにホールディングスとして、コンビニ事業特化による経費半減も見込み、30年度にはEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)で1兆3,000億円、1株当たり利益で2024年度の2.4倍となる210円を目指す計画としました。
改善策がなぜ「期待できない」のか
デイカス社長は会見で、「計画は詳細な分析に裏打ちされており、達成に自信を持っている」と話し、ACTが提示した「株価2,600円を上回ることができる」と胸を張りました。しかし計画発表後の株価の動きを見ると、当初は強気の目標数字に若干の好感する動きはあったもののその後はジリ貧状態となり、日経平均が史上最高値を更新するなど株式市況が活況を呈する昨今においても、2,000円を割り込む状況が続いています。
この株価の低迷は、計画における目新しさの欠如と投資計画に対するプラス効果の不透明感を反映しているように思います。国内での1000店舗増加計画は、業界の過当競争下で大手3社の店舗戦略は飽和状態にあり、現状で1000カ所もの有力新規出店場所があるとは到底思えないというのが実情でしょう。
また北米事業に関しは、セブンイレブンの店舗は都市部に多く、米国景気の減速で低中所得層の消費が減退傾向にあることで、2025年3~5月のドルベースでの売上は6%減という下降傾向が顕著です。円安の恩恵でなんとか円ベースでの増益を保ってはいるものの、決して明るい状況とは言えないのです。 【次ページ】ローソンやファミマが「超追い上げ」で迎えるピンチ
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