- 2025/09/18 掲載
買収劇「ついに終幕」のセブン、猛追のローソン・ファミマに「勝つの激ムズ」なワケ(3/3)
ローソンやファミマが「超追い上げ」で迎えるピンチ
最も懸念すべきは、国内におけるライバルの追い上げムードです。1店舗あたりの売上ベースでは約69万円でローソン、ファミリーマート57万円にまだ差はあるものの、コロナ以前と現時点を比較した売上の伸び率では、ライバル2社が8%台を記録しているのに対してセブンは5%台であると報じられており、一昔前とは様相が変わっていることがよく分かります。ローソンは昨年親会社の三菱商事がKDDIとの共同経営に乗り出し、大手商社のマーチャンダイジングの強みと通信大手KDDIのDX化力を武器に、新戦略構想をぶち上げ着々と改革をすすめています。ファミリーマートも2020年に伊藤忠商事が完全子会社化したことで、親会社の強みであるアパレル分野でのコンビニエンスウェアの大ヒットをはじめとした独自商品の開発や、大手商社の経営資源を活用した消費者データ分析などによる基盤強化策が功を奏しているのです。さらにイオン系のミニスーパー、まいばすけっとが、消費者の支持を得て店舗拡大戦略を打ち出したことも、新たな脅威と言えるでしょう。
ライバルが着々と革新的な戦略を積み上げている中で、セブンイレブン創業者である鈴木敏文氏退任後の同社は、足踏みの10年、あるいは失われた10年であったともいえます。鈴木時代は「顧客心理」を常に先読みしたサービスの展開を心掛け、弁当商品の拡充、セブン銀行の設立、セブンカフェの導入などなど、常に業界をリードする事業展開が、その確固たる地位を作り上げてきたのです。しかし氏の退任後は、そごう西武の売却やイトーヨーカドーの改革などでのアクティビストからの改善要求に対する対応の鈍さが、さまざまな足かせとなって「顧客心理」を重視する姿勢が失われました。その間にそれはライバルにお株を奪われる形となり、ACTからの買収提案にもつながったともいえるのです。
これからが「新たな試練の始まり」と言えるワケ
今回の中期計画は、撤回したとはいえACTの買収提案に対するセブンの回答として、「顧客心理」重視という原点回帰がどのような形で盛り込まれるのか、その点が注目でもありました。しかし打ち出されたものは、「顧客心理」という目線を感じない単純拡大路線であり、市場の失望はそこにあったのではないかと思うのです。祖業ヨーカドーの売却が決まり、セブンはコンビニ事業に特化することが正式に決定して身軽になったとは言えます。しかしながら、ライバルに追い上げられるジリ貧の状況が改善されないならば、あるいは北米事業が足踏みを続けるならば、ACTがいつまた同意なき買収を仕掛けてくるかもしれません。あるいは中期計画に物足りなさを感じるアクティビストが、新たな難題をぶつけてくることも考えられます。ACTの買収提案撤回は、セブンにとっては問題解決ではなく、あらたな試練の始まりでもあると受け止めています。
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