- 2026/04/18 掲載
なぜ「悪い情報」が届かないのか…責任者が“裸の王様”にされる致命的な構造(3/3)
システム担当者 → システム責任者(プロマネ)この報告会議でも、じゃがいもの精度についての問題自体は共有されています。ただ、その深刻度についてはかなり低く認識され、プロマネとしても継続的に担当者に任せておけば良いという程度の問題になってしまいました。
担当者:システム稼働当初は、7つの工場のすべてからクレームが寄せられていました。一番クレームが多かった群馬工場では、1週に120件の問い合わせがきていました。ただ、稼働から3週間が経ち状況は少し落ち着いてきました。今週は、群馬工場から13件の問い合わせだけになっています。
プロマネ:やっと落ち着いた感じですね。他の工場はどうですか?
担当者:他の工場も同様です。最初の週に比べれば、問い合わせ件数は1/2とか1/3という水準です。
プロマネ:了解。で、問い合わせの中で、どういう内容が多いのでしょうか?
担当者:やはり、AIの精度に関する部分が多いですね。じゃがいも1つをとっても、品種や産地がさまざまに違うので、そのあたりをAIが学習しきれていないようです。そういう細かなチューニングの部分は、どうしても実運用しながらでないと難しい部分があります。ただ、今後も状況を注視して、改善していきたいと考えています。
プロマネ:そうですね。工場の方に迷惑をかけてはいけないので、しっかりチューニングをお願いします。
このような認識ギャップが生まれるのは、担当者の報告の仕方が悪いことにも起因しています。120件の問い合わせが13件になったという言い方では、問題が1/10程度にまで激減したという印象を与えてしまいます。問題の大きさは、件数だけでは表現できません。たった1件の問題であっても、工場にクリティカルな影響を与えているのであれば、そのように報告すべきです。ただ、システム担当者自身が問題の深刻さを認識できていないこともあり、「これから改善をしていけば対応可能」という程度の報告になってしまいました。
報告を聞くプロマネのほうにも問題はあります。件数が減ったという報告だけで事態を楽観視したことや、AIの精度についての問題を深追いしなかったことは、プロマネとしての「嗅覚」が不足しています。
いずれにしても、このような構造で伝言ゲームが繰り広げられます。現場で大問題になっていることも、当事者には過少な問題として伝わってしまうのです。
これは、プロジェクトの運営にあたって深刻な問題です。このようなちぐはぐな状況に陥らないように、防止策を講じなければなりません。
仏様スタイルでも鬼軍曹スタイルでも伝わらない「悪い情報」
規模の大きな組織やプロジェクトでは、このような伝言ゲームは常に発生しています。プロマネの立場になればよく分かりますが、プロマネには面倒な相談事がたくさん持ち込まれます。仕事の役割分担のもめごと、仕事量が多いことへのクレーム、委託事業者の働きが悪いことへの改善依頼、さまざまな「悪い情報」が舞い込みます。これらの問題を上手に解決できるようになると、プロマネ本人も自分自身がプロジェクトに貢献できていると実感することがあります。
ところが、これらの問題のほとんどはプロジェクトチーム内の揉め事です。プロジェクトの外で、利用者や関係者が感じている不満、不都合、クレームという本質的な「悪い情報」については、プロマネに伝わってくることが少ないのです。
マネジメントスタイルの選択を間違えると「裸の王様」になります。鬼軍曹、雷親父、理論派先生といった怖い顔を持つスタイルをとると、悪い情報が伝わらなくなります。
冒頭でも説明したとおり、ステークホルダー管理とは、多種多様なニーズを持つステークホルダーに対して、状況把握、調整、合意形成を円滑に進めるための活動です。
しかし、状況を正しく把握できなくては、その後の調整や合意形成が行えるはずがありません。
ですので、伝言ゲームが起こりがちな構造を深く理解した上で、それでもなおプロマネが悪い情報を把握できるように、工夫を重ねることが必要です。
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