- 2025/08/09 掲載
「やらなきゃいけないこと」9割捨てて成果を出す、時間の使い方3ステップ
ドイツ歴40年。父親の転勤に伴い8歳から13歳(小3から中2)までの6年間をドイツの現地校GrundschuleとGymnasiumに通い生活。ドイツ語の習得はもちろん、ドイツの文化・生活にどっぷりとつかって少年期を過ごした経験を持つ。慶応義塾大学法学部法律学科を卒業後、日本銀行での社会人経験を通じ、また社会の一員として社会的役割の大きい会社での複数の職務の経験を通じ、日本人の若者は目指したい道(各種の職人、スペシャリスト)があってもその目的に向かって歩む道が非常に少ない、または将来に希望が持てないという相談を数多く受けたことをきっかけに、ドイツのマイスター制度にそのソリューションを見出し、高野哲雄と共同でダヴィンチインターナショナルを設立。後にドイツに法人A&TGlobal GmbHを設立し、現在に至る。ドイツに関する情報を日々発信しており、インスタグラム12万人、YouTube2万人など、SNS総フォロワーは30万人にのぼる。
前編はこちら(この記事は後編です)
日本人はドイツ人よりもストレス耐性が強い。とはいえ…
ドイツ人が大事にしている「大事なことのみ、集中する」という考え方は、どこからきているのでしょうか。ドイツでは、マルティン・ルターが提唱したプロテスタントの思想から発展し、慣習化されたものがいくつかあります。そして、そのうちの1つが、効率的な時間の使い方といえます。プロテスタントでは、贅沢を控え、必要なことに集中することを強く打ち出しています。
また、ドイツ人が「大事なことのみ、集中する」のは、自分の余裕をなくさないようにする目的もあります。
怒りや悲しみ、焦りといったマイナスの感情は、どうしても判断力を鈍らせます。常に集中して結果を出すためには、マイナスの感情をなくしていく必要があります。
人はタスクが増えるほど余裕がなくなってしまい、どうしてもマイナスの感情を抱いてしまいます。
また、複数の案件を同時に進めるマルチタスクよりも、1つのことに集中するほうが、気持ちに余裕が生まれます。
そのため、「大事なこと」を必要最小限に抑えて、理性を保ったまま仕事ができる環境をつくろうとする意識が大事なのです。
複数の案件を抱えて、マルチタスクで仕事を終わらせていく日本人は、ドイツ人よりもストレス耐性が強いと感じます。
しかし、いくらストレスに強くても、無理をし続けると、いずれバーンアウトを起こしてしまう可能性があります。そこまでいかなくても、「やらなきゃいけないこと」が多すぎて、常にイライラしたり、ちょっとしたことで焦ったりするようになってしまいます。
マイナスの感情を介入させないで仕事を続けるためにも、「やらなきゃいけないこと」をより少なくして、ゆとりを持たせることが重要になってくるのです。
「やらなきゃいけないこと」をどんどん減らすドイツ人
「大事なことのみ」のポイントは、「やらなきゃいけない」と思っていることの9割を捨てることです。もちろん、1つひとつにかける時間を短くするという意味ではありません。やるべき作業自体を9割なくすということです。
ドイツ人を見ていると、そもそも「やらない」ということが圧倒的に多いです。中途半端に手を付けたり、さらっと終わらせてしまうのではなく、本当に重要なこと以外は最初からやらないようにしています。
たとえば、曖昧な質問には答えない、自分の役割以外の仕事は手伝わない、1つのことをしているときには他のことをしないなど、日本人であればすべてやらなければと思ってしまうようなことも、最初からやらないことで、「やらなきゃいけないこと」をどんどん減らしています。
中途半端に手を付けることで、そこから派生して「やらなきゃいけないこと」が増えることもあります。
子育ての例ですが、ドイツでは子どもが泣いていても、あまり相手にしません。静かなところで1人にさせておいて、本人が落ち着くのを待ちます。
一度相手をすると、「泣けば構ってもらえる」と思ってその後も泣くようになったり、自分が満足する対応をしてもらえるまで泣き続けたりするようになります。
だからこそ、泣きやませようとすることは最初からやらない。
泣きやまないなら、予定していた用事を切り上げて帰ることもあります。レストランで、子どもがわがままを言って泣きわめいたら、レストランでご飯を食べることを断念して家に帰ります。やがて子どもは、みんなと一緒にご飯を食べるときにわがままを言うと、家に帰ることになると思い、泣いたりしないようになります。
ドライに見えるかもしれませんが、一度対応することで「やらなきゃいけないこと」が増える無限ループに陥るよりも、最初からやらないほうがずっと効率的だと考えているのです。
日本人の働き方は、「本質」を見失っている
今まで「全部やる」を大切にしてきた日本人の中には、9割も捨ててしまって、本当に成果が出るのか? と疑う人もいるかもしれません。疑いの気持ちがある人は、次の場面を考えてみてください。
あなたは日本の企業に勤めています。社内会議のために、事前の資料を完璧につくることが求められました。誤字脱字があると上司に注意されますし、上司が見やすいようにフォントにもこだわる必要があります。
いざ会議が始まると、年次が下の人たちは、上司の目を気にして、なかなか意見が言えません。上司たちは何を目的にしているのかよくわからない話し合いを重ねています。結論がまとまらないまま、終了予定時間が過ぎてしまいました。
会議が終わると、読みやすいように体裁を整えなおして、誤字がないことを確認した議事録を提出します。関係がありそうな人を全員CCに入れてメールを送信するので、メールフォルダはすぐにいっぱいになります。
このような状況は、日本の会社でよく見られる光景だと思います。では、この中で本当に成果につながるのはどの作業でしょうか。
会議で目的を持って意見を出し合い、結果につなげていくことですよね。
それ以外の仕事は、基本的に社内に向けた作業。まったく必要ないわけではありませんが、すべてを完璧にする必要があるでしょうか。
ドイツ人は、今述べたような一連の作業はしません。また、上司の話を黙って聞くだけで、意見を言えないような会議にも出席しません。目的を持って意見を出し合い、結果につなげていくことを仕事とし、それ以外はしないと言っても過言ではありません。
これは、社内だけではなく、会社間の会議でもいえることです。議事録を丁寧にまとめて先方に送付するといった業務は行わず、その場でお互いのToDoを確認して、会議を終了します。
より具体的に言うと、忖度や上司の目を気にするという行為を、ドイツ人はしないのです。むしろ、会議に参加しているのに発言をしていないと、「あなたの意見は?」「意見がないなら会議に出る意味はあるの?」と問われます。
フォルダにたまっているメールも、本当に自分が見るべき内容はどれくらいあるでしょうか。ドイツでは、「とりあえず」でCCに入れてメールを送ることは、まずしません。仮に自分にとって責任のないものについて送られてきても、基本的には目を通しません。
日本人の働き方は、タスクをこなすことに夢中になりすぎて、本質を見失っているように感じます。
本当に力を入れなければいけないのはどこなのか? ということを考えられるようになれば、今よりも高い成果を上げながら、自分の「やりたいこと」に使う時間も多く取れるようになります。
では、ドイツ式の時間の使い方を3ステップで見ていきましょう。 【次ページ】ドイツ式・時間の使い方「見極める」「捨てる」「集中する」を解説
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