- 2026/02/19 掲載
TSMCら「世界の巨人」はなぜ日本へ? AIで「超低圧経済」を抜け出す“逆転の条件”(2/2)
停滞ニッポンに追い風──世界が“再評価”する理由とは
日本経済の停滞はとりわけ深刻だった。この大転換期にバブル崩壊後の「3つの過剰問題」に直面したからだ。多くの日本企業は、過剰となった雇用、設備、負債の処理に忙殺され、前向きの企業行動が失速してしまった。大手金融機関の破綻やリーマンショックに見舞われた際は「キャッシュ・イズ・キング」の考えがまん延し、企業は投資を控えて現預金を抱え込み、固定費とみなした人件費の削減にまい進した。こうして、資源配分の見直しが進まないまま「超」低圧経済に陥ったのだ。
だが、この構図は現在大きく変化している。第1に、平和の配当が消滅し、価値観を巡る対立が深まったこと、第2に、これに技術環境の変化が重なり、サプライチェーンの可視化と再編が促されていること、第3に、デジタル化の波がリアルの領域にも及んでいることだ。
平和の配当の消滅は誰の目にも明らかだ。国際情勢が激変するなか、日本は人権に配慮した民主的な法治国家として、透明性、説明責任、予見可能性の面で一定の信頼感があり、グローバルなサプライチェーンの信頼できる拠点として、地政学的な見地から再評価されている。
さらに、デジタル化の波がバーチャル空間からリアルな領域に広がるなかで、製造技術に優れた日本の産業には、世界の動きを取り込む潜在力もある。フィジカルAIは、その有望領域となり得るだろう。
なぜ、TSMCやGAFAなど「世界の巨人」が続々と日本へ?
実際、外国企業による日本への直接投資が積極化する動きは随所にみられる(図表2)。台湾を代表する世界的な半導体企業TSMCの熊本工場新・増設はその代表例だ。半導体は国防用と民生用のデュアル・ユースでサプライチェーン再編の主役となる戦略物資だ。また、AIの社会実装が進むなかでグーグル、アマゾン、オラクル、マイクロソフトなどグローバル企業のデータセンター投資も相次いでいる。背景には、フィジカルAIの開発で糧となる産業データが取得しやすい製造業の集積、経済安全保障の観点からデータ管理の拠点を選定したい利用企業の意向など、日本の立地特性が影響しているようだ。
ただし、AIの社会実装で経済成長を実現するには、「技術への投資」に加えて「改革への投資」が欠かせないことも忘れてはならない。これは、冒頭で示した第5と第6の項目に該当するもので、いずれも生産性論争の過程で得られた重要な知見だ。
AI投資しても成果が出ない理由、欠けていたのは……
デジタル化は組織改革や人材開発、規制や制度の見直しといった無形資産への投資とうまくかみ合うことで、初めてプラスの成果(Digital Dividends)が得られる。AI時代はそれに加えて半導体や電源開発など有形資産への巨額の投資も不可欠だ。デジタル化の潮流に乗れず、「超」低圧経済に陥った日本を再び成長軌道に乗せるには、ICT-producing Biz(ICTを提供するビジネス)とICT-enabled Biz(ICTを利用するビジネス)の2つの領域でフロンティアを切り拓くための果敢な有形資産への投資とそれを促すための改革(無形資産)への投資が求められる。
| 1) | National Academies(2025)Artificial Intelligence and the Future of Work, Washington, DC, The National Academies Press. |
| 2) | 篠﨑彰彦(2025)「デジタル化と2040年の経済社会:技術環境と国際関係の変化をてがかりに」SBI金融経済研究所『所報』vol. 7, pp.9-23. |
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