- 2025/12/05 掲載
EAチームの役割はどう変わる?ガートナーが明かす従来型との「決定的な違い」とは(2/3)
EAチームの役割はどう変わる?
EAチームの具体的な仕事について、鈴木氏が「今どきのやり方」として最初に提示したのが、誰のニーズに対応するかを明確化するためのステークホルダーの特定だ。そして、そのことを皮切りに、ステークホルダーのニーズを把握し、現状を読み解き、To Be像を描き、リスクや投資すべき対象などを明らかにしたガイドラインを作成するというのが、業務の一連の流れになるという。「同様の動きは新サービスの立ち上げ時などでも見られます。ただ、EAチームとしての活動は、経営層やステークホルダーに向けた組織的かつ永続的な取り組みである点で大きく異なります」(鈴木氏)
その中でアーキテクトは、各テクノロジー領域や事業領域などの専門家として現状を読み解き、将来像を描き、ステークホルダーに理解を促し、社内参謀として有効な選択肢を提示する役割を担う。そこでのEAチームの提供価値は、以下の通り広範にわたると鈴木氏は話す。
- 判断のための助言とステークホルダー対応などの「戦略・戦術策定支援」
- 何を、どう変え、どんな影響が及ぶかの検討などの「変更・改革の実行支援」
- 全体像の明示と優先順位付けやテクノロジー、製品、ベンダー管理などの「ポートフォリオ管理」
- 重複部分の廃止などの「標準化とポリシー管理、リスク管理」
新たなEAでの活動は「誰に」「何を」「何のために」が明確であり、かつ、ビジネス視点のテーマを扱う点が従来のEAと抜本的に異なるという。「それ以外にも、短期的でアジャイルな活動であること、理解を得るのが最初のステップであることなど、さまざまな違いがあります」と鈴木氏は解説する。
EA推進の人材は「もう社内にいる」と言えるワケ
新たなEAの実施に向けまず取り組むべきなのが新たなチームの編成だ。各領域を熟知し、複雑な状況を分かりやすくまとめて説明できる人材を集める。重視すべき能力は経営層を納得させるだけの「インパクトのある説明力」「ロードマップ作製力」「ビジネスケイパビリティ・モデリング力」などだ。「ビジネスケイパビリティをかみ砕いて説明すれば、特定のビジネス領域でどんな業務があるかを棚卸し、そのつながりを整理することです。新たな仕組みの立ち上げなどで、その能力は不可欠です」(鈴木氏)
ガートナーの調査によると、ビジネス要素やデータ/アプリケーション/テクノロジー・アーキテクチャーの各領域の全体像や構成要素を経営層に説明できる人材は日本企業にも少なからず存在する。そうした人材がアーキテクト候補となる。
その上で、アーキテクトの能力開発を推し進める。養成すべき能力となるのが、大量の情報を短期間で理解するための「情報処理力」、手本や成功事例がない中で活動を進めるための「企画力」などだ。
「たとえば情報処理力は、3倍のスピードで正確な情報を集め、理解・判断すべきかを問うといったことで底上げが見込めます。同様に企画力は、自ら考えないと進まないテーマを与え、目的、関連する要素/ステップ、原因と帰結を説明するスケッチを作成させレビューサイクルを回させ育成します。能力開発は個人のモチベーションに成果が大きく左右され、過度な抑制や強制は逆効果になることには注意すべきです」(鈴木氏)
EAの見直しに合わせて鈴木氏が推奨するのが、従来からのガバナンスの見直しだ。これまでのガバナンスは審査と統制が中心であり、一般にアプリ開発などの最終段階での検討による「ちゃぶ台返し」もしばしばで、俊敏性と適合性のバランスに欠けていた。
見直し後のガバナンスとして鈴木氏が提言するのが、民主的な助言とサポートを柱とするものである。
「一律に禁じるのではなく、ルールに外れた際の例外対応を認め、その結果を追跡調査して今後の判断に生かすべきです。ひいては、認めない理由の合理的な説明も可能になります。一方で、開発の初期段階からの参画により、ちゃぶ台返しが一掃されます。画一的かつ一時的な対応から、協調的かつ継続的な活動への脱却が今のガバナンスのトレンドです」(鈴木氏) 【次ページ】初心者がまずするべき「把握」とは
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