• 2025/10/14 掲載

「メガソーラー反対」の高市総裁は「AIの電力」どう確保?激ムズ問題の“正しい答え”(2/3)

連載:小倉健一の最新ビジネストレンド

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グーグル元CEOが指摘する「中国の勝利」と「米国の敗北」

 これまでの連載でも述べている通り、世界的に見て、電力は単なる生活インフラではなく、人工知能(AI)やデジタル覇権を握る鍵となっている。

 MIT(マサチューセッツ工科大学)シニアフェローのジョン・ワーナー氏によって設立されたNPO「Imagination In Action」の公式YouTubeチャンネルで、今月19日に公開された動画では、元グーグル CEOのエリック・シュミット氏がこの点を鋭く指摘している。

 シュミット氏の分析によれば、中国の強みは「電力問題を解決したこと」に集約される。中国は電力供給を軌道に乗せ、生産量で世界を先行する。対照的に、米国は深刻な電力不足に苦しんでいる。データセンターの爆発的な需要を賄うためには、2030年までに92ギガワットの追加容量が必要だと試算される。この数字は、大型原子力発電所にして約60基から90基分に相当する途方もない量である。にもかかわらず、シュミット氏が議会での経験を振り返る通り、米国で新規の原子力プロジェクトは「事実上ゼロ」だ。

 この電力不足は、AIの最先端トレーニングがエネルギー豊富な外国、たとえばサウジアラビアやUAEに移行するリスクを生む。「私たちは、自分たちの最も重要なもの、つまり米国の知性の本質であるものを、(サウジなどの)王国で開発せざるを得ない状況に陥るかもしれません」──シュミット氏のこの言葉は、電力がもはや単なるインフラではなく、国家競争力の核心であることを明確に示唆する。

これからは「覇権のカギは電力」と言えるワケ

 シュミット氏の指摘は、中国の「純粋で生々しい資本主義」と優秀なソフトウェア人材を評価しつつ、米国のハードウェアにおける優位性(アマゾンの半導体やTPUなど)も認めている。しかし、その技術的優位性も、電力不足という根本的な制約によって台無しにされかねないと警鐘を鳴らすのである。中国はソーシャルメディアの完全な統制も強みとしており、AIの応用において消費者分野をリードする可能性が高い。これからの時代は「電力を握ったものが覇権を制する」。中国が潤沢な電力を背景にAIレースを制するシナリオは、決して絵空事ではない。

 さらに、シュミット氏の分析では、AI開発の限界が半導体チップではなく電力供給にあるという、パラダイムシフトを突きつけている。

 この世界の潮流から日本の現状を顧みると、一層深刻な危機感が募る。日本では、原発再稼働が長年にわたり停滞している。特に関西電力や九州電力が次世代革新炉の開発に着手するなど、未来への投資意欲が見られる一方で、その歩みを阻む巨大な障害が存在する。

 それは、地元の同意形成の遅れである。その典型と言えるのが、東京電力管内の電力を支える柏崎刈羽原発を抱える新潟県だ。花角英世・新潟県知事は、再稼働の是非について「適切な時期に判断する」との発言を繰り返し、明確な態度を示さない。

 今月1日に結果が公表された県の意識調査では、再稼働の条件が整っていないと考える県民が60%に上り、東京電力の運転能力を心配する声が69%を占める。

 もちろん、地元住民の不安を無視することはできない。公聴会でも賛否の意見は分かれた。しかし、リーダーの役割とは、多様な意見に耳を傾けつつも、最終的には国家と地域の長期的な利益のために決断を下すことではないだろうか。 【次ページ】日本の「電力の脆弱性」が生じている「ある背景」
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