• 2026/02/19 掲載

TSMCら「世界の巨人」はなぜ日本へ? AIで「超低圧経済」を抜け出す“逆転の条件”

篠﨑教授のインフォメーション・エコノミー(第191回)

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新技術の登場で社会が大きく変貌する時代は、期待と不安が入り交じりやすい。これはイノベーションの宿命といえる。果たしてAIの社会実装は、長期停滞が続いた日本経済を再び成長軌道に乗せることができるのか。今回は、米国の学術機関全米アカデミーズの分析や、世界最大規模の経済学会であるASSA総会の議論で浮かび上がった6項目を手がかりに、そのカギとなる要因について考えてみよう。
執筆:九州大学大学院 経済学研究院 教授 篠崎彰彦

九州大学大学院 経済学研究院 教授 篠崎彰彦

九州大学大学院 経済学研究院 教授
九州大学経済学部卒業。九州大学博士(経済学)
1984年日本開発銀行入行。ニューヨーク駐在員、国際部調査役等を経て、1999年九州大学助教授、2004年教授就任。この間、経済企画庁調査局、ハーバード大学イェンチン研究所にて情報経済や企業投資分析に従事。情報化に関する審議会などの委員も数多く務めている。
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インフォメーション・エコノミー: 情報化する経済社会の全体像
・著者:篠崎 彰彦
・定価:2,600円 (税抜)
・ページ数: 285ページ
・出版社: エヌティティ出版
・ISBN:978-4757123335
・発売日:2014年3月25日

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日本がAIで「本当に成長」するために必要な視点とは
(Photo/Shutterstock.com)

日本はAIで経済成長できるか?生産性論争が示す6つの真実

 新技術の登場で経済社会が大きく変貌する時代は、将来への期待と不安が錯綜(さくそう)しやすい。PCとインターネットがブームとなった1990年代には、「IT革命」と「ITバブル」の間で、株式市場も論調も大きく揺れ動いた。今後はAIで同様の動きがあるだろう。

 AIの社会実装による経済成長を考える際は、かつての「生産性論争」で得られた知見が有益だ。前々回解説した全米アカデミーズの分析や連載の第180回で紹介したASSA総会の議論からは、当時と共通する6項目が浮かび上がる(図表1)。

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【画像付き記事全文はこちら】生産性論争が照らし出す「AIの経済効果」(図表1)
(出所:筆者作成)

 過去約30年間「超」低圧経済に陥った日本にとっては、第4の「AIへの集中的な投資」と「補完的な有形資産・無形資産への投資」がとりわけ重要だ。経済成長のエンジンとなる企業部門では、投資こそが意思決定の「かなめ」だからだ。

デジタル化で到来、高圧経済の新興国 vs. 低圧経済の先進国

 連載の第107回で解説したように、「デジタル化」は1990年代に「平和の配当」と共振しながら本格化した。一見すると無関係にみえる「デジタル化」と「平和の配当」は、実は2つの場面で資源配分のシフトを促す共通要因となった。

 第1は、米国経済の軍民転換だ。米国の国防費は、冷戦終結からの10年間でGDP比2.2%ポイント削減された。これに表裏一体となって、民間企業の設備投資はGDP比2.0%ポイント上昇した。

 投資のGDP比が上昇した2.0%ポイントのうち、1.5%ポイントはデジタル投資の寄与だ。つまり、政府を通じた国防関連から民間ハイテク部門へヒト、モノ、カネの資源配分が大きくシフトしたわけだ。

 第2は、効率的な資源配分の舞台がグローバル化したことだ。冷戦終結当時、世界人口の22.6%にすぎなかった市場経済圏(日・米・西欧・東南アジア)が、世界人口の45.4%を占める旧社会主義圏(旧ソ連・東欧・中国・インド)に一気に広がった。

 当時、これらの国々は所得水準(1人当たりGDP)が市場経済圏の6分の1程度だった。この安くて豊富な労働力を巧みに活かせば、巨大なビジネスチャンスが広がる。先進国に閉じ込められていた投資需要は、一気に解き放たれて新興国・途上国に押し寄せた。

 こうして、新興国・途上国は投資需要に満ちた「高圧経済」の時代を、先進国は投資需要が弱い「低圧経済」の時代をそれぞれ迎えたわけだ。2000年代半ばから先進国で続いたSecular Stagnation(長期停滞)の底流には、こうした力学が働いていた。 【次ページ】停滞ニッポンに追い風──世界が“再評価”する3つの理由
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