- 2026/04/16 掲載
崖っぷち? 日本が陥る“守りのAI投資”、米中独との決定的違いと「逆転シナリオ」
篠﨑教授のインフォメーション・エコノミー(第192回)
中央大学国際情報学部教授/九州大学名誉教授
九州大学経済学部卒業、九州大学博士(経済学)。経済企画庁調査局委嘱調査員、日本開発銀行ニューヨーク駐在員、ハーバード大学イェンチン研究所客員研究員、九州大学大学院経済学研究院教授等を経て2026年より現職。経済財政諮問会議「成長力加速プログラム・タスクフォース」委員、内閣府経済社会総合研究所主任研究官、総務省参与、社会情報学会理事・同評議員、九州大学経済学会会長などを歴任。貿易奨励会優秀賞、テレコム社会科学賞、ドコモ・モバイル・サイエンス賞などを受賞。専門は情報技術革新の経済効果分析。
・著者:篠崎 彰彦
・定価:2,600円 (税抜)
・ページ数: 285ページ
・出版社: エヌティティ出版
・ISBN:978-4757123335
・発売日:2014年3月25日
AIがもたらす「日本経済」逆転のシナリオ
これまでDXに苦戦してきた日本は、AIの社会実装を課題解決と成長戦略の「かなめ」に位置づけることが重要だ。少子高齢化が続く日本経済にとって、AIの利活用は人口制約を克服する強力な課題解決手段になると同時に、経済成長の力強いエンジンにもなるからだ。たとえば、医療の領域では、医師に囲い込まれていた専門知を誰もが共有しやすくなる結果、患者に直接触れて処置を行う看護師や介護士の対応力が高まるなど、相対的には専門性が高くない職務にもプラスの効果が期待できる。
この他にも、さまざまな場面で創意工夫ができるだろう。雇用を「代替」する競争者としてではなく、人的能力を「補完・拡張」する伴走者として、AIを巧みに利活用できれば、少子高齢化に直面する日本社会の課題解決に貢献するはずだ。
さらに、AIを社会実装していく際は、AIへの集中的な投資需要も生まれる。これは経済成長のけん引力となるだろう。その過程では、これまでなかったような新事業が創出され、さらなる投資と雇用と付加価値が生まれる道も拓ける。問題は、日本がこの流れを本当に取り込めるかという点だ。
歴史が示す「経済発展」の条件、カギを握る“ある領域”
本連載の第176回で解説したとおり、デジタル化は、ICTを供給するビジネス(ICT-producing Biz)とICTで可能になるビジネス(ICT-enabled Biz)の2つの領域でフロンティアを切り拓いてきた。これはデジタル化が本格化してから一貫して作用するインフォメーション・エコノミーの法則だ。この法則をAIに準用すると、半導体やデータセンターはAI-producing Biz(AIを供給するビジネス)であり、ここで新展開がみられるのは連載の第167回で解説したとおりだ。
だが、これから本格化するAIの社会実装でより重要なのは、今までまったく存在しなかった未知の領域となるAI-enabled Biz(AIで可能になるビジネス)だ。イノベーション時代には、新たな付加価値を生み出す活動に無限の可能性が広がっているからだ。
AI-enabled Bizの新領域で、次々と新ビジネスが創出されれば、投資が投資を呼んで経済成長と社会の変革を促すメカニズムが駆動する。この連鎖が経済発展を生み出すことは、産業革命以来の歴史が示す確かな教訓だ。 【次ページ】初動で大差? 米・中・独と対照的な日本のAI活用の現実
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