- 2025/11/24 掲載
「米国第一」と「日本第一」を両立、高市首相の新しい日米外交ビジネスモデルとは(2/3)
トレードオフから「対等な取引」へ─日米関係のパラダイム転換
個人的な距離感を縮め、信頼しあうだけでなく、小柄な高市氏がトランプ氏と「同等に肩を並べる」日米首脳のイメージは、単なる見かけにとどまらない。今回会談の政策的な成果として、高市氏が主導する「対等な日米間の取引」への日米関係パラダイム転換に向け、両国は基本的に合意した。今回の会談の第一目標は、日米同盟の重要性を確認しあい、緊密な連携を内外に誇示することだ。首脳会談の冒頭、トランプ氏は日米同盟を「最も強固な水準の同盟」と表現し、高市氏は「世界で最も偉大な同盟」であり、「日本の国益を守り抜くためにも、強い日本外交を取り戻す決意」を述べる。日米はともに、中国への懸念を背景に、日本の防衛力強化と、インド太平洋地域における米国の存在感と影響力を再構築するための日本の「媒介」的役割拡大の2点で合意した。
しかし高市氏はそこで終わらない。同盟を「さらなる高みに引き上げる」と宣言する。さらなる高みとは、何を意味するのか。それは、トランプ氏の「米国ファースト」と高市氏の「日本ファースト」の折り合いをつけること、それも単なる外交的妥協ではなく、構造的な利益調整の再設計によって共同利益を図ることだ。
言い換えると、「安全保障の供与⇔経済的見返り」という交換のトレードオフではなく、日米の「ファースト」を協調的に最大化するためのビジネス構造に転換することである。
トランプ政権の米国ファーストは、「費用対効果が明確な商取引」の性格をもつ。今回のアジア歴訪も、日韓中を含むアジア主要国・地域と、通商関係の緊張を緩め、対米投資を確保し、経済的成果を得る、経済利益追求優先の「取引外交」が主目的なのは明らかだ。大統領選公約の貿易赤字是正、雇用創出や製造業回帰などの”対価獲得”は、来年の中間選挙対策でもある。
日米外交はこれまで、「安全保障の対価としての経済的リターン要求」というトレードオフ、「同盟の政治的信頼」と「経済ナショナリズム」が綱引きする構図でとらえられてきた。しかし今回、米国側は防衛支出や基地負担だけでなく、半導体・AI・エネルギーなどの産業協力も対価に組み込み、経済と防衛を一体化する“ビジネス同盟”モデルの方向性を鮮明にした。「経済安全保障」や「サプライチェーン再編」は、いわば相互依存の“武器化”である。
この新しい戦略でトランプ氏の上を行くのが、高市氏の「日本ファースト」である。「米国が守る/日本が負担する」、「対米追随か自主路線か」という二項対立を超え、「国益」の基盤である「外交力・防衛力・経済力・技術力・情報力・人材力」のすべてを組み合わせ、日米が「対等な取引」相手として「条件交渉」し、「リスク管理と相互利益を担保する政策」に落とし込み、ビジネスパートナーとして「競い合いながらも協働」する。
たとえば、米国が日本に安全保障技術(衛星、防衛AIなど)を供与し、日本は代わりに経済面(サプライチェーン、投資市場、エネルギー)でリターンを与える、あるいは米国が安全保障を提供する代わりに、日本が経済・技術で補完するという相互利益構造、対等な取引によるウィンウィン関係である。 【次ページ】経済安全保障の意義とリスク
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