- 2025/12/21 掲載
30分筋トレより「1回だけ腕立て伏せ」…心理学が示す“笑えるほど小さな一歩”の威力(3/3)
「いつまでに終わらせるか」ではなく「いつ始めるか」を決める
賢者病の大きな原因の1つは、過剰なインプットです。情報を集めることで「やっている感」は得られますが、頭の中は整理されず、行動にはつながりません。
知識に溺れ、判断が遅れ、「まだ足りない」と自分を説得し続けてしまう。
そんな状態に陥ったとき、僕が取り入れているのが「締切を先に決めてしまう」という方法です。
中でも特に効果的なのが、「いつまでに終わらせるか」ではなく、「いつ始めるか」を明確に決めてしまう「開始デッドライン」という考え方です。
この「開始デッドライン」は、韓国の心理学者イ・ミンギュの『「後回し」にしない技術』(文響社)でも紹介されている考え方で、「やるかどうか」ではなく「いつやるか」を決めることが行動のスイッチになると説かれています。
たとえば、「○日までに資料を仕上げる」とだけ考えていると、ついギリギリまで手をつけません。
でも、「○日の10時から取りかかる」と始める時間を明確に決めておくだけで、心理的な迷いが減り、自然と手が動き始めます。
人は「いつでもできる」と思った瞬間に行動を遅らせてしまうからこそ、「動き出すタイミング」に明確な区切りをつけることが、先延ばしを防ぐのです。
たとえば、SNSでフォロワーを増やしたいと思ったとき、「今日の14時から投稿を1本作る」とあらかじめ開始時刻を決めておくと、少なくともその時間までには手を動かす必要が生まれます。
すると、やってみて初めて「反応が弱かったな」「この構成はわかりにくかったかも」とリアルな気づきが得られ、そこから改善や学びにつながっていく。
「まず動いてみる」という強制力を自分に与えるのが、開始デッドラインの役割です。
集中力が高まる「程よいプレッシャー」のかけ方
たとえば、「新しい本を読み終えるまでSNS発信は始められない」ではなく、「この本は1週間で読み終えて来週から必ず3本投稿する」と決める。
「次のプロジェクトが終わるまで新しい教材は買わない」とインプットを物理的に制限する。
こうすることで、「もっと知識を」という不安にブレーキをかけ、目の前の行動に集中できます。
また、『「後回し」にしない技術』では「締切を少し短めに設定する」ことも推奨されています。
人は、余裕がありすぎると集中できず、逆に「程よいプレッシャー」があることで、優先順位が明確になり、集中力も高まります。
この程よいプレッシャーをどのようにかけるのか。
同書では、このような例で紹介されています。
「もし1時間以内に1冊の本を読まないといけないとしたら、どうしたらいいだろう。正解はひとつしかない。『1時間以内に読むこと』だ。私の場合も、暇なときより忙しいときの方が本をたくさん読める。だから買った本が読めないままになっているとき、私はよくこんな戦略をとる。さらに、「自分だけのルール」にしておくのではなく、周囲に宣言したり、スケジュール帳に明記したりするなど、可視化する工夫も同書では紹介されています。
『講義の準備時間が1時間しかないが、講義で必ずこの本の内容を紹介しなくてはならない』
こう考えれば、どんな本でも1時間以内に読むことができる。もちろん全ページを読めるわけではないが、とにかく私は1時間以内にその本を読む。」
制限は「意志」ではなく「仕組み」として扱う。
その前提があるからこそ、インプットの量をコントロールし、行動の比重を高めることができるのです。
自分で行動のスタートラインを引いたとき、人は初めて「考えている人」から「動いている人」へと変わります。
締切は、苦しみではなく武器です。
迷いを断ち切り、知識を現実で活いかすために、「始める日」を決めることが、賢者病から抜け出す最初の一歩になるのです。
ワークスタイル・在宅勤務のおすすめコンテンツ
PR
PR
PR