- 2026/03/17 掲載
SB C&S草川社長に聞く、ITディストリビューターが“価値創出”するための共創とAI戦略(2/2)
まずは自分たちでの使用を徹底、SB C&S流「AI活用術」
SB C&Sでは、AIを単なる効率化ツールとは位置づけていません。AIは、コア事業(流通)の拡大、SaaS/サービスの拡大と並ぶ、私たちの3大成長戦略の柱の1つです。だからこそ、AI活用についても部分最適ではなく、経営戦略として一貫した形で取り組んできました。私が強く意識しているのは、「まず自分たちで使ってみる」という点です。どれだけ先進的な技術であっても、現場で使われなければ意味がありません。そこで私たちは、まず自分たち自身がAIを徹底的に使いこなすことから始めました。
象徴的な取り組みが、自社で開発した対話型AIツール「SB C&S AI CHAT、愛称:CASAI(カサイ)」を基盤に、社員1人ひとりが自分の業務をAIエージェント化する取り組みです。その推進施策として実施したのが、社員が作ったAIエージェントのコンテストです。これまでの計2回の実施で約500件の応募が集まり、全社的な広がりを見せました。
このコンテストで受賞したエージェントの1つが、セキュリティ分野の販売推進を担うメンバーが開発したAIエージェントです。
販売パートナーさまから寄せられるセキュリティに関する問い合わせに対し、当社では、セキュリティ製品の目利きから提案までを行う「セキュリティソムリエ」という専門チームが最適なセキュリティをご提案しています。それをAI化したものがこのエージェントです。
問い合わせ内容をそのまま入力するだけで、課題整理から製品選定、回答案の作成までを支援する仕組みで、対応スピードと品質を大きく向上させました。属人的だったノウハウをAIに落とし込み、チーム全体の力に変えた好例だと考えています。
こうした取り組みの積み重ねにより、理論上では月間で数万時間規模の工数削減も可能となります。しかし、私が最も重視しているのは数字以上に、「AIを前提に仕事を再設計する文化」が社内に根付き始めたことです。このAX(AIトランスフォーメーション)の実践は、将来的に販売パートナーさまや業界全体へと広げていきたいと考えています。
なぜ売上拡大?SB C&Sの収益構造の秘密
先ほどお伝えした、「AIへのフォーカス」と、「SaaS/サービスの拡大」「コア事業(流通)の拡大」の3つの成長戦略に取り組んだおかげで、SB C&Sは長期にわたり増益を続けてきました。ただ、私自身は利益だけを強調したいとは思っていません。持続的に成長してこられた背景には、事業構造そのものを見直し、安定して価値を提供し続けられる仕組みも整備することを重視してきました。特に大きかったのが、リカーリング(継続収入)型ビジネスへの対応です。SaaSやクラウドサービスは、立ち上がりこそ小さく見えますが、継続的に価値を提供することで安定した成長につながります。一方で、販売パートナーさまにとっては、初期の収益インパクトが小さく、理解を得るまでに時間がかかる分野でもありました。
契約管理や運用を支える仕組みを整え、粘り強く普及を続けてきた結果、ようやくリカーリング型ビジネスが当たり前の選択肢として認識されるなり、安定した収益性に繋がる構造を築くことができました。
現在、当社グループの売上総利益に占めるリカーリングビジネスの比率は38%まで高まっています。SaaS、通信、保守、FinTechなどを含め、継続的に価値を提供するビジネスが収益の土台になりつつあります。
一方で、私たちはコアである流通事業そのものの強化にも注力しています。特に、物流の効率化と高度化については、流通は量を扱うビジネスである以上、オペレーションの質が競争力に直結します。
その取り組みの1つが、物流センターへの倉庫自動化ソリューションの導入です。物流センター運営を担うSBフレームワークスの川崎事業所では、ソフトバンクロボティクスが提供する国内最大級の高密度自動倉庫システム「AutoStore」をはじめとした物流自動化ソリューションを導入します。ピッキングや保管効率の大幅な向上が期待されています。
これは単なるコスト削減の取り組みではありません。人手不足が深刻化する中でも安定した供給体制を維持し、販売パートナーさまに対して確実に価値を届け続けるための投資です。流通の現場を強くすることが、結果としてお客さまの信頼につながると考えています。
2026年以降も、コアとなる流通事業を磨き続けながら、SaaSやサービスの拡大、そしてAIへのフォーカスをさらに強めていきます。また、成長戦略の1つとして新規事業への挑戦にも取り組んでいます。その中でもFinTech事業は、当社にとって大きな可能性を持つ分野です。
キャッシュレス化が急速に進む中で、決済は単なる手段ではなく、顧客接点やデータ活用の起点になりつつあります。私たちは、決済端末「PayCAS」を起点に、加盟店さまの業務効率化や新たなサービス創出につながる価値を提供してきました。
FinTech事業の特徴は、ワンショットで終わるビジネスではなく、継続的に価値を提供できる点にあります。決済を軸に、周辺サービスへと広げていくことで、安定した収益基盤と顧客基盤の双方を育てていく。これは、これまで培ってきた流通やSaaSビジネスの考え方とも親和性が高い新規事業の形だと考えています。
SB C&Sが掲げる“スローガン”の意味
SB C&Sが掲げるスローガンとして「Innovation TOGETHER」という言葉があります。この言葉には、トップダウンで変革を進めるのではなく、社員1人ひとり、そして販売パートナーさまと共に知恵を持ち寄り、未来をつくっていきたいという思いを込めています。変化の激しい時代において、1人の判断や1部門の努力だけで成長し続けることはできません。そのため、社内文化の醸成については特に重視しています。「主体性」「挑戦」「共創」という行動指針を掲げ、全社での取り組みを続けています。社員が自ら考え、手を挙げ、部門や世代を超えてつながる。そのための場づくりや仕掛けを意識的に増やしてきました。
AIの取り組みやその他の事業が前に進んでいる背景には、こうした文化の変化があります。技術や仕組みだけでは変革は起きません。それを使いこなし、価値に変えていくのは人です。だからこそ、私は人と組織の在り方に投資し続けたいと考えています。
IT流通を「価値創出ビジネス」へと進化させる挑戦は、まだ道半ばです。しかし、販売パートナーさま、社員、そして関わるすべての人と共に歩むことで、価値を創出し続ける存在でありたい。その思いは、これから先も変わることはありません。
IT戦略・IT投資・DXのおすすめコンテンツ
IT戦略・IT投資・DXの関連コンテンツ
PR
PR
PR