- 2026/03/24 掲載
なぜ富士急にすみっコぐらし?「絶叫の聖地」が25億円で“カワイイ”を買ったワケ(2/2)
連載:テーマパーク経済学
富士急がどうしても欲しい、“あるピース”とは
富士急はこれまでも「トーマスランド」や「リサとガスパールタウン」などのテーマエリアを通じて、こうした「非絶叫層」の取り込みを行ってきた。今回の施策は、その方向にさらに拍車をかけるものだろう。ただ、今回のサンエックスエリアには、これまで富士急にあったキャラクター系のテーマランドと大きく異なる点がある。
それは「インバウンド層」を明確にターゲットに据えている点だ。もちろん、これまでも海外旅行客がターゲッティングされていないワケではない。
しかし、2026年2月期中間決算資料ではマーケティング面の課題として「シニアマーケット・ハイクラスインバウンドへのアプローチ」や「ボリュームゾーンのインバウンド獲得(中国・東南アジア・インドなど)」が挙げられている。
実際、入園者数も外国人客比率もコロナ禍前ピークに達しておらず、パーク側はインバウンド客数の増加に前向きだ。そんな中でのサンエックスエリアである。
サンリオに続けるか…「カワイイ経済圏」の破壊力
日本の「かわいい(Kawaii)」カルチャーを体現するようなサンエックスは海外でも人気が高まりつつある。あえて「高まりつつある」と書いたのは、サンエックスが今まさに海外への訴求を強めている段階だからだ。2025年3月には韓国に海外オフィシャルストア1号店が誕生し、同年11月からは海外7都市でPOP UPストアのツアーを開催している。
「Kawaii」カルチャーの代表格といえば、サンリオがまず浮かぶが、その後を追うようにして海外進出に手をかけつつあるのだ。
その意味では、テーマパークというリアルな常設拠点を手にできるのは、サンエックスにとっても願ったり叶ったりの状況なのだろう。ここに、富士急の「インバウンドをもっと取り込みたい」という需要がマッチし、今回の計画につながったと考えられる。
まさに「インバウンド向けの入口」を用意したワケだ。
他のパークと決定的に違う、富士急のもう1つの役割
富士急ハイランドを運営する富士急行は、中期経営計画として、富士急ハイランドを「富士山エリアのゲートウェイ」とし、「国内外からの幅広い観光客の取り込み強化」を掲げている。富士急行が事業を行うエリアは「Greater Mt.Fuji」(=「大富士山圏」)と呼ばれる、富士山を中心とする場所。富士急ハイランドは、そんな「大富士山圏」の「ゲートウェイ」として期待されている。
ゲートウェイの役割は、富士山麓に来る観光客を取りこぼさないようにすること。さらに、富士急ハイランドを目当てにして大富士山圏に観光へ来る人々を増やし、エリア全体の周遊を高めるためことにもある。
その意味でも、サンエックスエリアはこれまで富士急が取りこぼしてきた、あるいは取りきれていない層を新しく迎え入れる「もう1つの入口」の側面が強いのである。
森岡氏の「USJ再建」アプローチ、富士急はモノにできるか
「新しい入口」作りで思い出すのが、USJだ。2001年に開業したUSJは「映画のテーマパーク」として営業を行っていたが、2010年代にかけて入園者が落ち込んでしまった。そこで、「脱・映画のテーマパーク」を目指して、積極的なIPとのコラボなどを行い、「入口」を広げた。その結果、現在同パークは再び人気を得ており、国内客・インバウンド双方に人気である。
「映画」だけだとターゲットが狭いが、それを「IP全般」とすることで、再び人気を得たのである。現在、USJを訪れると、ハリウッド映画だけでなく、サンリオやスーパーマリオ、ジャンプ系列のキャラクターなど、ありとあらゆるIPで埋め尽くされている。
テーマパークは「1つのテーマに基づく遊園地」のことであるが、そこで選択したテーマが狭すぎると、パークの首を締めることになってしまう。そのため、パークは常にターゲットの量や目的を見極めながら、「入口」を広げたり、新しい「入口」を作る必要がある。
今回の富士急ハイランドにおけるサンエックスエリアも同じ意味を持つだろう。絶叫のテーマパークとしての側面を保ちつつ、少しずつ「入口」を広げていく。そのような狙いが見られるのである。
サンエックスエリアの開業は2026年内予定だ。そこがどのような場所になり、どのような効果を生み出すのか、楽しみに待ちたい。
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