• 2026/04/16 掲載

崖っぷち? 日本が陥る“守りのAI投資”、米中独との決定的違いと「逆転シナリオ」(2/2)

篠﨑教授のインフォメーション・エコノミー(第192回)

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初動で大差? 米・中・独と対照的な日本のAI活用の現実

 生成AIの利用に向けて、日本でも本格化の動きがみられる。だが、国際比較すると見劣りする面があるのも事実だ。総務省情報流通行政局(2025)によると、「生成AIを1つでも業務で使用中」とする割合は、日本も過半(55.2%)を超えるが、米国(90.6%)、ドイツ(90.3%)、中国(95.8%)とは大きな開きがある(図表1)。

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企業における業務での生成AI利用率(図表1)
(出典:総務省情報流通行政局(2025)をもとに編集部作図)

 所属する企業の生成AI活用方針についても同様だ。「積極的に活用する方針」および「活用する領域を限定して利用する方針」を定めている割合は、米国(84.8%)、ドイツ(76. 4%)、中国(92.8%)とは対照的に、日本(49.7%)は半分に達していない。

 さらに注目すべき点は、生成AIの活用による効果・影響だ。従来型AIについては、4カ国とも「業務効率化や人員不足の解消」が最も多い。ところが、生成AIについては、日本と他の3カ国との間に大きな違いが観察される(図表2)。

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AI活用推進による自社への影響(図表2)
(出典:総務省情報流通行政局(2025)をもとに編集部作図)

 生成AIの活用による効果・影響について、米国、ドイツ、中国では、「ビジネスの拡大や新たな顧客獲得」「斬新なアイデアやイノベーション」が多い一方、日本では、従来型と同様に「業務効率化や人員不足の解消」が最も多くなっている。

 もちろん、人口制約下の日本経済では、こうした取り組みが課題解決につながることは間違いない。とはいえ、この領域はいわば「守りのAI投資」だ。

「守り」では限界…日本に「攻めのAI投資」が必要なワケ

 生産性を最も簡潔に定式化すると、投入(分母)に対する産出(分子)の比で示される。高い生産性は、少ない投入で多くの産出を得ることを意味するが、投入(分母)を縮小するだけの「守りのAI投資」では経済成長に限界がある。

 一方、産出(分子)を拡大する「攻めのAI投資」は、可能性が無限だ。まったく新しい発想で「新技術への投資」と「改革への投資」を行い、これまでできなかった活動領域に踏み出して新たな付加価値を創出する場面でこそ「成長戦略」の本領が発揮できるのだ。

 人手不足対策や老朽インフラの維持管理といった課題解決型の「守りのAI投資」であっても、これをテコに、同じ課題に直面する国々へのシステム輸出に取り組むなど、付加価値を生む「攻めのAI投資」で新事業を創出する戦略的な姿勢が求められる。

フィジカルAI時代到来、日本は「真価」を示せるか

 今後は、サイバー空間内での情報処理だけでなく、ロボティクスなど機械工学と結びついたリアル空間での社会実装が加速するとみられる。日本の強みとされる製造業とAIが融合したフィジカルAIへの関心が高まっており、この領域は、とりわけ産業用ロボットの分野で、世界的に有力な日本企業も数多く存在する。

 日本にとって、これから本格化するAIの社会実装が、課題解決にとどまらず、成長戦略の本丸と位置づけられる所以(ゆえん)だ。

 ただし、新領域のビジネスは、未知のものであるがゆえに具体的なイメージは描きづらく、何が成功モデルかの予見も困難だ。「技術への投資」と「改革への投資」が両輪となって、AI-enabled Bizの新領域をどう切り拓くか、過去約30年間、デジタル化で苦戦が続いた日本の底力が問われている。

〔参考文献〕
1) 総務省(2025)『令和7年版情報通信白書』日経印刷, 2025年7月.
2) 総務省情報流通行政局(2025)『国内外における最新の情報通信技術の研究開発及びデジタル活用の動向に関する調査研究』2025年3月.

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