- 2026/04/03 掲載
「未成年SNS規制」の衝撃…日本は?訴訟乱発でも禁止できぬ“米国の本音”と次の急務(2/3)
日本も同じ? 訴訟乱発でも…米国でSNS規制が進まない理由
最も重要な論点は、米憲法修正第1条の保証する「言論の自由」に違反する検閲となる可能性があるというものだ。実際に、米下院司法委員会のジム・ジョーダン司法委員長(共和党)は12月18日に、オーストラリアにおいて「16歳未満のSNS禁止法」を担当するeセーフティ管理官のジュリー・インマン・グラント氏に対して書簡を送付。「オーストラリアの16歳未満のSNS禁止法の執行者として、あなたは(米国など)国外の言論を検閲する治外法権を主張し、同法を拡大解釈しており、米国の言論を直接脅かしている」と糾弾した。
未成年者のSNS利用規制に対する反対は、民主党にも根強い。リベラル派の米ニューヨーカー誌でコラムを執筆するジェイ・カン氏は12月23日の解説記事で、「われわれはデジタル言論空間において意見を表明する権利に関して、恣意的な年齢制限を設けるべきではなく、ましてや身分証明書の提出を義務化すべきでもない」と主張した。
日本においても同様の理由から年齢によるSNS規制の導入は困難だろう。
憲法21条が保障する「表現の自由」との整合性に加え、年齢確認の厳格化はプライバシー侵害や個人情報管理への懸念を伴うからだ。2025年4月に施行された「情報流通プラットフォーム対処法」も、プラットフォーム事業者に対して削除基準の明確化や運用状況の開示などを義務付けるまでにとどまっている。
規制を阻む「もう1つの理由」、米テック覇権と巨額マネー
さらに、米国で未成年者のSNS利用規制が進まない背景は、世界の有力プラットフォームのほとんどが米企業によって運営されており、これら企業の収益に影響があるからだ。オーストラリアの16歳未満SNS禁止法で名指しされ、最大4,950万オーストラリア・ドル(約51億円)の罰金が科せられる可能性がある10社のうち、9社は米国籍であり、TikTokのみが中国のプラットフォームである。SNS規制と、米テック大手の世界市場支配の保護は、表裏一体の関係にあるのだ。
ティーンのみならず、成人のSNS利用について米国と欧州連合(EU)が激しく対立していることもこれを象徴している。たとえばEUは、ユーザーのインターネット依存を防ぐため、違法で有害なコンテンツへの対策として、2022年施行のデジタルサービス法(DSA)に加え、新たに「デジタル公正法(Digital Fairness Act)」の制定にとりかかっている。
米トランプ政権はこれに強く反発している。12月23日には国務省が、米SNSに検閲を強要したとして、EUのティエリー・ブルトン前欧州委員ら5人に対しビザ(査証)の発給を拒否すると発表した。DSAの「黒幕」と目されるブルトン氏は、欧州委員会の技術規制部門のトップとして、巨大IT企業の規制を主導してきた人物である。
米欧の対立は、広告の透明性やユーザー認証方法に関するDSAの規則に違反したとして、EUが12月に米Xに1.2億ユーロ(約216億円)の制裁金を科した後、さらに激化している。米国での16歳未満のSNS禁止法に関する議論と、SNS規制の動きは、こうした欧州を中心とする米プラットフォームに対する規制や制裁と切り離せない。
また、16歳未満のSNS禁止はザル法だとの指摘もある。偽年齢申告、VPNを使ったアクセス、海外版アプリの利用など抜け穴は無数にあり、実効性がないというのだ。
これに対し、監視を確実にするために欧州委員会で2022年5月に提案された「児童性的虐待防止および対策規則(チャット規制法)」では、ユーザーのデバイスで暗号化が行われる前にコンテンツを分析し、すべてのメッセージを自動的にチェック。有害と見られる通信にフラグを立てて当局に通報する。
無実が証明されるまで全員が有罪とみなされるため、事実上、推定無罪主義が覆されるものだ。トランプ政権下の米国では、導入が極めて困難だろう。 【次ページ】SNSよりも深刻事態…すでに始まっている次の「緊急課題」
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