- 2026/04/07 掲載
「順調です」と報告しながら内部は崩壊…プロジェクト失敗の“お決まりパターン”解説
IT業界においてプロジェクトマネジメント業務を中心に従事。キャリアの前半は民間企業にて、受託側の立場から公共分野の基幹システム再構築プロジェクトなどに携わる。2013年から内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室で政府CIO補佐官として、発注側の立場でのプロジェクトマネジメント等の実務を担当。2021年からはデジタル庁発足に伴い、同庁のガバナンスマネージャーとして実務を担当。
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不都合な面を隠して、都合の良いところだけを強調する
1.ポンチ絵合意(理想像だけの粗い計画でスタートする)失敗プロジェクトは、計画時点ですでに失敗が見えているものばかりです。現状分析を十分に行えていないにもかかわらず、理想的な絵姿だけを描いた計画内容となっているからです。
それらのプロジェクトでよくあるのが、計画が「ポンチ絵」と呼ばれる図だけでまとめられてしまっていることです。ポンチ絵とは概念や方向性をわかりやすく、簡単にまとめた図です。
ポンチ絵はわかりやすく抽象化されているため承認を得やすく、問題が隠された状態で予算がついてしまいます。
図2のポンチ絵を見て、どのように感じたでしょうか。
絵の構造やキーワードだけを眺めると、なんとなく説得力があるように感じませんか。
それぞれの物流会社が独自に配送しているのは効率が悪いため、街全体で配送計画を一元管理して、AIを使って効率化する計画です。現状では「分散化」や「ばらつき」といった問題があるのに対して、将来には「集中化」、「最適化」、「均一化」といった改善を行う計画となっています。
しかし、よく考えると、計画内容は理想論を並べただけであることが分かります。現実には多数の問題が発生するはずです。
物流各社は、それぞれが利益を最大化しようとする民間企業です。街全体で配送計画が効率化されることよりも、自社の売上を増やすことのほうが重要です。このような企業間の利益調整をどのように行うかという視点が、このポンチ絵では考慮されていません。
また、AIを入れれば物流が最適化できると書いていますが、AIにどのようなインプットを入れて、どのようなアウトプットを期待するかが詰められていません。物流を最適化するには、顧客側の需要を商品単位で詳細に予測する必要がありますし、納入期限の厳密性や時間外受入の可否等についても個別の調整が必要です。道路の渋滞状況等のリアルタイム把握も必要です。そのような精度の高い情報を入手するには相当のコストが発生しますが、このポンチ絵では考慮されていません。
もし、このような大事なポイントについても検討していたのであれば、具体的な解決策もポンチ絵に描くべきです。逆に、このようなポイントに言及すらされていないという時点で、ポンチ絵が机上の空論に過ぎない可能性が高まります。
このポンチ絵の例でご理解いただけたことでしょう。
「ポンチ絵」には、不都合な面を表面化させずに、都合の良いところだけを強調する性質があります。
もちろん、ポンチ絵自体が悪いわけではありません。複雑なプロジェクトの概要を理解するためには、とても有用な資料です。ただし、ポンチ絵を使うときには、裏付けとなる調査がポンチ絵以外の資料として十分に準備されていることが大前提です。ポンチ絵だけが存在してこれから詳細調査をするのでは、順序が逆転しています。
しかし、多くの人が忙しく働いている組織の中では、ポンチ絵レベルの検討しか行われていない粒度の粗い計画のみで、プロジェクトが承認されることが多くなります。このようなプロジェクトは、開始時点で濃い暗雲が立ち込めています。 【次ページ】「デスマーチ」と揶揄される失敗プロジェクトの典型
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